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価格据え置きで内容量が減る「ステルス値上げ」怒りの声が上がる中「対抗策はある」とエコノミスト
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.08.03 14:50 最終更新日:2022.08.05 16:13
帝国データバンクは、2022年10月に年内最多の6000を超える食料品の値上げがおこなわれることを発表した。円安やコスト高を背景に、価格改定をおこなうケースは引き続き増加し、再値上げといった動きも含め、価格が上昇した品目は8月中にも年内累計で2万を超えるとみられるという。
とかく値段に敏感な日本の消費者ゆえに、メーカー側は価格を据え置いて値上げをする裏技を使っている。つまり商品の内容量を減らす方法で、「ステルス値上げ」と呼ばれているものだ。
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直近の事例を見てみよう(メーカー・商品名、内容量、改定日の順に記載)。
・雪印メグミルク「切れてるチーズ」 148g → 134g(2022年9月1日~)
・カルビー「ポテトチップス うすしお味」 85g → 80g(2022年1月31日~)
・ミルキー「カントリーマアム」 20枚 → 19枚(2022年7月12日~)
・ネスレ「キットカット ミニ」 14枚 → 13枚(2022年6月15日~)
・ロッテ「コアラのマーチ」 50g → 48g(2022年7月5日~)
利益が減って苦しい企業の懐事情がうかがい知れるが、正々堂々とした値上げでないからか、SNS上の反応は辛口だ。
《こ、これがステルス値上げか、、、 内容量に応じて袋小さくしろよ、、、》
《ポテトチップスクリスプ!筒の1/3入ってない!!カルビーさん!入れ忘れ?》
《いつの間にかカントリーマアムが19枚になっている…》
《オフィスグリコとかほんと、せこいよ…どんどんどんどん小さくなってく…》
こうした企業の対応をどう考えるべきか。エコノミストで明治大学政治経済学部教授の飯田泰之氏が解説する。
「たしかに『せこい』というのは、もっともです(笑)。企業というのは、一定の利益を得るために顧客の囲い込みをおこなっています。すなわちブランドイメージを顧客に与え、とくに理由がなければ、その銘柄を優先的に買ってもらえるようにしています。ただ顧客も、企業が値上げをすれば別のブランドを探し始めます。現在の原材料の高騰を考えれば値上げは必然ですが、ほかのブランドへ顧客が流れることを防ぐために、できるだけ、分かりにくい方法で値上げをしているのです。
また、ほとんどの消費者は『値段』というものを強く記憶している一方で、いつも買っているウインナーが何本入っているか、を把握している人は多くありません。そういった背景から、値上げをするよりも内容量を減らす方向に進んでいると思われます」
やり口についてはさておき、値上げをせざるを得ないのは、それだけ食料品メーカーの競争が激しいからだという。
「原材料費の高騰に対し、商品価格を変えて対応せざるを得ないというのは、それだけ企業が利ざやを稼げていない証拠です。十分な利益を上げている企業なら、多少のコスト高は儲けを圧縮して吸収できます。利ざやが薄いということは、日本の食料品メーカー同士の競争が激しいことを示しています。
すなわち、その業界の市場が効率的であることを意味し、各メーカーはギリギリのところで勝負しているのです。
物価高は世界的な現象で、日本だけが無縁でいることはできません。物価高というとすぐに円安がやり玉に上がりますが、為替要因は3分の1に過ぎず、3分の2は、そもそも海外でも高いものを輸入するから。また、為替要因の半分は、ドルが強すぎることにあります。つまり、日本の個別の政策では如何ともしがたいのです」
物価高に対し、なすすべはないのか。
「まず個人レベルでいうと、2021年から米の価格は低い水準が続き、葉物野菜では値段が下がっているものもあるので、食事メニューの再考などで生活防衛ができるのではないでしょうか。要は、小麦を使った商品の値段が上がっているのであって、すべての食品で高くなっているわけではないのです。
企業側については、コストと価格がギリギリである状況は、それだけ商品の差別化が十分にできていないことを示します。この物価高を、より付加価値の高い商品開発を目指す機会にできるかもしれません。
そして政府は、物価高がより生活を圧迫する、低所得者に向けた補助や減税などをおこなうべきです」
賃金が上がらない今、消費者も苦しいが、食料品メーカーもギリギリの利益で戦っている。これまで買わなかった商品やメニューを試したりして、日常に工夫を加えることも必要だ。
( SmartFLASH )