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「すき家」が給与を平均3万円引き上げ 常態化する人手不足、「いま優秀な人材を採用しないと」会社が抱く危機

社会・政治 投稿日:2023.04.03 21:00FLASH編集部

「すき家」が給与を平均3万円引き上げ 常態化する人手不足、「いま優秀な人材を採用しないと」会社が抱く危機

かつては深夜の「ワンオペ」が問題視されたすき家だが…(写真・時事通信)

 

 牛丼チェーン「すき家」などを運営するゼンショーホールディングスが3月15日、正社員1210人を対象に、月給を平均3万2864円(9.50%)引き上げることで、労働組合と合意したと発表した。これは前年より2万1125円高く、上げ幅としては過去最高。牛丼を扱う3社のなかでも突出している。同時に、大卒の新入社員の初任給も2万8000円上げて、25万円になるという。

 

 国際的にエネルギー価格や食材価格が高騰するなか、外食産業の台所事情も苦しいところだが、同社の業績はやや回復傾向にある。それにしても「サプライズ」ともいうべき大英断だが、この賃上げの背景には何があるのだろうか。外食コンサルタントの松下雅憲氏は「従業員の質の低下による、将来的な業績悪化の懸念を払拭する意味があります」と指摘する。

 

 

「飲食は『仕事がきつい』『給料が安い』というイメージが定着していて、どこも人手不足が常態化しています。そのため、言葉は悪いですが売り手市場で、応募してきた方を吟味して選ぶ、ということができませんでした。そうすると、従業員の質の低下が起きます。質の低下が起きると、当然ですが、店の売り上げが減り、会社の業績は悪化します。

 

 コロナ禍でデリバリーが多かったときは、それほど心配されていませんでしたが、客が実店舗に戻ってきて接客のウエートが高くなると、従業員のスキルの差が歴然と出ます。そのため、大幅なベースアップをして『優秀な人材』を確保する方針にしたのです。目先の人手不足もありますが、それ以上に『いま、優秀な人材を採用しないと、会社がつぶれる』という危機感もあるのです」

 

 経営評論家の坂口孝則氏も「企業が上手に値上げをできるかどうかが大切」と言う。

 

「賃金上昇はとてもいいことですが、賃金は、一度アップしたら下げられないという『下方硬直性』があります。そこに対応するためには、販売価格をアップできるかどうかにかかっていると思います。新商品を出し続け、かつ品質も上げて、値上げを受け入れてもらえるような好循環を作らなければなりません」

 

 人件費を抑制するため、デジタル化を進める店も増えているが、坂口氏はその点に警鐘を鳴らす。

 

「居酒屋さんなどで、端末を使って注文を受けつけるシステムが導入されていますが、ジョッキが空になったとき、従業員さんが『もう1杯、いかがですか?』と聞くことがなくなりました。人が相手なら追加注文してくれても、機械だとそのチャンスを逃してしまって、結果的に売り上げが伸びない、と聞いたことがあります。そういった意味でも、会社にとって『人』は大切です」

 

 賃上げが、従業員のモチベーションアップにもつながるといいのだが。

( SmartFLASH )

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