大統領の命を守る。世界の大国、アメリカのホワイトハウスにはこの厳命を受けた精鋭22名がいる。その名もホワイトハウスメディカルユニット(WHMU)だ。
彼らは、大統領をはじめ副大統領、大統領の家族も任務の対象としている。任務と書いたのは、メンバーがアメリカ海軍と空軍から選抜される軍人だからだ。
編成は、医師5名、看護師5名、アシスタント5名、救急医療隊員3名を中心とし、事務方も含め合計22名から編成される。クリニックはホワイトハウスに隣接しており、24時間いつでも駆けつけられる態勢にある。
重要な任務だが、意外にも働く当事者は直前まで自分たちがその任務につくことを知らない。WHMUで1986年から3年間、看護師として働いた退役軍人ジョアン・ハーバーは、公式インタビューで当時をこう振り返っている。
「新任地に異動してまもなく、上官から突然連絡があり、ホワイトハウスに明日朝一番で面接に行けと言われました。さっぱり意味がわからず『何のためにですか?』と聞き返したほど。このとき初めて、WHMUの存在を知りました」
WHMUが作られる契機になったのが、1963年に起きたJ・F・ケネディ大統領の暗殺だ。
米ロサンゼルスタイムズ紙によると、「ホワイトハウスの医師は、戦闘訓練を受けた医師で、選ばれると1年の追加訓練を受けなくてはならない。そして、彼らのもっとも重要な任務は、攻撃があった際に大統領とその家族の命を守ること。
医者とナースは大統領のリムジンで一緒に移動する。爆弾による攻撃に巻き込まれない程度の位置で待機するのだ」と伝えている。
ケネデイ暗殺から17年後、ロナルド・レーガン大統領は1981年に銃撃されたが、そのときはWHMUの活躍で一命を取り留めた。
WHMUは暗殺などの救急救命のほか、日常的な健康管理までおこなっている。ちなみにオバマ前大統領は、WHMUのアドバイスにより禁煙を成功させている。
では、トランプ大統領はどうしているのか。もともとトランプ氏には、30年以上の主治医ハロルド・ボーンスタイン氏がいたが、大統領就任後は、WHMUのロニー・ジャクソン氏が指名されている。
このことが関係しているのかどうか不明だが、ハロルド氏はNYタイムズのインタビューで「トランプ氏は前立腺肥大防止用の飲み薬を育毛剤として使用している」と暴露した。そのほか、皮膚用の薬、血中コレステロールを下げる薬、心臓発作のリスクを防ぐ弱いアスピリンを使用しているそうだ。
WHMUも、トランプ氏がフサフサの髪を維持できるようなアドバイスをしているのだろうか。