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「賃金が上がらない日本こそ、世界経済で勝てる」専門家が円安、物価高に悲観しないワケ
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.11.18 06:00 最終更新日:2022.11.18 06:00
カップ麺、菓子、ティッシュペーパーに光熱費。日々、紙面に躍る“物価高”の文字。
一方で給料はほとんど上がらず、10月17日には、1ドル150円という32年ぶりの驚異的な円安を記録した――。
「日本経済は終わった」と悲観する声が多いなか「むしろ、日本が“一人勝ち”する時代がやってきますよ」
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と語るのは、慶應義塾大学・小幡績准教授だ。
「多くのエコノミストたちが、日本経済を『世界最悪だ』とこき下ろしていますよね。彼らの理屈はこうです。『欧米は物価も上がっているが、賃金も上がっている。賃金が上げられる経済だから、物価が上がっても大丈夫。一方、日本は賃金が上げられていない』。
しかし大前提として、日本は世界の先進国で唯一と断言できるほど、インフレが起きていないのです」
確かに、インフレ率の指標とされる消費者物価指数を見てみると、9月の前年同月比はアメリカの8.2%や、イギリスの10.1%と比べ、日本はたったの3%。一部の報道によると、イギリスの一般家庭では、来年の光熱費が年間100万円を超える可能性があるという。つまり、日本での一部商品のちょっとした値上げなど、かわいいものなのだ。
「欧米の企業は、隙あらば値上げをしますよね。消費者が払える限りの値上げをして、利益を最大化するんです。一方で日本企業は、単年の利益を最大化しようとせず、事業を続けることをなによりも重視します。だから日本企業は、黒字の間は値上げしないんです。
値上げをするのは、値上げしないと赤字で会社を続けられないときだけ。消費者もそれをわかっているので、安易な値上げをすると、怒って離反してしまいます。企業は製造コストが上がっても、値上げしづらいので、できる限り製造過程を効率化することで吸収しようとします。日本企業は、ここで努力しているんです。
しばしば日本企業は生産性が低いと指摘されますが、大きな間違いです。欧米のいう“生産性”とは、どんどん値上げをして利益を上げることです。いわば、消費者からいかにうまく“ぼったくり”できるかということ。一方、日本企業は値上げできるときに値上げせず、値上げが必要になったときには、企業努力で回避しようとするんです。つまり、お人よしで“ぼったくり”が下手なんですよ」
企業の利益率が上がらないのだから、賃金も当然上がることはない。
「Twitter社の解雇騒動のように、アメリカは景気が悪くなれば簡単に労働者をクビにするし、逆によくなったら人を雇います。雇用が不安定なので、そのぶん給料が高い。一方、日本企業は給料を上げない代わりに、急にクビにすることもありません。これには一長一短あります。自らスキルアップに励む人が少ないとか、伸びている会社に人が移らないので、斜陽産業に優秀な人材が残ってしまうといった短所もあります」
だが、日本人の安定と継続性を重視する国民性が、経済を救ったこともある。
「典型的なのが、1980年の第二次オイルショックですよ。あのとき労働者は賃上げを要求せずに、会社の再建に協力しましたし、企業も価格の高騰をなんとか抑えました。ダメージが最小限にすんだ結果、1980年代は世界一の経済になったのです。その後も“安定志向”は続き、リーマンショックでも新型コロナでも、日本の失業率は欧米に比べれば、無視できるほどでした」
こうした独特な価値観が、今後の世界経済で“勝因”となり得るのだ。
「今“持続可能”がしきりに重視されるようになっていますよね。第二次大戦後、世界経済はつねに膨張を目指してきました。膨張を続けるために、スマホやゲーム、SNSなど不必要で中毒性のある贅沢品を発明してきた。しかし、世界的な資源不足や格差拡大を考えれば、こうした近代資本主義が限界を迎えつつあることは明らかです。
そこで求められるのが、日本の“安定志向”でしょう。実際、中国や韓国から、慶應のビジネススクールへの留学希望者が増えているんですよ。日本企業への就職が楽だからです。過酷な競争がなく、安定と持続を目指す日本企業が、彼らにとって魅力的なんです」
さらに、ドイツ証券株式会社アドバイザーで、ストラテジストの武者陵司氏も、記録的な円安が、日本経済の“神風”になるという。
「日本企業の世界的な競争力を奪ったのは、ひとえに1990年代から2010年まで約20年間続いた、超円高時代なんです。円高のせいで、国内でモノを作っても国際的な価格競争に勝てなくなってしまいました。そこで企業は工場を海外にシフトしたり、輸出業をやめて輸入業者に変わったりしたんです。これが円安になれば、産業が復活します。
円高でダメになった日本経済だからこそ、円安になれば勝てるようになるんですよ。IMFのGDPの成長予測からもわかるとおり、来年は日本の株価が、世界の中でいちばんパフォーマンスがよくなると断言しますよ」
ジャパン・アズ・ナンバーワンだ!