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誤送金騒動で山口県阿武町のふるさと納税が10倍に…それでも「焼け石に水」の財政状況

社会・政治 投稿日:2022.06.04 20:00FLASH編集部

誤送金騒動で山口県阿武町のふるさと納税が10倍に…それでも「焼け石に水」の財政状況

住民説明会で陳謝する花田憲彦町長(写真・朝日新聞)

 

 山口県阿武町で給付金4630万円の誤送金問題が起きて約2カ月。6月1日から3日にかけて、阿武町で住民説明会が開かれた。

 

 花田憲彦町長は「性善説で物事を考えた甘さと言われれば返す言葉がない」と陳謝。住民側からは「なにが悪いかって、今のシステムが悪い」「今回の間違いは、出納室の明らかな怠慢だと思う」など、厳しい声が上がった。

 

 

 逮捕された田口翔容疑者が給付金を出金した決済代行会社3社から、町の口座に約4300万円が振り込まれたことで、誤送金ぶんの9割超の差し押さえが完了。5月30日には、花田町長が月給の50%、副町長が40%、出納室長が10%をそれぞれカットする処分が決定している。

 

 事件はこれである程度の区切りがつくものとみられるが、その一方で意外な事態が起きていた。

 

ふるさと納税を利用した阿武町への寄付が急増しているんです。町によれば、4月から5月24日までの集計で例年の10倍、約100件の申し込みがあり、約150万円が集まったそうです。なかには10万円を納税した人もいるとか。寄付には『名誉を挽回して』など、応援のコメントも添えられているそうです」(地方自治に詳しいジャーナリスト)

 

 阿武町のふるさと納税ができるサイトをのぞいてみると、豊かな自然を生かした特産品が多い。1番人気となっているのは、「赤肉ヘルシーな『無角和牛』」。焼肉用の牛肉300グラムで寄付金額は1万2000円。ほかに「季節の野菜詰め合わせ」「とらふく白子」「完熟 キウイフルーツ使用ジュース」などがある。

 

 これにはSNS上で、

 

《阿武町役場にクレームを入れる人も居れば、ふるさと納税でがんばれと激励をする人も居る。怒りは意外とエネルギーを使うから、どうせなら他人を励まして自分も気分良く過ごせる方を選びたいな》

 

《阿武町もふるさと納税が10倍になってるし日本も捨てたもんじゃないな》

 

 と前向きな意見もあれば、

 

《なんで阿武町をふるさと納税で支援するのかさっぱりわかりません。自分たちのミスじゃん》

 

《うーん…間違ったのは町が先なのに釈然としない》

 

 という声も。さらには、

 

《阿武町は4,630万円で全国にその名を知らしめたと思えば、広告宣伝費として安いものです。今こそ「誤送金の町」として観光資源化を考える時でしょう》

 

《テレビCMや雑誌新聞の広告宣伝費に換算したら巨額になるし、誤送金したお金まで回収出来ちゃった。まさに「災い転じて福となる」》

 

 といった意見もあった。

 

 だが、阿武町もさぞかしホクホクかと思えば、そうでもないようだ。

 

「阿武町の人口は約3000人。世帯数1350のうち、住民税を払っていない世帯が約3分の1にあたる463もあったわけです。65歳以上の人口が約50%を占め、第1次産業以外はこれといった産業もない。

 

 2022年度の一般会計予算では、半分近い48%を地方交付税、つまり国からの支給に頼っています。その額は約15億円にもなります」(前出のジャーナリスト)

 

 阿武町の自治体の財政力を示す財政力指数は、2020年度時点で0.17ときわめて低い。

 

「阿武町の税収は約2億6000万円しかないのに、民生費(福祉などの支出)が6億6000万円、職員50人の人件費が約5億円です。これだけの町で4600万円が失われれば、その影響は計り知れませんが、それ以前に財政的には破綻に近い状態だったとも言えます。ふるさと納税で経済状況が好転するレベルではありません」(同)

 

 じつは阿武町、「平成の大合併」で、近隣自治体のなかで唯一、萩市との合併を拒否した歴史がある。「もしも」だが、その時点で合併していれば、こんな事態にはなっていなかったかもしれない。

 

( SmartFLASH )

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