6月下旬、記録的な猛暑に見舞われたアメリカのアリゾナ州フェニックス。停電や、交通機関の乱れが発生し、ついに飛行機のフライトがキャンセルになる事態が発生した。
航空会社は「気温が48度を超えたため、小型飛行機(CRJ)のフライトを見合わせる」と発表、43便が欠航になった。CNNの取材には「CRJと言われる小型機は高温の影響を受けやすい。主要路線には関係ない」と答えている。
ボーイング747やエアバスA320などの大型ジャンボジェット機は、気温52度まで飛行可能とされている。逆に言えば、これ以上になると、大型機でさえ飛べなくなるということだ。なぜ気温が高いと飛行機は飛べなくなるのか。
パイロットで航空ジャーナリストのパトリック・スミス氏は、著書『コックピット・コンフィデンシャル』のなかで、「気温が高くなると空気の密度が低くなり、飛行機の浮力とエンジン性能が落ちる」と指摘している。
上昇力が弱まると離陸するまでの距離が長くなり、滑走路をオーバーランしてしまう可能性がある。特に標高が高くて空気の密度が低い空港、滑走路が短い空港、もともと気温が高い空港は要注意だ。では、対策はどうすればいいのか。
コロンビア大学のイーサン・コフェル氏が、7月に学術誌『気候変動』に掲載した論文では、猛暑の日には、将来的に最大4%荷物や旅客を減らす必要があるという。座席数160席の旅客機だと、乗客を12~13人減らすことを意味する。荷物を減らせないなら、暑さがすぎるまで待つしかない。
ちなみに、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、2100年に約4度気温が上昇する可能性を指摘している。まだ80年も先と思うのは早計だ。今回のアメリカだけでなく、2016年にはインドで51度、クウェートで気温54度が観測されている。
アメリカのトランプ大統領は、6月に地球温暖化対策に関する「パリ協定」を離脱すると表明したばかり。かつて航空会社を所有し、今も専用機で世界を飛び回るトランプ大統領だが、そのうち飛行機での移動は不可能になるかもしれない。