スシローで提供されるすべてのマグロは、一般的に回転ずしで使用されるキハダマグロではなく、味がより濃厚とされるメバチマグロであると運営会社「あきんどスシロー」は複数のテレビ番組で喧伝していたが、「鉄火巻」には70%キハダマグロを使っていたと、8月31日の『デイリー新潮』が報じた。
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即日、スシローは反論し、同誌の『スシローの悪質な「マグロ偽装」疑惑 DNA調査を行うと「喧伝されているのとは違うマグロが」』と題された記事で指摘されたような「偽装」や「悪意」を否定した。スシローの主張はこうだ。
テレビ番組で「メバチマグロのみを使用」と主張していたのは、握りずしの「まぐろ」のことで、それは事実である。「鉄火巻」などほかの商品では、キハダマグロやメバチマグロ、インドマグロ、本マグロなどをその時点の仕入の状況やメニューの構成により使っている。
一方、記事で「味が薄い」と指摘され、同誌から問い合わせられたのは「鉄火巻」のことで、担当者が認識を誤って「メバチマグロのみを使用している」と回答してしまったという。誤った情報を伝えたことに関しては謝罪したうえで、意図的にだまそうとしたわけではなく、同誌の報道に対し遺憾と表明した。
これまでスシローは、2022年6月に在庫切れで提供できない商品のCMを続けた行為が景品表示法で禁じられた「おとり広告」だとして、消費者庁から再発防止命令を受けている。また、直後の7月には「生ビール半額キャンペーン」開始前に時期を示さず宣伝し、客に全額請求したため批判を浴び、差額返金に追い込まれている。
飲食業界に詳しいグルメジャーナリストの東龍氏が今回の騒動を解説する。
「苦しい言い訳に聞こえますね。メバチマグロかキハダマグロかなんて、一般のお客様は気づきません。そこにつけこもうとする意図や、偽装を指摘されても仕方ないでしょう。
やはり人の口に入れるものなので、安全性の面でも正しい表示が求められます。また、お客様は品種のブランドや、満足感などの “食体験” に対してお金を払っているので、それを欺くのは悪質と言われてもおかしくない。
飲食業界はほとんどが中小企業ですが、スシローを展開する親会社はプライム上場企業で、そういう大企業が提供する情報が間違っていたのは、その時点でどうかと感じます。
卸業者の方は提供している魚種についてすべて知っていますし、今はSNSがあるので、別種のマグロが使われていることは早晩漏れていたはずです」
なぜスシローで立て続けに問題が起こったのか。
「スシローの個別な事情はわかりませんが、高級店と違ってマスを相手に安売りで勝負する業態では、こうした中身を偽ってよく見せようとする『優良誤認』の問題が起きやすいとは言えます。
1円でも儲けようという収益性や、とにかく来店者を増やそうという集客ばかり優先され、飲食店の本来の目的であるお客様の満足度がないがしろにされがちです。
儲けが出ずに苦しいのであれば、まずは値段を上げるべき。そして、そのことをお客様にきちんと説明して納得してもらう努力をすべきです。
スシローの行為は批判されるものですが、日本の外食産業ではデフレが続いている状況が背景にあります。
ニューヨークでラーメン1杯3000円といった報道もありましたが、それに対して日本の飲食店は世界的にもとにかく安い。また、賃金も日本はほとんど上がっていない。
牛丼が50円値上げされて大変などと騒ぐのではなく、相応の値段になってきているという意識をもつことが大切です。多く支払ったぶんだけお金が回り、最終的には自分の給料も上がるという、長い目で見ることが重要です」
安さで競争するという特殊事情はあるかもしれないが、スシローが築いた信用を一瞬で失ってしまったのは間違いない。“あきんど” は再び客の心をとらえられるか。
( SmartFLASH )