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「強きを助け、数字もごまかした」安倍政権「岸田総理よ、国民負担をまず減らせ」【泉房穂の「ケンカは勝つ!」第10回】

社会・政治 投稿日:2023.07.14 06:00FLASH編集部

「強きを助け、数字もごまかした」安倍政権「岸田総理よ、国民負担をまず減らせ」【泉房穂の「ケンカは勝つ!」第10回】

2013年12月30日の大納会で安倍元総理は「来年もアベノミクスは買い」と挨拶。2013年中に日経平均株価は、前年末から6割弱上昇した(写真・共同通信)

 

 安倍晋三元総理の実績といえば「アベノミクス」でしょう。これは、市民目線で今一度検証することが必要やと思っています。

 

 私の市長時代の大半は安倍政権と重なっていて、その間に感じていたのは、アベノミクスが市民をどんどん苦しめているということです。

 

 アベノミクスは、大企業や金持ちにテコ入れすれば、いずれ国民も潤って国全体がハッピーになるという発想。いわゆる「トリクルダウン理論」ですが、いつまでたっても、国民のところに利益は滴り落ちてきませんでした。

 

 

 アベノミクスは、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の「三本の矢」で、経済を回復しようという政策。金融政策では法人税を下げて、大企業や富裕層を儲けさせた。

 

 財政政策では「国土強靭化」の名目で、公共事業をやりまくった。自治体が国へ予算の要望を出す場合、本来、国はしっかりと内容を精査する必要がありますが、「もうなんでもカネを要求してええから」という感じになった。工事の必要性ではなく、建設業者を潤わせることを優先する仕組みに変わったのです。

 

 加えて、成長戦略では規制緩和で従来のさまざまなルールを取っ払った。つまり、これまで守られてきた弱者を切り捨て、強い者を応援する政策に転換したわけです。

 

 とりたてて影響が大きかったのは、消費税の二度にわたる増税です。普通の庶民は、給料が上がっていなかったわけですから、当然、生活はしんどくなりました。

 

 私は明石市長として、もちろん市民に味方した。市民の負担を軽減し、もっとお金を使えるような政策を採ってきました。まず、子育て層の負担軽減のために、「5つの無料化」をやった。医療費、保育料、給食費、オムツ代、遊び場の入場料がかからない。加えて、高齢者もバス代無料などのサービスを受けられるようになった。つまり、財布にお金が残るわけです。

 

 さらに、明石独自の政策として、地域商品券を配り続けました。“財布の外”でも物を買えるようにしました。

 

 たとえば、私の市長時代、国から明石に10億円の交付金が支給されました。その10億円を人口30万人で均等割りし、1人当たり3000円分の地域商品券にして市民全員に配ったんです。

 

 そういう施策の結果、市民は財布に余裕ができたので積極的に消費し、地元商店街が潤った。そして、明石にどんどん人が集まって人口が増えた。とくに明石の場合、子育て支援がきっかけで、ダブルインカムの夫婦が増えました。こういう人たちのおかげで、市民税が増えた。明石の地価は、私が市長になったときから、実勢価格で2倍になりました。すると、建設ラッシュが起こって業界が潤い、ますます税収は増えました。

 

 明石はまさに地域経済が好循環となり、増えた税収が財源となって、多くの住民サービスが可能になりました。

 

 こうした明石の取り組みについて、社会活動家の湯浅誠さんが、アベノミクスの真逆の政策として「アカシノミクス」と名づけてくれました。

 

 私は、市長とは“経営者”やと思っています。実際、よく「ベンチャー企業の社長のようや」と言われます。

 

 どうやってみんなに儲けてもらって、税収を増やして財源を作るかということを、ずっと考え続けてきました。困っている人を助けるにはお金がかかり、そのお金を作る必要がある。そのために、私は“経営者”になった。これがアカシノミクスです。

 

 アベノミクスは真逆。経済をよくするためには、困っている人がもっと困ってもやむなしとする。明らかに強い者を応援する政策です。

 

 アベノミクスのもうひとつの特徴は、数字のごまかしです。典型的なのは、雇用に関するデータ。アベノミクスで有効求人倍率が上昇したといわれていますが、あれはトリック。ほとんどが公共事業によるもので、景気回復とは無関係です。しかも、非正規化がどんどん進んでいるから、雇用が増えたとはいえ、人々の生活が豊かになったわけではない。アベノミクスでたしかに名目賃金は上がったが、物価の変動を考慮した実質賃金は下がり続けています。

 

 2021年の朝日新聞のスクープで、国土交通省が「建設工事受注動態統計」を書き換えていたことが発覚。書き換えがおこなわれたのは、アベノミクスの時期と重なります。

 

 ほかにも、安倍さんが待機児童を減らすと言った瞬間に、厚労省が算定方法を変えて数字が急に好転した例もある。こうして、いろんな形で、統計不正が当たり前のようにおこなわれてきたのです。

 

 これは、安倍政権の権力が強すぎたことと関係していて、中央省庁の人事権を握ったために、官僚があり得ないような忖度をした結果やと思います。生活実感は悪くなっているのに、数字は好転しているように見せかけ続けたのが、アベノミクスのもうひとつの姿やと思います。

 

 アベノミクスは岸田文雄総理にも引き継がれている。岸田さんは就任当初、「新しい資本主義」とか「分配型の経済」を掲げ、安倍さんとは違う経済政策を採るのではないかと期待されていました。でも結局、やっていることはアベノミクスと変わりません。

 

 一部の大企業にばかりお金が集まっている状況も同じ。トヨタの社長が9億9000万円の報酬をもらってもまだ余裕があるほど、大企業には内部留保が貯まり続けているのに、一般の庶民、国民の財布の中身は減り続けている。

 

 給料が上がらない状況で、増税、社会保険料上乗せ、物価高の三重苦を押しつけたら、そりゃあ国民は疲弊し、経済も成長せんし、少子化は加速するに決まっている。

 

 岸田総理よ、これ以上、国民の負担を増やすなと言いたい。今は、国民の負担を減らし、給料を上げるのが何より優先すべき経済政策です。

( 週刊FLASH 2023年7月25日・8月1日合併号 )

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