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山上容疑者の事件は “宗教2世問題” なのか…専門家が語る「親が信者」の苦悩
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.07.12 06:00 最終更新日:2022.07.12 06:00
7月8日に発生した安倍晋三元首相の銃撃事件。逮捕された山上徹也容疑者は「特定の宗教団体に恨みがあった」と供述していると報道されている。
山上容疑者を知る男性は、山上容疑者が「自分の家族が統一教会に関わっていて、霊感商法トラブルでバラバラになってしまった。統一教会がなければ、今も家族といたと思う」と語っていたと、本誌取材に証言している。
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さらに、7月11日に会見を開いた統一教会(現在は世界平和統一家庭連合)は、山上容疑者の母親が「当協会の協会員であり1カ月に1回程度行事に参加していた」「山上容疑者は信者ではない」と語った。
こうした山上容疑者と統一教会の関係について、「いわゆる “宗教2世問題” である可能性が出てきたことで、衝撃を受けています」と語るのは、カルト宗教に詳しいジャーナリスト藤倉善郎氏だ。
「親が特定の宗教にドはまりし、親が子供に信仰を強要したり、子供たちが貧困や精神的な苦痛、そして世間からの差別的な視線に苦しんだりするケースは非常に多いんです。これを “宗教2世問題” といいます。
報道によると、山上容疑者の母親は、統一教会へ献金しすぎたために破産したといいます。破産するほど献金するなど、通常であれば考えづらいことですが、のめり込んでしまうと、当たり前のようにおこなってしまう。
特に統一教会の場合は意図的に仕向けることが多く、親にお金がないため、2世は学費を出してもらえないど、貧困に苦しむケースがあるんです」
また、統一教会ではないが、進学できたとしても親の意向で宗教法人が運営する学校に通うことも多い。
「学歴は、その後の人生に必ずついてまわるものです。一度その学校に通ってしまうと、経歴として残るため、周囲から “奇異な目” で見られることになります。後に信仰を失って宗教団体から抜けても、その経歴がついて回ります。
また、信仰をめぐって親との関係が悪化することも多く、その場合、宗教2世は精神的な葛藤を抱えてしまいがちです」
山上容疑者の凶行は決して許されるものではないし、本人の供述だけで、“宗教2世問題” が犯行理由だと決めつけることはできない。だが、宗教2世が抱える苦しみや問題について、これまで見過ごされてきたことは間違いない。
「特にオウム真理教事件に関する報道が落ちついた2000年代初めごろから、大手メディアは宗教団体について報じることを忌避するようになりました。ネガティブな報道をおこなうと、その後、団体から猛烈な抗議が来るからです。
典型的なのは、集英社のウェブメディアで連載していた漫画『「神様」のいる家で育ちました~宗教2世な私たち~』(菊池真理子著)でしょう。まさに宗教2世特有の生きづらさを描く漫画ですが、幸福の科学からの抗議で削除してしまいました。
今回の一件で、山上容疑者と重ね合わせて、宗教2世の方を偏見の目で見たり、責め立てるような投稿をすることだけはやめてほしいです。でも、一方で、彼ら彼女らが抱える困難について、きちんとした理解が進むことに期待したいです」
生きづらさを抱える人々への理解が深い国こそ、“美しい国” ではないのかーー。
( SmartFLASH )