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離婚後の共同親権、橋下徹弁護士が「やっと世界標準」と歓迎するも…百害あって一利なしとの声も

社会・政治 投稿日:2022.06.24 16:00FLASH編集部

離婚後の共同親権、橋下徹弁護士が「やっと世界標準」と歓迎するも…百害あって一利なしとの声も

 

ーー国際的には、離婚後の共同親権が主流といわれていますが?

 

「前提として、諸外国の『共同親権』と、これから日本で導入されるかもしれない『共同親権』の概念はイコールではありません。

 

 日本の『親権』は家父長制の名残で、“権利” のようにイメージする人が多いと思います。実際、日本語の『親権』は『parental authority』と訳されていますが、この言葉にピッタリ当てはまる概念は外国では見当たらない。

 

 欧米の『共同親権』を忠実に日本語に訳すと、『共同監護』とか『共同責任』になると思います。欧米では “権利” が感じられるような言葉ではなくなりつつあるのです。

 

 子育て子どものためにするものであって、子どもに対する親の義務です。ですから、『親権』は、子どものために適切に行使されなければならない責任を前提とする『権限』です。しかし、日本では、まだまだそのような意識が浸透しているとはいえません。

 

 だから、別居している親が、同居中の親に対して、法的な後ろ盾を持って対等に口出しできるようになると、その権限を振りかざして、拒否権を行使したり自分の意見を押し通したりといったことが、心配されるのです。

 

 何度も言いますが、離婚後も父母できちんと話し合いができる関係なら、権限や権利はいらないわけです。なのに、どうして、『共同親権』のような『権限』 を欲しがるのでしょうか。

 

 そういう人は、拒否権を使って口出ししてくる懸念がある人であるように、私には思えます。『同居親』に対して、思いどおりにいかないから、『別居親にも権限を寄こせ』と言っているのではないかと思います。

 

ーー「共同親権」が認められることで、ほかにどのような具体的な弊害が想定されますか?

 

「より日常的な例では、子どもがスマートフォンを契約する場合も、『別居親』が『まだ早い』と言えば、契約できなくなる可能性があります。『同居親』の方針が、子どもを信頼し、きちんと約束を守らせたうえで子どもにもデジタル機器の扱いを早い段階から覚えさせたいというものであってもです。

 

『同居親』のほうが、一緒に暮らしているから、子どもの発達状態やニーズをわかっているわけです。

 

 そういう方針を、『同居親』が『別居親』に伝えたときに、『それはそうだね』と話し合いができればいいんです。離婚していない夫婦であっても、意見の食い違いはありうるけれど、話し合いでどうにかしている。 どうにもならないから離婚する。

 

 でも、『共同親権』が認められたら、話し合いがうまくいかないから離婚した相手と、また話し合う必要が出てくる。

 

 あるいは、修学旅行で海外に行くとき、パスポートが必要だけど、『別居親』が『まだ早い』と反対すれば、修学旅行にも参加できなくなる。16歳で原付免許を取る場合でもそうです。

 

 私たちが相談を受けるなかでとりわけ切実だなと感じるのは、先ほど言った進学や、医療の場面ですが、未成年者というのは日常あらゆる場面で、『親のサイン』が必要ですよね。

 

 この『親のサイン』が必ず父母共同でされなければならない、別居親の反対で『サイン』がないことになるというのは、未成年者にとっても負担や不利益があまりにも大きいと思います。

 

 もちろん、法制審の今後の制度設計によって変わってくるかもしれません。最終的には『同居親』の意見を優先する、というルールができれば別ですが、いまイメージされている『共同親権』では、このような弊害が生まれてしまう可能性のほうが高いのです」

 

ーーたとえば、「共同親権」が認められることで、「別居親」が養育費を支払うようになったり、子どもと面会できる機会が増えたりするなど、よい影響が出る面もあるのでは?

 

「養育費の支払いが促される効果は、ほとんどないと思いますよ。身も蓋もない言い方ですが、養育費を払わない親は親としてそもそも論外な人たち、『親権』を与えてはいけない人たちです。

 

 子に対する経済的虐待、ネグレクトといっていい。そんな人たちが、『親権』を与えられたからって、養育費を払うようになるとは思えません。

 

 養育費は、権限があるなしとは関係ない。親である限り絶対的に負う義務なわけです。それなのに、権限を与えることで義務の履行を促すというのは、そもそも考え方としておかしい。

 

 養育費の取り立て制度を充実させるとか、兵庫県の明石市がやっているような養育費の立て替え制度を充実させる方が重要だと思います。

 

 子どもとの面会交流にしても、今の家庭裁判所は『原則、面会すべき』という考え方が強いんです。よほどのことがなければ、『面会すべきじゃない』という結論にはならない。それも裁判所から見た “よほど” のことです。

 

 私たちから見たら、DVや虐待とはいわないまでも、かなり不適切な養育態度でも面会は認められる。同居中にまったく育児をしなかったとか、自己中心的な関わり方をする、子どものことをペットみたいに扱うといった程度では、面会交流させるにあたってちっとも問題にならないと言っていい。

 

『別居親』が申し立てをすれば、家庭裁判所はほぼ『面会させろ』という判断になるんです。 だから、『共同親権』に関係なく、面会は現状でも相当程度実現します。

 

 逆に、離婚前の別居中はまだ『共同親権』ですが、その間でも家庭裁判所が“よほど”と思えば面会できません。『面会できない』というケースは、『共同親権』のあるなしにかかわらず発生しているんです」

 

( SmartFLASH )

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