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新宿に「核のゴミ」最終置き場?経産省が公表した地図の謎
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2017.08.03 11:00 最終更新日:2017.08.03 11:00
7月28日、経産省の外局である資源エネルギー庁は「科学的特性マップ」を公表した。このマップは、原発から出る「核のゴミ」の最終処分場を作るにあたり、日本全国でどのエリアが適しているか、過去の地質研究などをもとに色分けして示したものだ。
マップは大きく4エリアに分類されている。
「好ましくない特性がある地域(将来掘削の可能性)」のグレー。石炭などの鉱物資源が埋蔵されているエリアがこれにあたる。
また、火山や地層の隆起、海水による侵食などが考えられるエリアは黄色に分類され、「好ましくない特性がある地域(地下深部の長期安定性)」とされている。
それ以外が処分場建設に適している「好ましい特性が確認できる地域」で薄い緑色。もっとも処分場を作るのに適しているのが「輸送面でも好ましい」エリアで、濃い緑色となっている。
実際にマップを見てみると、日本の国土の大部分は薄い緑色で覆われており、一部の県を除きどこでも作れるといった感じだ。もっとも適している「輸送面でも好ましい」エリアは沿岸部に集中している。
処分場選定に関する調査を行う、原子力発電環境整備機構の担当者に話を聞いた。
「今回の科学的特性マップの発表は、国民の皆様に日本のどこが処分場建設に適しているか、議論していただくきっかけにしてもらうためのものです」
まだ専門家によるワーキンググループが過去の地質研究を反映させたマップを作った段階であり、すぐに処分場建設がスタートするわけではないという。実際に場所を決めたとして、そこからまず20年は調査に費やすというから驚きだ。
現在、日本中の原発から出た核のゴミは、青森県六ヶ所村にある日本原燃の施設で保管されている。
原発から出た使用済み燃料は、六ヶ所村にある再処理施設に運ばれ、まだ使える化学物質を抽出した後、いったんフランス、イギリスの処理施設に輸出し、「ガラス固化体」と呼ばれるものに生まれ変わる。それを再び輸入し、青森の日本原燃で保管しているのだ。
なぜわざわざ輸出するかといえば、今の日本にはガラス固化体を作る技術がないからだ。
原子力発電環境整備機構のHPによれば、ガラス固化体に処理した後も、強い放射線を放ち続けているため、人間に影響が出ない場所で保管しなければならない。核のゴミが安全になるには数万年かかる。そのため、300mより深いところで保存する必要がある。
日本が原発を稼働して以来、核のゴミは1万8000トン出ている。そのうち、現時点でガラス固化体に処理できた数は2448本。これからさらに推定2万本以上のガラス固化体ができる予定だ。日本が将来建設する核のゴミ処分場は4万本分の保管を目指している。
わざわざ日本から一度国外に出しているのなら、核のゴミを国外に置くことはできないのか。毎日新聞は、2011年5月に「日米が核処分場極秘計画 モンゴルに建設」というスクープを出している。
「国際的なルールで、自国で出した核のゴミは最終的に自国で処理すると決まっています。現在の日本の法律では、核のゴミを海外で保管することはできません」(原子力発電環境整備機構の担当者)
28日に発表されたマップに目を凝らしてみると、驚くべきことに東京の新宿区を中心に世田谷区、中野区、練馬区、豊島区、江戸川区、江東区などが処分場に最適とされる地域に含まれている。つまり、作ろうと思えば、都庁のある新宿に核のゴミ置場を建設することが可能なわけだ。
新宿区に問い合わせたところ、担当者は「経産省から、事前に科学的特性マップを発表するというメールが回ってきていましたが、処分場建設に関しては仮の話になるのでコメントできません」と話す。
経産省に確認をとったところ、今回のマップ発表に関して、各市町村等の首長を通じて文書による通達を出したことを認めた。
「核のゴミ最終処分場を作りませんか?」
まるで国家規模のゴミ処理場建設の営業トークのように聞こえるが、はたしてすぐにお客様は見つかるだろうか。