社会・政治社会・政治

「朝日新聞も東京新聞もネタをパクるな!」「コロナ交付金の流用問題」を取材してきた調査報道メディア編集長が怒りの告発

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.06.11 15:20 最終更新日:2022.06.12 13:47

「朝日新聞も東京新聞もネタをパクるな!」「コロナ交付金の流用問題」を取材してきた調査報道メディア編集長が怒りの告発

5月30日、参議院予算委員会で質問に立つ蓮舫参議院議員(写真・時事通信)

 

 調査報道に特化したネットメディアが、大手マスコミに対し「ネタをパクるな」と批判する騒動が持ち上がっている。

 

 事の発端は、5月30日。国会で、立憲民主党の蓮舫参議院議員が各自治体の「新型コロナ対応地方創生臨時交付金」の使い方について追及した。

 

 蓮舫議員は、新型コロナ対策のために支援された交付金が、一部自治体でまったく関係ない事業に流用されていると指摘。各自治体でどのように交付金が使われたのか、具体例を示しながら話を進めた。

 

 

 質疑のなかで、蓮舫議員は「Tansaというジャーナリスト集団が調べているので、合わせて詳しく調査した」と明言。Tansaとは、探査報道(いわゆる調査報道)に特化したジャーナリズム組織だ。

 

 Tansaは、今回、議題にのぼった地方創生交付金について、「虚構の地方創生」というシリーズで、3月から報道を続けていた。

 

 質疑の当日・翌日には、朝日新聞東京新聞をはじめ、テレビ局などマスコミ各社がこの問題を報道している。しかし、驚くべきことに、議論のベースとなった「Tansa」のクレジットがいっさい出てこなかったのだ。

 

 Tansa編集長・渡辺周(まこと)さんは「ひどい話ですし、やることがセコいとしか言いようがない」と怒りの声をあげる。

 

「Tansaで地方創生交付金について報じ始めたのは3月からですが、企画自体は去年の夏から出ていました。秋ごろから、各自治体の全事業6万5000件をデータベース化し、無駄な事業を洗い出す作業を進めてきました。必要があれば、現場取材にも行っています。かなりの時間と手間暇がかかっているんです。

 

 蓮舫議員は、国会で『Tansaが調べた』と明言したうえ、記者たちに配布した資料にも、クレジットを入れてくれています。しかし、その後の各社報道を見ると、こちらが一から丁寧に調べたことをすべて無視している。それはさすがにないでしょう」

 

 大手マスコミでは、一社が先行してスクープを出した場合、後から出した社は、事実関係の裏取りさえすれば、スクープした社の名前を出さずに報じるという “悪しき慣習” があるという。

 

「仮に読売新聞のスクープを、翌日に朝日新聞が後追いで報じた場合、読者は『読売のスクープの追っかけだ』とわかります。しかし、小さいメディア相手に同じことをされると、誰が手間暇かけて掘り出した情報なのか、読者からは見えなくなってしまう。

 

 小さいメディアはもちろん、大手メディア同士でも、よそのネタには敬意をもってクレジットを入れるのが当然ではないでしょうか」(渡辺さん)

 

 他社の報道で、Tansaのクレジットが入らなかったのは、今回だけではない。

 

 2019年9月、Tansaは警察が国民の100人に1人にあたる人数の“被疑者DNA”をデータベース化していることをスクープするが、後追いした朝日新聞はクレジットを入れなかったという。

 

 敗戦後、各都道府県が厚生省(当時)の要請を受け、強制不妊手術を増やしたことを報じた「強制不妊」シリーズ(2018年~)も、後追いした各社報道にクレジットは入っていなかった。

 

 東京五輪組織委員会とパートナー企業の会議内容をスクープした記事(2021年5月)では、クレジットを入れたのは『週刊ポスト』だけだったという。

 

「大手メディア、とくに新聞は経営不振もあり、探査報道の分野からどんどん撤退しています。時間がかかりますし、掲載時期のメドも立たず、採算も取れない。訴訟リスクもありますしね。

 

 僕自身、古巣の朝日新聞では探査報道に特化した部署にいましたが、結局、なくなってしまいました。だからこそ、Tansaのような独立メディアが、苦しいなかでも頑張っているんです。

 

 しかし、今回のように大手メディアが、よそのネタをクレジットなしで使い続ければ、小さなメディアが育っていかない。僕はお金が欲しいわけではなく、ただクレジット表記してほしいだけなんです。

 

 我々は、いくらネタをパクられても、探査報道を続けていきます。しかし、よそのネタにクレジットを入れるという慣行が根付かなければ、日本のジャーナリズムは衰退するばかりでしょう」(同)

 

 渡辺さんは、今回の件について、6月15日を締切として各社に抗議文と質問状を送っているが、どの社からもまだ返答はないという。

 

 本誌も朝日新聞社に見解を聞いたところ「ご指摘の記事は、国会での質疑の様子を、議員の質問に着目して紹介した コンテンツです。個別の記事に関する取材の経緯や掲載の判断については、お答えを差し控えさせていただいております。」と回答。

 

 また、東京新聞編集局は「個別の取材活動や取材内容に対するお答えは差し控えさせていただきますが、ご質問いただいた件についてはTansa様から直接質問をいただいております。まずはTansa様にお答えしたいと考えております。」との回答だった。

 

 小さなメディアがコツコツ積み重ねた取材を、大手メディアが横取りするようなことだけは、してほしくないものだが……。

 

( SmartFLASH )

もっと見る

今、あなたにおすすめの記事

社会・政治一覧をもっと見る