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【独自】スリランカで義務教育に日本語を採用…大臣補佐官が本誌に明言

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.09.17 06:00 最終更新日:2022.09.17 06:00

【独自】スリランカで義務教育に日本語を採用…大臣補佐官が本誌に明言

新大統領の投票結果を待つスリランカの人々(写真:ロイター/アフロ)

 

 経済危機が深刻化し、燃料不足や物価高に悩まされてきたスリランカ。7月には事実上の破産状態となり、大統領が国外脱出するなど混乱が続いたが、ウィクラマシンハ新大統領のもとで、国の再生が始まっている。

 

 新政権は、国家再建にあたり一つの大きな決断をした。それは、日本との関係を深めるため、義務教育日本語を選択できるようにしたのだ。

 

 小学校高学年から始まる「語学」の選択肢に、これまでの英語・タミル語・シンハラ語に加え、新たに日本語が加わる。国をあげての義務教育の導入は、世界で初めてという。8月8日に閣僚会議で決定しており、今後、なるべく早い実現を目指して作業が始まる。

 

 

 安倍晋三元首相の国葬に参列する新大統領のため、現在、日本で下準備をしている同国の労働大臣補佐官、兼、観光大臣補佐官のぺレラ・ルワン氏に話を聞いた。ルワン氏は、政府見解ではなく、個人の見解だとしたうえで、本誌の取材に応じた。

 

――なぜ日本語が義務教育の選択肢に入ったのでしょうか?

 

「長年にわたる日本からのODA支援のおかげで、私たちにとって日本という存在はとても大きなものです。学校では、日本の文化や柔道などを教えており、国民は日本に親近感を抱いています。ですから、日本語の採用自体は特に違和感のない政策なのです。

 

 義務教育に日本語を採り入れることはすでに決定事項となっていますが、いま労働大臣が計画しているのは、学校で日本語を学べない人たちに向け、地域のお寺などで日本語を教えるプロジェクトです」

 

――前政権下では、中国との関係が深いように見えました。

 

「スリランカでは2009年まで内戦が続いていました。それまで日本からのサポートが大部分だったのですが、内戦が終わると急に中国の資本が流入し、中国の企業やプロジェクトが激増しました。国内に流通するものも中国製が増え、日本の名前を聞くことがどんどん減っていきました。

 

 しかし、中国のプロジェクトでは、労働者も中国から連れてくるため、スリランカに仕事が増えることはありません。しかも、荒っぽい人も多く、ある日、突然、街なかに道路ができたり、中国語の大看板ができたりしました。

 

 中国人の増加とともに、トラブルも増えたのが実態です。その象徴がハンバントタ港を奪われたことです」

 

――港が奪われるとはどのような状況なのでしょう?

 

「ハンバントタ港は、スリランカ3大国際港の1つとして2008年から建設が進められました。建設費用の85%が中国からの借金でしたが、スリランカの経済危機で返済できなくなり、2017年、向こう99年間の運営権を中国企業に貸与したのです。

 

 中国は『どんどん新しい船が入ってくる』と言いましたが、蓋を開けてみれば港はまったく整備されておらず、日本が管理している別の港の船を横取りしようとさえしています。

 

 スリランカはインドやアメリカにとっても重要な位置にある国ですので、港が中国軍港に転用されることはないと思っていますが、ビジネス的にいえば、日本など他国に大きな迷惑をかけているのが実情です」

 

――7月にスリランカが国家破綻したというニュースを見て驚きました。現地ではどのようなことが起きていたのですか?

 

「国が経済危機になったのは、中国寄りの政策を続けてきたことが原因だとして、ようやく国民が声をあげたのです。今年の4月ごろから暴動が始まり、政治家にプレッシャーをかけて国を正しい方向に戻そうという動きが活発になりました。

 

 首都には『ゴーダゴー村』(「大統領よ帰れ」村)という大統領を追い出すためのエリアまででき、そこから毎日、さまざまなニュースが配信されました。こうして、ラジャパクサ前大統領をはじめ、旧政権の幹部たちが次々に辞任していったのです。

 

 現在、国内の情勢を回復させるため、ウィクラマシンハ大統領は国際通貨基金(IMF)やアジア開発銀行に支援を要請しています。そのなかで、特に期待しているのが日本からの支援なのです。スリランカは、先日、初めて国家間の支援を日本に正式に依頼しました。日本との関係が以前のように戻ることは、うれしい限りです」

 

――スリランカ政府の公式ニュースサイトが8月に報じたところでは、日本語教育の導入の目的のひとつは「特定技能労働者」の募集だとされています。日本は介護、農業、飲食業、航空など14分野で、7カ国から35万人の労働者を呼び込む計画です。この計画に乗ることがスリランカの再生に役立つということですね?

 

「はい。もともと大の親日国家といえるスリランカでしたが、小学校から日本語を学び始める人が増えれば、今後、ビジネスや文化の交流がよりいっそう深まるものと期待しています。

 

 スリランカと日本は、仏教国家という点で共通していますし、『目上の人を大切に』といった道徳、まじめな考え方も似ています。日本語ができれば、日本で活躍できるスリランカ人はとても多いと思っています。

 

 ただ、問題は日本語を教えられる先生が少ないことです。大学ではこれまでも日本語教育があったので、教科書はあるんです。でも、先生は少ない。今後、スリランカで日本語を教えてくれる人が増えればうれしいですね」

 

 スリランカと日本の新しい時代が始まりそうだ。

( SmartFLASH )

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