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キューバで使われた「音波攻撃」水産庁も使ってた
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2017.08.15 20:00 最終更新日:2017.08.15 20:00
2017年8月10日、アメリカ政府は、キューバに派遣されている外交官が謎の「音波攻撃」を受けていると発表した。翌11日には、カナダ政府も同様に、キューバに派遣されていた外交官が原因不明の謎の病気になったことを認め、世界規模の騒動となっている。
アメリカCNNによれば、2016年の秋頃から、大使館職員などがさまざまな体調不良に苦しんでいるという。アメリカ大使館のスタッフは脳震盪のような症状で、現在アメリカで治療中。聴力を失う可能性もあったという。
キューバ政府は疑惑に対し「何が起こっているのかわからない。我々は関与していない」と声明を出し、FBIの捜査にも協力するとしている。
今回の疑惑で明らかになった音波攻撃だが、実は音を使った攻撃自体は、すでに技術は確立している。エルラド(LRAD=Long Range Acoustic Device)と呼ばれる長距離音響発生装置で、こちらは爆音を出す。アメリカではデモの鎮圧、誘導に使用されている。
この音響装置には指向性があり、LRAD社によれば3000m離れた場所でも音による警告・威嚇が行える。装置が出せる最大音量は153デシベル。人間が耐えられるとされる、ジェット機のエンジン音量の120デシベルをはるかに超える。
120デシベルでも長く聞き続ければ難聴などの聴覚異常が起きるため、ひとたび攻撃を受ければ、その場にとどまることは難しい。
実はこの音波攻撃、日本でも導入済みだ。主に活躍するのが、海洋分野だ。
2009年、産経新聞は水産庁へ取材し、調査捕鯨船を妨害するシーシェパードに対してLRADを使用したと報じている。記事中で水産庁は、「警察庁などと協議したなかでの配備であり、違法性はない」と回答している。
水産庁は、調査捕鯨ばかりでなく、外国籍の違法操業漁船対策としてもLRADを導入している。
水産庁へ問い合わせたところ、「取締船に関することは基本的に答えることができない」としながら、海上保安庁や海上自衛隊と違い、「監視船には火砲を積むことができない。その代わりの意味合いがある」として監視船に配備されていることを認めた。
水産庁HPによれば、監視船「照洋丸」「白竜丸」などに装備されていることがわかる。操作は水産庁の職員が行うという。
音波攻撃がどれくらい効果があるのか気になるところだが、外国漁船の拿捕件数は2014年から減少傾向にあり、密漁船の追い出しには一定の効果があるのかもしれない。
ちなみにLRADは長距離かつ、指向性をもつ特徴から、防災用のスピーカーとしての役割も果たす。奈良県安堵町、兵庫県佐用町など比較的小さな自治体が防災無線の代わりとして導入している。使い方によっては人の命も救えるのだ。