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「生活費に充てたかった」同居男性のフィギュアを盗んだ女が逮捕「夫婦ならお咎めなし」は本当? 弁護士に聞いた

社会・政治 投稿日:2023.08.08 16:40FLASH編集部

「生活費に充てたかった」同居男性のフィギュアを盗んだ女が逮捕「夫婦ならお咎めなし」は本当? 弁護士に聞いた

(写真・AC)

 

 同居男性のフィギュアを盗んだ女が逮捕された――そんなニュースが注目を集めている。8月6日の『神戸新聞NEXT』が配信した記事で、逮捕されたのは41歳の女。兵庫・姫路市内の31歳男性宅から、4000円相当のゲーム『キングダム ハーツ』のフィギュア1体を盗んだ疑いだ。

 

 8月5日、男性から「フィギュアがない」と警察に通報があった。女は調べに対し、フィギュアを売って生活費に充てる目的だったと話している。2人はアルバイト先の元同僚で、同居していたという。

 

 

 SNSには

 

《コレクションには時価より重い想いがあるんだよ》

 

 など、ゲームファンからの怒りの声が多数。さらには

 

《夫の鉄道模型を勝手に売った妻の話が思い浮かぶけど、罪名としては窃盗になるのか…》

 

《(これが夫婦だったらお咎めなしだろうな)》

 

 と、疑問を抱く人も少なくなかった。

 

 このケース、実際のところはどうなのか。「しみず法律事務所」(東京・銀座)の清水卓弁護士に聞いた。

 

――この件は、どのような罪になるのでしょう?

 

「転売目的で『他人』の占有する『財物』であるフィギュアを窃取しており、窃盗罪に該当します(刑法第235条)。同居していたとしても、同居相手である男性が保有(占有)していたのであれば、刑法上は『他人の財物』にあたります」

 

――盗まれたフィギュアが売られていた場合、取り戻すことは可能?

 

「フィギュアを盗んだ犯人からフィギュアの売却を受けた人など、取引行為によってフィギュアの占有を取得した人が、取得の際に盗品であることを知らず、知らないことにつき過失がないときは、フィギュアの所有権を取得します。動産取引の安全を守るために定められたこの制度のことを、即時取得(民法第192条)といいます。そのため、即時取得した相手に対しては、原則として、フィギュアの返還を求めることはできません。

 

 しかしながら、盗難に遭った被害者の権利保護も重要であることから、民法上、盗難のときから2年間に限っては、被害者は、フィギュアの占有者(売却を受けた人など)に対して、フィギュアの返還を求めることができるものとされています(民法193条)。

 

 そうすると、中古品販売店、リサイクルショップ、オークションなどで、盗品とは知らずにフィギュアを買い受けた人は、無償で被害者にフィギュアを返還しなければならないようにも思えますが、信頼の置ける場所・相手からの買受人の保護の観点から、被害者は、フィギュアの買受人(占有者)が支払った代価を弁償しなければ、フィギュアを取り戻すことはできないと民法上定められています(民法194条)。

 

 なお、古物商・質屋には、盗品や遺失物を発見すべき高い注意義務が課されていることから、古物商・質屋が盗品・遺失物を公の市場や同業者から盗品・遺失物と知らずに譲り受けた場合においても、被害者は、古物商・質屋に対し、盗難のときから1年間については、無償でフィギュアの返還を求めることができるという特例が法律上定められています(古物営業法第20条、質屋営業法第20条)」

 

――2人は「同居人」となっており、関係性は不明ですが、これが夫婦や家族間であれば、罪に問われるのですか?

 

「窃盗罪には『家族内の金銭的な問題の解決は家族内にできるだけ委ねるべきで、法律が過度に介入すべきではない』という考えから、親族間の犯罪に関する特例(刑法第244条)が定められています。

 

 すなわち、窃盗罪の被害者と犯人との間に、配偶者(法律上の夫婦)、直系血族(父母,祖父母,子,孫など)、同居の親族の関係がある場合、刑法第244条1項により、窃盗罪は成立するものの、刑は免除されます。そのため、刑罰は科されません。

 

 また、これらの親族以外の親族(同居していない親族など)との間で窃盗罪を犯した場合、犯人には窃盗罪が成立し、刑も免除されないものの、告訴(捜査機関に犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求めること)がなければ、検察官は公訴を提起することはできないものとされています。

 

 なお、親族とは、民法第725条に基づき、六親等内の血族、配偶者、三親等内の姻族のことを言います」

 

 結婚していれば、刑は免除されていたということか……。

( SmartFLASH )

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