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なぜ若者の声は政治に届かない? 参院選60歳以上の影響力は50%…「シルバー民主主義」がひどすぎる【独自試算で判明】

社会・政治 投稿日:2022.07.06 06:00FLASH編集部

なぜ若者の声は政治に届かない? 参院選60歳以上の影響力は50%…「シルバー民主主義」がひどすぎる【独自試算で判明】

写真:つのだよしお/アフロ

 

 日本では高齢者ばかりが選挙に行くため、老人向けの政策しか通らないと言われて久しい。いわゆる「シルバー民主主義」だ。それなのに少子高齢化が進み、有権者における高齢者の比率は高まるばかり。

 

 選挙権は18歳に引き下げられたが、政治家は票田の高齢者ばかり優遇し、反発を招きそうな課題は検討さえしない。苦しむのは働き盛りの若い世代だーー。

 

 

 では、実際のところ、この「シルバー民主主義」はどの程度深刻なのか。政治ジャーナリストの角谷浩一氏とともに、具体的な数字を見てみよう。

 

「前回(2019年)の参院選では、全体の投票率は48.8%でした。最新の選挙人名簿(2021年9月)を見ると、有権者数は1億550万人。これを前回参院選の投票率で計算してみると、実際に投票すると見込まれる人数は5148万人となります」(角谷氏)

 

 この5148万人のうち、60歳以上の人数がどれだけいるかがわかれば、選挙への「影響力」が判明する。2019年参院選の年齢別の投票率をもとに、投票人数を計算すると、以下のようになる。

 

年齢   人口   投票率  投票しそうな人数
50~54 935万人 55.4% 518万人
55~59 796万人 55.4% 441万人
60~64 741万人 63.6% 471万人
65~69 763万人 63.6% 485万人
70~74 951万人 56.3% 535万人
75~79 685万人 56.3% 386万人
80~84 570万人 56.3% 321万人
85~89 394万人 56.3% 222万人
90~94 197万人 56.3% 111万人
95~99  57万人 56.3%  32万人
100歳以上 9万人 56.3%   5万人

 

60歳以上:合計4367万人のうち2568万人が投票
50歳以上:合計6098万人のうち3527万人が投票

 

「2022年6月1日の人口推計を見ると、日本に60歳以上は合計4367万人います。そのうち2568万人が投票するとすれば、全投票者数5148万人のちょうど半分にあたります。つまり、60歳以上の参院選への影響力は50%となる。

 

 もっと年齢を下げて、50歳以上で見ると、6098万人のうち3527万人が投票することになり、なんと全投票者の69%にあたるんです。つまり、50歳以上の選挙への影響力はほぼ7割。これが日本の『シルバー民主主義』の実態です」(角谷氏)

 

 高齢者の反発をおそれ、問題は先送り。日本は選挙をするたびに同じことを繰り返してきた。

 

「60歳以上は、日本の高度成長を体験しており、人生でつらいことがあったとしても、そう悪い状態で来たわけではない。少なくとも、『よかったと思える体験』が確実にある世代です。

 

 団塊世代も、社会のなかで比較的いいポジションにいます。日本は戦後にいろいろトラブルも抱えたけれど、そう悪いことにはならなかったという印象を抱いているはずです。

 

 50代後半はバブルを経験し、日本が豊かだった時代を知っている最後の世代です。50代前半は『失われた30年』の入口ですが、その下の世代に比べれば正社員の口も多く、はるかに恵まれています」(同)

 

 最近は若手の政治家も増えているが、こうした政治家は若い世代のことを意識していないのだろうか?

 

「30~40代の政治家も出てきていますが、官僚出身者が多くて、理屈だけは一人前の政治家が多いんです。いい時代を知っている高齢の有権者は、特に現状を変えるつもりはないので、多くが同世代の政治家に投票する。

 

 現状をおかしいと思い、改革したいと考えれば、理屈だけは素晴らしい若手政治家に投票することになりますが、こうした政治家は現実的に政治を変える力はない。

 

 結果として、『まあこれぐらいで落ち着くだろう』『自民党に任せておけば大丈夫だろう』と問題を先送りする政治になってしまうんです。

 

 野党も頼りなく、『このままでは日本がダメになる』と本気で言う政党がないから、過激な発言をする小さな野党に注目が集まる。もちろん、それで大局は変わりません。

 

 いまのように、選挙直前だけ有権者に媚びるような政策を訴えるだけでは、世の中はけっしてよくなりません。とはいえ、若い世代を優遇するため、年齢で投票権を制限したり、若い有権者に2票を与えたりするような選挙制度改革は、日本では無理でしょう。

 

 ただ、少なくとも政治家は、最悪の状況のイメージを常に持っておいてほしい。たとえば、『人口8000万人になったときの日本』や『移民を受け入れた場合の日本』を想定するなど、厳しいシミュレーションを選挙で見せていかないと、日本の将来は明るくなりません」(同)

 

 いまのままの「シルバー民主主義」が続けば、日本はずるずると過去の資産を食いつぶすだけーーこのことを認識した上で、ぜひ投票してほしい。

 

( SmartFLASH )

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