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給料アップでも “実質” 目減り…安倍元首相が宣言した国民総所得「10年で150万円増」のまやかし
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2023.06.06 16:38 最終更新日:2023.06.06 16:38
厚生労働省が5月6日に発表した4月ぶんの「毎月勤労統計調査」(速報)によると、「名目賃金」にあたる現金給与総額は1.0%増の28万5176円。
このうち基本給などの所定内給与は1.1%増の25万3855円、残業代などの所定外給与は0・3%減の1万9699円だった。名目賃金は、16カ月連続の上昇となったが、「給料は上がっているんだ」と早合点してはいけない。
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「消費者物価指数」を見ると、名目賃金の上昇をはるかに上回り、4.1%も増えているのだ。3カ月ぶりに4%超えである。
これにより、物価の変動を反映した「実質賃金」は働き手1人あたり前年同月比で3.0%も減っている。減少は13カ月連続。物価が高止まりし、賃金が “目減り” する状況が続いているといっていい。
「今後、物価が高騰すると、実質賃金の目減りはますます悪化します。帝国データバンクによると、2023年内における家庭用を中心とした飲食料品の値上げ品目数は、判明ベースで累計2万1205品目だそうです。
6月はカップ麺などを中心に約3300品目が値上げ予定、7月以降も2000品目を超えると思われ、電気代も上がります。庶民の生活は圧迫されるばかりです」(経済担当記者)
政府の音頭取りもあり、春闘では賃上げを表明する企業が相次いだが、この数字を見ると「焼け石に水」といった印象だ。子育て世代には厳しい夏になりそうだ。
小学4年生の児童がいる母親は「体操クラブとピアノ教室に通わせていました。両方合わせて1万5000円。子供には申し訳ないですが、体操クラブをあきらめてもらいました。『家計が大変で』とも言えないので、『ピアノが上手だから集中して習おう』と言いました。こういった家庭はわが家の周りにたくさんあります」と語る。
ネットニュースのコメント欄にも、
《中小企業にとっては身を切る思いで思い切って数万円賃金アップをしたつもりでも、そこから3-4割税金で持って行かれるし、高騰した光熱費も払うため従業員としては上げてくれた実感が湧かない》
《実質賃金の減少、6月からの電気代値上げとガソリン補助金打ち切りから、本格的になりそうですね》
など、ため息が聞こえてきそうな書き込みが見られる。
いまからちょうど10年前の2013年6月5日、安倍晋三首相(当時)は、内外情勢調査会が開催する全国懇談会に出席して、こう発言していた。
「民間活力の爆発。これが私の成長戦略の最後のキーワードだ」
「1人あたりの国民総所得は足元の縮小傾向を逆転し、最終的には年3%を上回る伸びとなる。10年後には現在の水準から150万円増やすことができる」
2012年度の国民総所得は名目で513.7兆円。2021年度で579.8兆円(『国民経済計算』による)で、差し引き66兆円。これを人口1億2000万として単純に割ると、55万円程度しか上がっていないことになる。豊かさを実感できるときは来るのだろうか。
( SmartFLASH )