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ICBMを実現した「北朝鮮」なぜ経済制裁は効果が出ないのか

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2017.07.05 16:00 最終更新日:2017.07.05 23:08

ICBMを実現した「北朝鮮」なぜ経済制裁は効果が出ないのか

発射実験に成功したICBM(公式サイト「わが民族同士」より)

 

 2017年7月4日、北朝鮮は朝鮮中央テレビを通じ、長距離弾道ミサイル(ICBM)「火星14号」の発射実験が成功したと発表した。

 

 前日の7月3日には、ストックホルム国際平和研究所が、いま世界にある核兵器数に関する報告書を発表しており、北朝鮮の核兵器についても言及していた。

 

 今回の報告書で対象となった国は、アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮の9カ国。

 

 同報告書によれば、2016年は9カ国合わせて1万5395個あった核が、2017年は1万4935個に減ったとされ、世界中の核兵器は減少傾向にある。ただし、北朝鮮は10個から最大で20個まで増加した可能性があると指摘している。

 

 北朝鮮は国際社会から経済制裁を受けている。唯一、頼りである中国も国連の制裁決議を受け、北朝鮮からの石炭輸入を2017年2月から停止している。

 

 10年以上にわたる経済制裁によって北朝鮮の懐事情は厳しくなっているはずだが、どうして莫大な資金を必要とする核開発が可能なのか。

 

 アメリカのニューヨークタイムズ(2017年4月30日付)は、「北朝鮮では、市場を通じてお金を稼がなければ、飢えで死ぬ可能性がある」という、脱北者キム・ナムコル(46)の声を取り上げ、「裏の市場経済」の存在を明らかにしている。

 

 キム氏は脱北前、密輸業者として生計を立てていた。魚の干物、高麗人参、骨董品、メタンフェミン(覚せい剤)を中国国境で売りさばき、その収入で、中国から穀物、人口甘味料、靴下、ビニール袋を仕入れ、北朝鮮で販売していた。国境警備隊に賄賂として、100ドル紙幣や1万円札を隠したタバコを渡すこともしばしばあったという。

 

 今の北朝鮮経済を支えているのが、キム氏のように、闇市場で財をなした「銭主」といわれる新興富裕層の投資家たちだ。

 

 北朝鮮では2014年の法改正で、個人による企業投資が合法化された。ピョンヤンにできた新築高級マンションは、主に銭主と中国資本の所有とされている。農地を借り、従業員を雇って働かせたり、鉱山の開発を進める銭主までいるという。

 

 さらに大きなウェイトを占めるのが、北朝鮮から世界中に散らばる出稼ぎ労働者たちだ。彼らは、常に監視されたなかで働き、給料のほとんどを本国に忠誠の証として送金しなければならない。その数10万人ともいわれている。

 

 6月、トランプ政権は、北朝鮮とやり取りがある中国の金融機関への制裁に踏み切った。中国経由で外貨が流れるのを防ぐためだ。

 

 しかし、いくら経済制裁しても、北朝鮮独自の「裏経済」の前では効果が薄いようだ。北朝鮮の核開発は、今後も着実に進むことだろう。

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