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安倍晋三元首相、引退後の夢は「映画監督」…好きな作品は『ゴッドファーザー』『三丁目の夕日』

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.09.25 18:37 最終更新日:2022.09.25 18:45

安倍晋三元首相、引退後の夢は「映画監督」…好きな作品は『ゴッドファーザー』『三丁目の夕日』

安倍晋三元首相

 

 7月に暗殺された安倍晋三元首相は映画好きを自認していた。政界引退後の夢も映画監督になることだった。第1次安倍内閣解散後、雌伏のときにあたる2010年4月、文化放送のラジオ番組『安藤和津 TEPCO トークマルシェ』にゲスト出演した際も、以下のように語っている。

 

「俺が(映画を)作ったら絶対ヒットするなと思ったりして。実際は難しいんでしょうけど、自分でメガホンが握れたらどんなにいいかと」

 

 

 安倍氏が亡くなった7月8日付の「NEWSポストセブン」の記事でも、昭恵夫人の以下のセリフを紹介している。

 

「主人は、映画監督になるのが夢なんですよ。DVDを見ながら、『俺だったら、こう撮るのにな』とか『このセリフはいらない』なんて言ってますよ(笑)」

 

 好きなジャンルは実録ヤクザかギャングもので、上記ラジオ番組では、温めている作品の構想も披露している。

 

「自分で撮るとしたらヤクザ映画ですかね。『仁義なき戦い』をさらにドキュメンタリータッチにして、それと『ゴッドファーザー』を足して2で割ったものとか」

 

 だが、番組で「好きな作品は?」と問われると、邦画では『蒲田行進曲』、洋画では『卒業』、当時の最新作では「『ALWAYS 三丁目の夕日』がお気に入り」と答えている。いずれも万民受けするヒット作で、『仁義なき戦い』とは好対照だ。

 

 はたして、どちらが本音なのか? 元文部官僚の映画評論家で、自身でも『子どもたちをよろしく』などをプロデュースしている寺脇研氏は、かつて首相動向を調べ、月刊誌『表現者』に安倍氏の映画遍歴についてエッセイを寄稿している。

 

 寺脇氏がこう語る。

 

「首相たる者が観る映画にしては、いかにお粗末かを書いたんです。歴代の首相は多忙で、年に2~3本観ていればいいほう。それに比べればじつによく観ているが、単純に自分の好みで流行りの作品を選んでいて、問題意識が感じられないんです」

 

 もっとも、総理大臣といえども人の子。公務から離れれば、好きな映画を観るぐらい許されようが、寺脇氏曰く「首相の格があまりに感じられない作品チョイス」だという。

 

「洋画は気になる作品をランダムに選んでいますが、どこか話題づくりのために観ているような、スナックにたむろする自称映画好きのおっさんみたいなセンスです。

 

 また、邦画はいかにも『日本会議』が喜びそうな、(トルコとの合作の)『海難1890』なんかもしっかり押さえてアピールしているし、あとはお友達の関わる作品が多いでしょう。(同じ成蹊学園出身の)中井貴一の主演作は必ず観ているし、百田尚樹原作の『永遠の0』『海賊と呼ばれた男』などもしかり」(寺脇氏)

 

 安倍家は年越しを六本木ヒルズ内のホテル・グランドハイアット東京で過ごすのが恒例だ。大晦日や正月に、ホテルから目と鼻の先にあるTOHOシネマズで鑑賞することが多い。同伴者は昭恵夫人か母親の洋子さんがもっぱら。安倍氏が鑑賞する作品には、彼女らの好みも反映されているのだろう。

 

 寺脇氏が続ける。

 

「私が文化庁文化部長時代に接した小渕(恵三元首相)さんはさすがでしたね。1997年の橋本龍太郎内閣の外相在任時、『対人地雷禁止条約』調印に貢献し、1999年公開の『地雷を踏んだらサヨウナラ』を劇場まで観に行っているんです。

 

 また、残念ながら本番前に急逝されたけど、2020年7月の沖縄サミットの成立にも尽力しました。それで、前年末に公開された沖縄を舞台にした『ナビィの恋』を観に単館の上映館まで足を運んだ。つまり、映画鑑賞という行為自体が政治姿勢の表れだったんです」

 

 だが、映画と名がつけば、ひとまずなんでも観てしまうシネフィル(映画通)は多いだろう。だとしたら、安倍氏を「八方美人」だと揶揄はできない。とはいえ、寺脇氏の「あくまで首相は公人。今の時代、DVD鑑賞もできるのだし、本当に観たい作品は家でこっそり楽しめばいい」という意見に頷けなくもない。

 

 安倍氏は映画だけでなく、海外ドラマファンでもあり、映画やドラマで現実逃避を図っていたと考えると腑に落ちる。寺脇氏はこう解釈する。

 

「政界って魑魅魍魎(ちみもうりょう)の集まりだから、ヤクザとかギャングなどの、もっとわかりやすい権力に憧れてたんじゃないですか?

 

 でも、米議会の権力闘争を描いた『ハウス・オブ・カード』のファンともいうし、イスラム過激派に洗脳された兵士を取り巻くスパイ・サスペンス『HOMELAND』にもハマったらしい。あと、イギリス王室現代史の裏面を赤裸々に描いた『ザ・クラウン』もお気に入りだったとか。脈絡がないといえばないですね」

 

 寺脇氏は「2世・3世の政治家や官僚には、映画監督をやってみたいと言う連中がけっこう多いんです。それも『権力欲の別の表れ』でしょう」とこぼす。ただ、元総理大臣が監督した映画など前代未聞。安倍氏の演出を見てみたかったと妄想する映画ファンも多いことだろう。

 

文・鈴木隆祐

( SmartFLASH )

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