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終戦記念日「AI技術」でカラー化されたモノクロ写真で見える太平洋戦争とウクライナの今

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.08.15 22:20 最終更新日:2022.08.16 10:54

終戦記念日「AI技術」でカラー化されたモノクロ写真で見える太平洋戦争とウクライナの今

1945年8月15日,玉音放送をラジオで聴き,涙を流す日本軍の捕虜。グアムの収容所で撮影された写真

 

「モノクロ写真をカラー化することで、『遠く離れたできごと』が、現在と『地続き』になります。“歴史”が身近になれば、私たちは過去を話題にし、さらに深く知ろうと思うようになるのです」

 

 こう語るのは、AIを使って、戦前から戦後にかけてのモノクロ写真をカラー化するプロジェクト「記憶の解凍」に取り組む、渡邉英徳東京大学大学院情報学環教授だ。

 

 

 その成果を、ともにプロジェクトを進める東京大学3年生の庭田杏珠さんとともにまとめた『AIとカラー化した写真でよみがえる 戦前・戦争』(2020年刊)が、6刷6万部とロングセラーとなっている。本書と渡邉教授のアーカイブから、カラー化された当時の写真を紹介する。

 

「終戦に関係づけると、銀座松屋前と上野駅構内の2枚の写真が印象的です。いずれも終戦から1年後の東京の様子です。タバコを買う余裕があった人々、そして駅の床にじかに寝なければならなかった子供たち。戦争がもたらしたものをよく表わしています」

 

 カラー化は、当時の人々の服装や文化を資料などから機械学習したAIが「自動色づけ」したあと、人の手で補正を加えて進められる。AIは、人の肌・空・海・山など、自然物のカラー化は得意である一方、衣服・乗り物など人工物は苦手だという。そのため、戦争体験者への取材やSNSで寄せられたコメント・資料などをもとに、手作業で補正していく。

 

 あくまで「予想」による再現ではあるが、コンピュータと人のコラボで、限りなく“本物”を追求する。そうして得られた写真は、戦争をリアルにし、私たちは「他人ごと」でなく「自分ごと」としてとらえられるようになる。

 

 本書を編集した髙橋恒星さんが語る。

 

「本の最後に、原爆投下からちょうど1年後の、広島のデパートの屋上から焼野原を見下ろすカップルの写真を掲載しています。著作権の関係でウェブでは紹介できないのですが、この写真を見たご本人の男性が『私です』と、名乗り出られたそうです。お2人はこの撮影の5年後に結婚され、残念ながら奥さまのほうは2019年に亡くなったそうです。この男性の証言を庭田さんが取材し、さらに色補正を加えていきました。

 

 じつは、この写真は本の出版前に渡邉先生がTwitterで公開しており、リツイートは1万7000回を超え、大反響だったそうです。『カップルが写っていることで未来を感じます』『こうやって復興していったのかと思いました』といったコメントが寄せられたとのことです。

 

 このお話しを聞いたとき、プロジェクトの力を実感しました」

 

 渡邉教授は現在、「フォトグラメトリ」というさまざまな角度から撮影した写真を合成する3DCG(3次元コンピュータグラフィックス)の技術によって、ウクライナの惨状を再現し、記録するプロジェクトにも注力している。

 

「たとえばGoogle Earthのように、上空から見た写真を撮る人工衛星は、ロシア軍の手の届かないところを飛行しています。しかし、フォトグラメトリの3Dデータは、ウクライナの地元の方々が命がけで集めた画像をもとにしており、『被害の実情を世界に伝えたい』という、血の通ったデータといえます。

 

 俯瞰的な戦況を伝えることと、人々の視点でとらえた被害の状況を記録・発信し、後世の検証のために伝えることの、両方の目的があります」

 

 今回、渡邉教授が作成したウクライナの画像の中からも3枚、取り上げる。日本の終戦記念日に当時を回顧するとともに、現在戦っているウクライナの窮状にも思いを馳せたい。

 

( SmartFLASH )

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