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北朝鮮の重大放送で登場した「伝説の女子アナ」の正体

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2017.07.06 20:00 最終更新日:2017.07.06 22:48

北朝鮮の重大放送で登場した「伝説の女子アナ」の正体

伝説の女子アナ・李春姫(公式サイト「わが民族同士」より)

 

 北朝鮮政府は7月4日、朝鮮中央テレビを通じ、長距離弾道ミサイル(ICBM)の発射実験に成功したと発表した。

 

 事前に重大発表があると予告しており、実験成功の発表は瞬く間に世界中を駆け巡ったのだが、もう一点ミサイルとは別に注目を浴びたポイントがあった。

 

 フランスのテレビ局「フランス24」は「ICBM成功を発表するため北朝鮮の引退した女子アナが復活」と驚きの声を伝えている。

 

 彼女の名前は李春姫(リ・チュニ)、73歳。いつも怒っているあの女子アナといえばピンとくるだろう。最近ではあまり表舞台に出てこないが、北朝鮮のテレビを見るたび妙に気になるアナウンサーだった。

 

 彼女は1971年から登場している。アナウンサーの中で最高位の「人民放送員」というお偉いさんで、発展に貢献した「労力英雄」という肩書もある。もっぱら、金正日の教示報道、重要行事報道、声明報道といった重要な放送を担当していた。2011年、金正日総書記の死去も彼女が伝えている。

 

 北朝鮮専門家・辺真一氏は、かつて本誌の取材にこう答えている。

 

「李春姫は、日本でいえば、官房長官と外務省報道官と金ファミリーの動向を伝える宮内庁広報係のような役割を兼ね備えている。一言でいえば金正日のスポークスマンですね」

 

 これでは、ヘラヘラなどできるわけもない。ちなみに、対外向け衛星放送のときは必ず暖色系のチマチョゴリ姿という「恫喝の勝負服」で登場する。そして、あの独特の喋り方。

 

「もともと国立演劇団所属の女優だから、やさしい喋り方から威圧的な話し方まで器用に抑揚を変えられるんです」(辺氏)

 

 元女優だけに、73歳という年齢の割に美人の部類に入るが、実は彼女は北朝鮮女性のファッションリーダーでもある。彼女の衣装は最先端の「被服研究所」でコーディネートされていて、特権階級の中高年女性の間では流行の発信源ともなっている。

 

 彼女のプライベートについて北朝鮮の雑誌『画報朝鮮』(2008年4月号)が特集している。

 

〈平壌の美しい場所にある彼女の家には、旦那と2人の息子、孫娘が住んでいる。近代的な住宅も高級自動車もすべて国がプレゼントとしてくださったのだ〉

 

〈彼女は江原道トンチョンの海岸の村で、貧しい電工の娘として生まれた〉

 

〈大学を卒業してから国立演劇団で女優生活をしたあと、1971年2月、アナウンサーとなった。放送に関する初歩的な知識もなかったが、金日成主席が温かい愛と信頼を与え、もっと頑張るよう鼓舞したことで、彼女は立派な放送員になった〉

 

 そんな李春姫は、高齢を理由に2012年に引退したとされる。急に露出が減ったため、一部では死亡説も出たほどだ。

 

 ちなみに、李春姫の背景に映し出された謎の巨大湖にも注目だ。

 

 湖の正体は白頭山(ペクトサン)。平壌から北東へ約700km、中国吉林省との国境に位置する火山で、標高2750m。故金日成国家主席の生誕地とされる。朝鮮半島が日本の統治下だった時代、抵抗軍として拠点にしていたのがこのエリアで、現在は革命戦跡として崇められている。

 

 プロパガンダ映画『白頭山』も製作されており、映画では、旧日本軍に弾圧される住民達を金日成率いる革命軍が助けだす救世主として描かれる。

 

 2015年4月、金正恩総書記が白頭山を訪れる映像が公開されている。映像は、山頂付近が真っ白な雪で覆われており、風も強く、とにかく寒そうだ。耳をすっぽり覆った帽子で防寒する兵士達は、金正恩総書記を囲んで満面の笑みだった。

 

 伝説のアナウンサー「李春姫」と、北朝鮮最高の聖地「白頭山」。この最強の組み合わせを世界に見せつけたことは、今回のICBM実験成功のニュースが、北朝鮮にとっていかに重要なのかを教えてくれる。

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