社会・政治社会・政治

災害のときどうする? 字幕つきYouTubeに慣れて「ラジオを聴き取れない若者たち」急増

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.05.21 15:25 最終更新日:2022.07.18 21:10

災害のときどうする? 字幕つきYouTubeに慣れて「ラジオを聴き取れない若者たち」急増

ラジオを聴く熊本地震の被災者(写真・時事通信)

 

 5月10日、警視庁の警備部災害対策課がツイッターに投稿したつぶやきが話題を呼んでいる。「小学生の娘がラジオを聴き取れない」という内容だ。

 

《ラジオを聴いたことがない小学生の娘と一緒に放送を聴いてみました。感想は「何を言っているのか聴きとれない」とのこと。視覚からの情報が多い現在、耳からの情報には多少の慣れが必要なのでしょうか?ラジオは災害時の重要な情報源、家族でラジオに耳を傾けるのも防災対策の一つになるのでは…》

 

 

 このツイートに対して、SNS上ではさまざまな声が寄せられた。

 

《テレビもいちいちテロップが付くので、耳だけでは理解出来なくなった》

 

《テロップに慣れすぎている、のかもしれない》

 

《視覚情報のないものってダメらしい。子供らみんな電話しないもんな》

 

《ラジオは、訓練とまではいかないまでも、慣れないと内容が入ってこないんですよね》

 

 本当に「聴く力」は落ちているのか。コミュニティラジオを専門とする、北郷裕美・大正大学社会共生学部教授がこう話す。

 

「『聴く力』の衰えは、大学で教えていても感じます。授業で、ラジオドラマなど音だけを聴かせることがあるのです。すると、学生が戸惑うというか、どうしていいかわからない状況に陥ってしまう。

 

 悪気はないと思うんですが、音だけを聴くシチュエーションが日常生活で少なくなっているから、思わず拒否反応を示してしまう。ネットネイティブといわれる、いまちょうど20歳ぐらいの学生から、著しい変化を感じますね」

 

 その原因として北郷教授があげるのが、SNSでも指摘されていたテロップだ。

 

YouTubeやテレビでテロップが入るのが影響していると思います。バラエティのテロップを含めて、短文じゃないですか。書体なんかを見ても、視覚に絵のように訴えかけてくる。だから、音だけを聴くことに拒否反応を示してしまうのだと思います。

 

 警視庁のツイート自体は小学生の話で、今の大学生はこれほどではないと思いますが、時間の問題だと思います。

 

 電車でも、昔ならイヤホンで音だけ聴いている人がいましたが、いまはゲームにしろ動画にしろ、必ず画面を見ている。音だけを聴いて、目をつぶっている人って減りましたよね」

 

 10~20年前に、「若者が映画の字幕を読めなくなっている」と話題になったことがある。だが、北郷教授によれば、いまの若者は、映画の字幕とテレビのテロップを別物と捉えているという。

 

「映画館でも、字幕より吹き替えのほうが人気があるということで、最初はビックリしたんですが、やっぱり本を読まなくなっていますからね。大学生でさえ本を読まなくなって、年間1冊2冊という人もいます。

 

 いまの若者は長い文章が苦手なんです。ネット上で活字を読んではいるんです。でも非常に短い文だし、じっくり読むというより、どんどん移ろっていく。

 

 活字に対する弱さは出てきています。学生のレポートを見ても、ツイッターやラインの延長のように、箇条書きが連続で繰り返されるようなレポートが増えています。

 

 映画の字幕は長文のように続きます。同じ文字ではあるけれど、好き嫌いがハッキリしてくるんですね。いまの若者は、同じ字幕でも、映画の字幕とテレビのテロップを別物ととらえているのではないでしょうか」(同前)

 

 さらに北郷教授は驚くことを言う。便利なものに慣れすぎて、これまで自分が触れ合ってきていないものに対し、体が拒否反応を示す若者が多いという。

 

「授業で昔の動画を見せることがあるんです。ニュース映像とか、古い映画ですね。モノクロの映像を見せてアンケートを取ったら、『色がついていないものを見ると吐きそうになる』というものがありました。

 

 モノクロ映像を体が拒否するなんて、ちょっと驚きました。触れてきた環境とは違うものに対する拒否反応が強いというか。積極的に自分から吸収するのではなく、楽なほうに行っている。全体的に、想像力が弱くなっていると思うのです。

 

 文字や音を拒否するのも同じです。文字や音から、脳のなかで絵を構築する想像力がトレーニングされていない。初めから絵を求めてしまうから、拒否反応を起こすのだと思います」(同前)

 

 決して、面白くないから「ラジオ離れ」をしているのではない。いまの若者は「まだラジオに触れていない」状態なのだ。だから、周囲が音だけに触れさせる努力が必要という。

 

「ラジオを聴いていた世代、親や家族がラジオを流しっぱなしでもいいんです。絵のない環境で、音だけ流す。音だけを聴く状況を作る。これは努力が必要ですが、そうしないと、災害時にラジオを聴けないと思います。

 

 ラジオを聴いている学生は、感覚としては1%ぐらいです。100人いて1~2人。『ナインティナインのオールナイトニッポン』とか、やっぱり芸能人のディスクジョッキー型のものですね。それでもいいと思うんです。

 

 芸能人は、テレビで言えないことをラジオで本音に近い形でしゃべります。最近でいえば、有吉弘行さんも、上島竜兵さんが亡くなって最初の第一声は自分のラジオ番組でした。かつて中居正弘さんも、スマップ解散について初めて語ったのは、自身のラジオ番組でした。

 

 芸能人の本音が聴けるのもラジオの魅力なんです。だから、芸能人のラジオを聴くのでもいい。ぜひラジオに接して、親しんでほしいと思います」

 

 脳を鍛えるには、ラジオが最適という声もある。災害時に備えるうえでも、ラジオを聴く習慣をつけたいものだ。

 

( SmartFLASH )

続きを見る

今、あなたにおすすめの記事

社会・政治一覧をもっと見る