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小林よしのり「共謀罪で物言えぬ『独裁国家』になる」

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2017.05.30 16:00 最終更新日:2017.05.30 21:20

小林よしのり「共謀罪で物言えぬ『独裁国家』になる」

 

「当時『共謀罪』があったら、わしは前科一犯になっていただろうね」

 

 計画段階の犯罪を処罰する「共謀罪」を盛り込んだ組織的犯罪処罰法改正案が、衆議院を通過した。これに強く反対するのが、漫画家の小林よしのり氏(63)だ。

 

 1996年、薬害エイズ訴訟に関わっていた小林氏は、正月のテレビ番組で一年の目標に「天誅」と掲げた。

 

「資料を出さない厚生省(当時)への『テロ予告』のつもりだった。実際は人畜無害なパフォーマンスをしようと思っただけよ。実行はせんかったけど、仲間とも相談した。もし共謀罪があれば、逮捕されていた可能性が高いよね」

 

 また1994年には、オウム真理教関係者に、VXガスで狙われた経験がある。

 

「つまりわしは、テロを実行しようとした経験と、テロに狙われた経験、両方ある。だがその両方を天秤にかけても、監視社会を強めてくれという気にはならない。内心の自由、表現の自由は絶対に譲れんからね」

 

 共謀罪は東京五輪を見据えた「テロ対策」が目的とされ、新聞各社の世論調査では法案への賛成が反対を上回っている。だがその先に待ち受ける未来=監視社会に、小林氏は警鐘を鳴らす。

 

「一般市民のほとんどは、たとえ監視されても、自分が安全ならいいと思っているかもしれない。ところが薬害エイズの被害者のように、権力の犠牲になってしまったとき、誰だって『もの言う市民』にならざるをえない日が来る。

 

 それに、たとえばわしが監視対象になれば、スタッフや編集者、親類、友人に至るまで、わしに縁のあるすべての人たちが監視対象になる。電話の盗聴はもちろん、メールやSNSの内容だって対象になるだろう。

 

 日本は相互の信頼感がとても高い社会だけど、共謀罪によって猜疑(さいぎ)心が芽生え、社会全体の信頼感がなくなるだろうね」

 

 だがこの危機的状況を、テレビをはじめとした大マスコミがほとんど取り上げていない。かつて言論が委縮し、「もの言う」ことができなくなった社会は、独裁国家へと突き進んでいった。戦前の日本やドイツがそうである。

 

「『社会や権力に関心を持たないと、本当に危ない』そのことをしっかり知らせないテレビや新聞には、大きな責任がある。わしなら5分あれば、わかりやすく説明できる話なのに。でもどこも腰抜けで、そんなことはやらない」

 

 法案の意図が追及、報道されないままでは、当面は安穏と暮らせればいい、と国民は考えてしまうのが当然だ。だが気がつけば、「テロ対策」の名目で国による監視の目が強まることになる。

 

「『自由を少なくして監視してくれ』わしはそんな気持ちにはならないね。自分に関係ないからと、ユダヤ人がどんどん収容所に行きよるのを、指をくわえて見ていられないよ」

(週刊FLASH 2017年5月23日号)

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