「チューリッヒ保険の調査によると、被害に遭う車は圧倒的に白系が多いんです。ホワイト(26.3%)とシルバー(25.8%)が合わせて半数以上です。
一方、加害車両の色はブラックが27.8%で最多でした。また、被害に遭う車の種類は軽自動車が最多(28.8%)でした。私はこれを『ドレス効果』だと考えています。たとえば、スーツを着ればしゃんとするように、人は服装によって気分も振舞いも変わるんです。これが、車の場合にもいえます。
価格や色からして、“強そう”な車は“強そう”に振る舞うし、“弱そう”な車は狙われやすいんです」
だが、高級車だからといって安心もできない。
論文「あおり運転に関する研究の概観と抑止策の提案」を執筆した大阪大学大学院の中井宏准教授はこう語る。
「75名のドライバーに、先行車が信号が赤から青に変わっても発進しない場面の動画を見てもらいました。
すると、スポーツタイプであるトヨタの86やカワサキのバイクER-4nへの怒りが、軽自動車であるホンダのN-BOXに対してよりも高かったのです。
初心者マークをつけたトヨタのクラウンは、スバルの軽自動車と比べてクラクションを鳴らされやすいという、別の研究者による実験結果も踏まえると、車両や運転者を見て抱くイメージと、実際の挙動が大きく乖離すると、後続車は強く怒りを感じる可能性があります」
つまり“運転がうまそう”なのにもたついていると、あおられる可能性が高いのだ。また、中井准教授の研究では意外な結果も出た。
「軽トラックのスズキ・キャリイについては、75名中71名が運転手を高齢者だと推測していました。高齢者に寛容なのか、キャリイは怒りを喚起させにくく、クラクションも鳴らされにくいという結果になりました」
とはいえ、あおられないためだけに軽トラに買い替えるわけにもいかない。どんな対策があるのだろうか。
「安全運転は当然ですが、前後左右を撮れるドラレコは必須です。そして、あおられた場合は安全な場所に停めて、110番することです。『弱い犬ほどよく吠える』といいますが、私が見てきた加害者は、留置場に入るとしょげている人ばかり。一般人が虚勢を張っているだけなんです。間違っても、カッとなってやり返さないことですよ」(秋山氏)
自分の車の“あおられ度”を把握したうえで、安全運転を心がけよう。