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【旧統一教会】女性信者が訪問販売をおこなう「マイクロ隊」の実態を取引業者が初告白
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.08.21 14:25 最終更新日:2022.08.21 15:23
安倍晋三元首相への銃撃事件以降、注目を集める旧統一教会(世界平和統一家庭連合)。数多くの関連会社を抱え、健康食品の販売などで莫大な利益を上げているとされるが、詳しい実態は明らかになっていない。
今回、旧統一教会のダミー会社へ健康食品を納入している製造業者が、筆者の取材に初めて口を開き、内情の一端を話した。
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「うちが健康食品を卸すようになって、十数年になります。ある日、突然電話がかかってきて『おたくに製造を頼みたい』と言われました。正直、不審に感じましたが、そのあとすぐにスーツ姿の男性2人がやってきて、話がまとまりました。もちろん、彼らは統一教会だなんて言わないし、そのときは、私も想像だにしませんでした」(製造業者、以下同)
まずは3tの受注からスタート。その後、毎年のように増産し、現在は、当初の生産量の4倍を超えているという。
「カネ払いは決して悪くなく、毎回きっちり精算してくれます。先方の対応も、感じがいいです」
製造業者は、会社から研修も依頼されたという。商品の使用法や特徴を説明するためだ。
「参加するのは4~5人だと思って、軽い気持ちで引き受けたら、とんでもない。なんと50人もいたんです。聴講者は全員女性で、おまけに20代の若い女性ばかりで、ビックリでしました。
女性たちは、男性が運転するマイクロバス数台に分乗してやってきました。班長らしき男性から、しっかり説明を聞くように指示され、真剣にメモを取る女性もいました」
研修は計3回、おこなわれた。女性たちは誰もが礼儀正しく、身だしなみも整っていた。髪を染めている人などはおらず、多くがスッピン。全員が男性幹部の指示に素直に従い、私語も交わさなかったという。
「3回とも顔ぶれが違うんです。よくこんなに若い子が集まるもんだ、と思いました。やがて、彼女たちが統一教会の信者で、“マイクロ隊” の売り子だとわかってきました。なぜわかったかというと、彼女たちはうちが卸した商品を、私の親戚や知り合いの家にまで販売していたからです」
“マイクロ隊” とは、若い女性信者の売り子たちがマイクロバスで移動することから、いつしか呼ばれるようになった名前だ。女性信者たちは、特定の場所で全員、降ろされ、そこから一定の範囲を手分けし、戸別訪問して商品を売り歩く。夕方になると、再び降ろされた場所に集合して、バスに乗って帰る。
“マイクロ隊”について、北海道大学の櫻井義秀教授と大阪公立大の中西尋子研究員による研究書『統一教会』では、こう説明されている。
「マイクロはマイクロバスの略称だが、実際はハイ・クラスの一〇人乗りバンを改造した車に六、七名の信者を乗せて訪問販売部隊として全国を行脚する。後部座席三列分の椅子を倒してその上にカーペットを貼ったベニヤ板を敷き、フラットな空間を作る。昼間はそこに座って移動し、夜間は寝袋を使って鰯の缶詰よろしく頭と足を互い違いにして寝る」
この会社は、関東北部の中核都市にある。社屋は一見するとアパート風で、住宅地にあるため、営業活動をしている雰囲気はまったくない。ここで女性信者たちは共同生活をおこない、早朝からマイクロバスで出かけて、夕方に戻ってくるという日々を送っている。
同社は、筆者の取材に旧統一教会との関係を否定したが、旧統一教会を長らく取材してきたジャーナリストの鈴木エイト氏が、見解を述べる。
「この会社を直接は知りませんが、登記情報を見ると典型的な事業内容ですね。マイクロ隊を操る旧統一教会系の会社といっていいでしょう。
20代で旧統一教会系のマイクロ隊に入り、脱会した女性信者を知っていますが、かわいそうなことに、今も足に後遺症があるんですよ。わずかな昼食休憩を除き、1日に何十kmも歩かされる。それで足の骨がすり減り、歩けなくなるような若い女性が多いんです。本当にひどいことをするなと思いますね。
訪問販売は教会の資金稼ぎのためにおこなわれますが、同時にマインドコントロールの一環でもあります。信者の洗脳を“再凍結”、つまり解けないように強化する目的です。睡眠時間と休憩を最小限に切り詰め、労働力として酷使することで、信者たちに考える時間を与えず、稼ぐことが神の救いであると教え込むのです。結果、自分たちは正しい信仰をおこなっている、と信じて疑わなくなります」
“マイクロ隊”の内実について詳しい、全国霊感商法対策弁護士連絡会の渡辺博弁護士が解説する。
「旧統一教会には『ハッピーワールド』『野の花会』『しんぜん会』など、多くのダミー組織があり、食品販売、旅行会社、老人ホームなどさまざまな事業をおこなっています。
今回、内実が明らかになった会社も、旧統一教会系と見て間違いないでしょう。
信者たちは『自分はよいことをしている』と信じており、独居老人や介護老人の住む家庭、あるいは地震や風水害の被災地を訪れ、親切を装って接近し、健康食品などを売りつけるんです。
売り子は若い人とは限らず、60代や70代の女性もいます。先輩に対しては絶対服従で、売り上げが伸びなければ、断食、真冬の冷水修行、男性の場合だったら丸刈りといったペナルティがつきます。
一方、ノルマを達成すれば、組織内のステータスも上がっていきます。 旧統一教会の序列は、下から班長→青年部長→教会長→地域長→教区長→本部役員となっており、みなステータスを上げるのに必死です」
旧統一教会は、本部を東京に置き、全都道府県に支部を持っている。
「信者たちは相互監視により、24時間コントロール下に置かれています。通常、年会費3万6000円を支払うことが求められるので、1000名の会員がいれば、年間3600万円もの資金が集まるわけです。教会は、信者たちからの売り上げの吸い上げや、献金などさまざまな名目で収益を得ています」(渡辺弁護士)
筆者は、販売の実態について旧統一教会に取材を申し込んだが、「取材は受けつけない」と拒否されてしまった。苦しむ人がこれ以上増えないよう、さらなる調査が必要だろう。
取材・文/岡村青
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