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小池都知事にアメリカ人実業家が宣戦布告…「神宮外苑再開発」樹木の大量伐採を止めろ!
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.05.23 06:00 最終更新日:2022.05.23 06:00
5月19日、明治神宮外苑の再開発計画について、三井不動産や明治神宮などの事業者が、まちづくりの方向性を伝えるプロジェクトサイトを新設した。再開発では、神宮球場とラグビー場の場所を交換して建て替えをおこない、高さ190メートルの高層ビルが2棟建つ予定だという。
しかし、この明治神宮外苑の再開発計画が、物議を呼んでいる。
「計画にともない、神宮外苑に植えられている樹齢100年ほどの貴重な樹木が、約1000本も伐採される予定です。東京都が計画の詳細を公表したのは、昨年12月の2週間だけ。
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十分な周知もされないまま、今年2月の東京都都市計画審議会で、賛成多数で承認されました。計画が承認されたあと、事態を知った人が大半ではないでしょうか」(全国紙記者)
明治神宮外苑は、明治天皇の事業を後世に伝えるため、荒れ地にゼロから造り上げられた。いまも残る樹木は、創建時に全国から献木され、樹齢100年を超えるものも多い。そんな歴史的遺産が、失われようとしているのだ。
再開発計画を知ったアメリカ人実業家のロッシェル・カップさんは、急遽オンラインで計画の見直しを求める署名をスタートさせた。現在も活動は続いており、賛同者は6万人を超えたという。
「本当にひどい話です。再開発の計画を見ると、1000本もの樹木が伐採されるうえ、軟式球場やバッティングセンターなど、市民の人々が利用している施設が一気になくなります。
代わりにできるのは、ショッピングモールのような商業施設や高層ビル。渋谷と表参道に囲まれている神宮外苑に、ショッピングモールは必要でしょうか。
なぜこんな計画が必要なのか、都民にとっての公益性はどこにあるのか、納得のいく説明がまるでありません。こんな計画を、12月の後半に2週間公開しただけで話を進めてしまった。誰も気づかないうちに、話を動かそうとしたとしか思えません」(カップさん)
小池百合子都知事は、一貫して計画に賛成の立場だ。2月22日の都議会で、「SDGsの考え方にも沿ったまちづくりを進める」と説明。3月9日の都議会では「新たな神宮外苑として、次の世代につなげていくことは創建の趣旨にかなう」と発言している。
しかし、カップさんは、小池都知事の発言に首をひねる。
「樹木を数多く伐採し、高層ビルを建てる再開発計画は、SDGsとはまったく逆の行動に思えます。小池都知事は広告のキャッチコピーのようにSDGsという言葉を使っていますが、まるで矛盾した発言ではないでしょうか。
『創建の趣旨にかなう』ともおっしゃっていますが、正直、違和感があります。商業施設をつくったり、スポーツ施設をなくしたり、先人が献金してつくった環境を壊し、献木した樹木を1000本も伐採したりする。
これらの行動が、なぜ創建の趣旨にかなうのか。小池都知事は、どうしてここまで計画に賛同しているのか。政治家として無責任ではないでしょうか、と聞きたいぐらいです」
東京都は、伐採する樹木について、可能な限り保存や移植といった対応を取ると説明している。だが、カップさんは「現実的に厳しい」と指摘する。
「新国立競技場を建設したときも、1500本以上の樹木が伐採され、130本が移植されました。
でも、調査の結果、移植された樹木の大半は現在病気になっているんです。移植前の樹形を保っていたのは、たったの3本。神宮外苑の大きな樹木を移植するのは、かなり厳しい話になると思います。
結局、商業施設を作るのが前提の計画であるうえ、そのスペースを確保する必要があるので、必然的に樹木は伐採されてしまう。本当に保全を目指しているのであれば、もっとよいやり方があるはず」
実際に、ユネスコの諮問機関であるイコモス(国際記念物遺跡会議)は、4月末に代替案を東京都に提言している。ラグビー場と神宮球場を、場所を入れ替えず現在地で再建し、テニス場の移設も取り消せば、伐採樹木は2本に抑えることができる見込みだ。
「計画自体は4月に承認されましたが、具体的にどう建設を進めていくかという話はこれから始まります。神宮外苑が持つ豊かな緑と独特な雰囲気を残したいし、今回の再開発で、東京らしさが失われてしまうことも危惧しています。小池都知事がいったん立ち止まって正しい判断をする、今が最後のチャンスなんです」
カップさんの “宣戦布告” は、100年かけて積み上げられてきた東京の歴史的環境を守る、大きな闘いの始まりなのだ。
( SmartFLASH )