安倍晋三元首相が銃撃を受けて死亡した事件をめぐり、全国霊感商法対策弁護士連絡会が7月12日、東京都内で記者会見した。
逮捕された山上徹也容疑者が「恨む気持ちがあった」と供述したとされるのが宗教法人「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)だ。
連絡会はこの日公表した声明で、「元信者やその家族の苦悩や葛藤、生活の困窮などの悩みに接してきた当会としては、かねてこのような実情について心から憂えてきた」とし、「こうした問題に対して社会としてどう取り組むべきか改めて問われている」と指摘した。
旧統一教会をめぐっては、不安に陥れて印鑑や壺など、高額な物品を購入させる霊感商法とのかかわりや、高額な献金が社会問題化した。
前日の7月11日、教団が「2009年以降はコンプライアンス強化でトラブルはない」と主張したことに対して、連絡会は、2009年以降の被害で、旧統一教会側の責任を認めた裁判所の判決などを示し、「2009年以降も被害が出ている」と批判した。
連絡会が同日公表した資料では、弁護士や消費生活センターが受けた旧統一教会に関する相談は、2017年から2021年までの5年間に限っても約580件あり、被害総額は約54億円にのぼるという。
直近5年間でも被害が出ていることが報道されると、ネット上では《宗教法人にも課税せよ》という声が広まった。
《宗教法人が課税対象から除外される理由が理解できない》
《宗教団体で普通に利益があるなら課税はするべきではないでしょうか? 結局、組織票として大きいから政治家が強く提言できないなどしがらみの話だと思っています》
《今では、名ばかりの司法国家日本ですが、当たり前の対応をするつもりがあるなら、宗教法人の収入を課税対象にすることから》
宗教法人にも課税せよ、という声が高まっていることに対して、宗教学者の島田裕巳氏がこう話す。
「旧統一教会は、非常に複雑でさまざまな事業体の連合みたいなもの。宗教法人としての旧統一教会はその一部ともいえるし、その中心ともいえるので、見極めが難しい。
実際に裁判で負けている事実もあるが、旧統一教会本体がこの被害額を生んでいるのか断定するのは難しいところもあります。
旧統一教会本体は2009年からコンプライアンスを重視する姿勢を見せている。だから、本体はそういうことに手を出していないと思うんです。ただ、そういうことに手を染めてきた人が依然としてやっている可能性はあります。
宗教法人に対する課税は、いままでもずっと言われてきたんですが、宗教法人そのものがまったく課税されていないわけではありません。優遇されてはいますが、収益事業に関しては課税されているし、職員は源泉徴収で課税されている。
まったく課税されていないという認識が世の中に広まりすぎているので、認識を正確に持つ必要があると思います。
霊感商法などによって得た収入は、宗教活動で入った収入にはなっていない可能性がある。ですから、宗教活動に課税しても、被害防止に結びつくとは限らないんです。
宗教法人が税制上、優遇されているのは、宗教法人が不動産を持っていて、それを維持できるようにするのが前提としてあります。たとえば伊勢神宮に固定資産税をかけたら、維持が全般的に難しくなってしまう。
今回の事件があまりにも衝撃的なことはわかりますが、もう少し冷静に議論すべきでしょう」
宗教法人の課税強化となれば、その影響は計り知れない。今回の事件の余波はどこまで広がるのかーー。
( SmartFLASH )