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全国で進む自治会の「超高齢化」若年層が参加せず解散も激増、「地域の分断」を招く皮肉な事態も

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2023.04.10 20:10 最終更新日:2023.04.10 20:30

全国で進む自治会の「超高齢化」若年層が参加せず解散も激増、「地域の分断」を招く皮肉な事態も

自治会に加入しないとゴミ置き場などが使用できないケースも…(写真はイメージ)(写真・AC)

 

 3月上旬の日曜日、埼玉県のとある市で、市が主催した「災害救助講習」がおこなわれた。その趣旨は「災害が起きたとき、地域住民が共助(助けあい)をしましょう。とくに、ひとり暮らしのお年寄りには声をかけ、避難のお手伝いをしましょう」というものだった。

 

 講習に参加したのは、いわゆる自治会(町会)の幹部や防災担当委員たちだった。その数、およそ50名。参加者の平均年齢は70代。明らかに「助ける」側ではなく「助けられる」側といった年齢の人たちだ。

 

 

 休憩時間が終わると「わしの席はどこかのう」と、市の担当者に誘導してもらうような、明らかにオーバー80の参加者も多く見られた。

 

 市の担当者は「ご高齢の方しか参加してくださらないんですよ」と、声を低くする。各地で自治会の高齢化が進み、それに伴い、解散する自治会も増えているのだ。

 

 総務省が624市区町村を対象に調査した自治会の加入率は、政令指定都市では2010年度に77.2%だったのが、2020年度には70.3%に。ほかの市区町村でも減少傾向だった。また、課題として「役員の高齢化」をあげた自治会は、82.8%にもなった。

 

 また「朝日新聞」によると、東京23区と26市で、2022年は6年前と比べ、自治会は144も減っていた。もっとも多く減っていたのは東京都調布市で、自治会の数は41減。市によると、解散のおもな理由として「高齢化による後継者不足」「会員数が少なく、自治会の意味がない」などがあった。

 

 東京23区では、港区がもっとも減っており、2022年までの10年間で解散は15(新設は7)だったという。解散理由は「住宅地の再開発、人口流出」のほか「会費の徴収が困難になった」「役員の高齢化、役員数の恒常的な不足」などだった。

 

 なぜ、若い世代は自治会に入りたがらないのだろうか。40代の男性に聞くと「平日の夜におこなわれる例会への出席が、仕事で疲れているのでたいへん。私が出席できないときは、妻が子どもを連れて出席しています」とうんざり顔。同じく40代の主婦は、「加入しないと変わった人だと思われそうだし、ゴミ置き場を使わせてもらえない」と、いやいや加入している現状を嘆く。「知らなかった地域の情報が得られる」「子どもの通学の安全を見守ってくれる」など、好意的な声を寄せる人もいるが、否定的な意見が圧倒的だ。

 

 また、自治会が逆に地域の分断を招いてしまうケースもあるという。都心から電車で1時間のベッドタウンで、古くから住む住民と、新しく家庭を持った若い子育て世代が半々といった構成の、ある市での話だ。

 

「マンションで暮らす家庭は、マンションの自治会と町会とで、会費を二重に取られるのがいや、ということで、町会のほうに入っていないところもあるんです。そうしたら、町会主催の夏祭りの際、町会に入っていない家庭に、子どもが参加するイベントの券が配られなかったことがありました。子どもは理由が分かりませんから、泣いてしまってたいへんでした。そんなことがあって、ますます、年配者と若者が対立しちゃって」(35歳男性)

 

 市区町村などは、自治会存続のために運営費用を助成したりしているが、肝心の若いマンパワーが集まらないことには、やがて運営は行き詰まる。

 

「最近は、電子回覧板やオンライン会議などを取り入れる自治体も増えましたが、お年寄りがそのためのツールをお持ちでなかったり、使いこなせなかったりで、新たな問題が生じています」と市職員。妙案はなかなか見つからないようである。

( SmartFLASH )

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