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ロシア侵攻前の「美しきウクライナ」在住日本人が撮った貴重な写真を一挙公開【画像30枚】
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.05.21 11:00 最終更新日:2022.05.21 11:00
2022年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻した。その後も、現地にとどまり、戦況報道を日本語に翻訳しつづけているジャーナリストがいる。ウクライナ国営通信「ウクルインフォルム通信」日本語版編集者の平野高志氏だ。
「ロシアは侵攻にあたって、ロシアの歴史ルーツはウクライナにある、ロシア人とウクライナ人は一つの民族、といった主張をしています。ただし、ウクライナの人はそれをはっきりと否定している。
ウクライナは東スラブ文化の始まりの地で、モスクワにはない1000年も昔の建造物や伝統が残っていて、“噛めば噛むほど” 味がある国なんです。
ロシアはその魅力あるウクライナを自分のものにしたがっているのですが、ウクライナの人々は自分たちのアイデンティティを守ろうとしています。私は、ウクライナの人々のその姿勢に共感しています」
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平野氏は、なぜウクライナに関心を持ったのか。
「父親が高校の地理の教師で、さまざまな国や地域について書かれた本が自宅にありました。1990年代の後半、進路について悩んでいたとき、たまたま『地球を旅する地理の本』(大月書店、1994年)という書籍を手に取りました。
そのなかに10ページほどウクライナについての記述がありました。ヨーロッパでもっとも面積が大きな国で、歴史も文化も言語もあるのに、私はウクライナのことを何も知らなかった。それが不思議で、おもしろいなと思ったんです」
平野氏はちょうど普及しはじめたインターネットでウクライナ情報を集めるようになり、東京外国語大学ロシア・東欧課程に進学し、ウクライナ語を学びはじめる。
「東京外大にも『ウクライナ語学科』はないんですよ。ロシア語専攻のなかにウクライナ語を教える先生が1人いらっしゃって、その先生の週1回の選択授業を受けるために外大に入りました。1年生のときのオリエンテーションで、『ウクライナ語を勉強したくて』と言ったら、みんなに変な目で見られましたね(笑)」
これまで日本でほとんど紹介されてこなかったウクライナだが、戦争によって注目されたことについて、どう考えているのか。
「ウクライナに注目が集まっていることは、私はすごくありがたく、嬉しいことだと思っていますよ。
というのも、2014年にロシアがクリミア半島を占領したときは、日本では関心が低く、その結果『クリミアの住民はみんなロシア軍を歓迎している』といった歪んだ情報が広まってしまいました。
歓迎した人はたしかにいたけれど、決してみんなではない。反対した人もたくさんいたけれど、ロシアが彼らの存在をさまざまな手段で隠してしまった。
当時は多くの人がどこか遠くで起きている他人事として見ていたと思うんです。もちろん報道はあったんですが、ウクライナのことを詳しく知ろうという動きはあまりなかったと思います。
それが今回は、日本でもウクライナに寄り添って、ロシアの嘘を暴いて実態を知ろうという人が増えています」
ウクライナを愛する平野氏は、ロシアが侵攻する前の2020年2月、観光ガイド『ウクライナ・ファンブック』(パブリブ刊)を出版している。
「私は2008年からウクライナに住んでいますが、当時は、ウクライナでどんなご飯が食べられるのか、どんなお店があるのか、という情報が日本にはまったく届いていませんでした。そうした情報をいずれ形にしたいなと思っていたら、ちょうど出版の話があったんです」
『ウクライナ・ファンブック』は、レストランやお土産などの観光情報や、歴史や現代の文化についての情報が満載の楽しい本だ。ハルキウ、チェルニヒウ、マリウポリなど、素朴で美しい街並みが多数紹介されている。そして、その一部はロシア軍の攻撃によって破壊されてしまった。
日本人の関心が高まったこともあり、同書はすでに5刷になったという。
「メディア出演も増えましたが、ウクライナ通貨・フリヴニャの価値が大きく下がっているので、目減りしたぶんの補填になっているくらいです」と笑う。
「ウクルインフォルム通信」の記事を日本に紹介するだけでなく、メディアに自ら出演し、ウクライナの現地情報を伝える平野氏。その存在感は戦争以降、特に大きくなっている。
「偽情報の総本山であるロシア大使館のSNSアカウントやロシア国営メディアはもちろんのこと、日本人の専門家からも誤情報が発信されることがあります。現地の人の声や思いを正しく伝えていきたいですね」
次ページでは、現在のウクライナ情勢を知るうえで、有益な8冊の本を平野氏にあげてもらった。
( SmartFLASH )