社会・政治社会・政治

LGBT法に喝!「私も変わり者の少数者。多様性尊重の社会を望みます」【泉房穂の「ケンカは勝つ!」第12回】

社会・政治 投稿日:2023.08.04 06:00FLASH編集部

LGBT法に喝!「私も変わり者の少数者。多様性尊重の社会を望みます」【泉房穂の「ケンカは勝つ!」第12回】

5月16日、LGBTQや支援者らが「緊急国会」を開催。法案が自民党内の保守派に配慮して改変されたとして、与党に激しく抗議した(写真・共同通信)

 

 ryuchellさんのニュースは、私にとってもショックでした。じつは、亡くなる1カ月前にテレビでご一緒し、彼の生き方も含めて個人的に応援していたんです。

 

 ryuchellさんは、自ら性的少数者であることを公言していた。軽々しいことは言えませんが、あらためていろいろ思うところがあります。

 

 

 6月16日、「LGBT理解増進法」が成立しました。しかし、この法律には保守系のみならず、当事者や支援団体も反対。賛成の声はほとんど聞こえてきません。

 

 それでも、性的少数者に対し、世間の関心が高まったのは事実。もちろん、本格的な議論はこれからです。

 

 法律の正式名称は、「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」。「性的指向」とは、「好きになる性」のこと。異性だけでなく同性、あるいは両性が恋愛対象の場合など、人それぞれと言われています。

 

 そして、「ジェンダーアイデンティティ」とは「性自認」。体と心の性が一致する場合だけでなく、そうでない場合もあり、LGBTの「T」であるトランスジェンダーとも関係するテーマです。

 

「心の性」は、自分のなかに留まれば、問題はさほど生じない。たとえば、個人が宗教を信じるのは自由ですが、周囲を気にせず大声で祈れば「うるさいやないか」と、反発を生む。同様に、心の性は公衆トイレや公衆浴場などにおいて難しい問題となる。

 

 私は明石市長時代に、LGBTに関しても、新たな制度を作ってきました。当然、市民の理解が不可欠で、明石市で施策を始めたのは2019年。

 

 トップダウンで私が指示すればもっと早くやれたはずですが、丁寧にやりたかった。そのため、まずは全国から専任職員を公募し、2人採用しました。彼らに、市職員や住民に対し、LGBT問題についての研修をしてもらいました。ちなみに明石市では、「LGBTQ+/SOGIE」と表現しています。このテーマをできるだけ広くとらえ、すべての人に関わるものとして位置づけたかったからです。

 

 従来、同性同士のカップルで片方が病気になって倒れた場合、家族ではないというだけで、面会や病状説明を断わられることも多かった。救急ならICUに入ることができず、死に目にも会えなかった。近年は自治体の「パートナーシップ制度」により可能になりました。

 

 だから明石市では、医師会や病院と協定を結び、2021年1月に「パートナーシップ・ファミリーシップ制度」を作りました。同性カップルだけでなく、全国初、その家族(子どもや親など)も対象に加えたのです。この仕組みは、全国の30を超える自治体に広がっています。

 

 同性同士がアパートを借りるのも、これまでは難しい面もあったが、明石市では、市営住宅なども借りられるようにしました。

 

 普通に考えれば、男性がピンクの服を着ようが、髪を三つ編みにしようが自由でしょう。女性が丸坊主にしたかったらすればいい。

 

 でも、自身の主張と社会との接点が生じれば話は変わる。たとえば、学校の制服。男は詰襟、女はセーラー服と決まっている学校で、「スカートは嫌やからズボンがいい」という女の子や、「スカートを履きたい」という男の子がいたときにどうするか。 

 

 明石市は2022年、これらをすべてOKにしました。そのために、新しくブレザータイプの制服を作り、ズボンやスカートも、性別に関係なく誰でも選べるようにした。

 

 やはり悩ましいのは、スポーツの世界。男から女に変わった選手が女子として参加したいと言ったらどうするか。生物学的には、男女で体力差があるとされています。実際、2021年の東京オリンピックの重量挙げで、トランスジェンダー選手が女子部門に出場して物議を醸しました。トランスジェンダー選手の出場については、男性ホルモンの血中濃度などの条件があるとはいえ、批判が出るのは仕方のないことかもしれません。

 

 LGBT理解増進法でとくに議論を呼んだのが、公衆トイレや公衆浴場の問題。「体は男だけど心は女だ」という人が、女子トイレを利用していいのか。法律の審議でも紛糾し、最後に「全ての国民が安心して生活することができることとなるよう留意する」との条文が追加されました。

 

 この一文について、当事者や支援団体などは強く反発しています。一読しただけでは何が問題なのかピンときにくいですが、これが加わったところに、日本の現状が表われているようにも思います。

 

「トイレや風呂で痴漢が増えるから、LGBT理解増進法に反対」という声もありましたが、法律ができたからといって、痴漢が本当に増えるとはとうてい思えません。極論に走ることなく、もう少し冷静な議論をすべきです。

 

 当事者に限らず、LGBTというテーマは家族論や人間論に繋がります。実社会では、「人はかくあるべし」とか「家族はこうあるべし」と思って信じている人も多いから、みんななかなか寛容になりにくい。「男だから稼げ」と言われて、やりたくない仕事を無理してがんばってきたオッサンや、「とにかく優しいお母さんになって」と言われて、進学を断念して花嫁修業をした女性が、いまさら「どっちでもいいよ」と言われたら、違う人生を歩みたかったと言いたくなるでしょう。

 

 性のあり方は、自分自身の生き方に直結するテーマゆえ、多方面で抵抗を招く。だからこそ、丁寧な議論が不可欠。

 

 日本社会では、なんでも「画一的」であることが求められ、それが生き辛さの原因になっている。不合理な習慣は見直されるべきです。私自身、変わり者の少数者で、いつか爪弾きにされるかもしれない不安を抱えているからこそ、「多様性」を尊重する社会を望んでいるんです。

( 週刊FLASH 2023年8月15日号 )

続きを見る

社会・政治一覧をもっと見る

社会・政治 一覧を見る

今、あなたにおすすめの記事