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ガソリン価格高騰をもたらした「業転玉の減少」…激安スタンドが町から消えた理由とは

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2023.08.19 15:50 最終更新日:2023.08.19 15:50

ガソリン価格高騰をもたらした「業転玉の減少」…激安スタンドが町から消えた理由とは

ガソリンは2008年8月以来の高値(写真:ロイター/アフロ)

 

 ガソリンがじわりと値上がりを続けている。

 

 経済産業省は、8月16日、全国平均小売価格が1リットルあたり181.9円だと発表した。これは、2008年8月以来、15年ぶりの高値だ。

 

政府は2022年1月から、高騰したガソリンの価格軽減策として補助金を導入しました。2023年5月は、ガソリン1リットルあたり168円を超えた分について、25円を上限に石油元売り会社に補助金を支給。

 

 

 この補助率が、6月から2週間ごとに1割ずつ段階的に引き下げられ、9月末に補助自体が終了する予定なので、ガソリン価格はまだまだ上がるでしょう」(経済担当記者)

 

 だが、ガソリンの高騰は、補助金の減額だけが原因ではないという。

 

「1980年代、石油元売りは大手だけで10社以上、中小を合わせると20社ほどありましたが、原油安と車のエコ化が進んだことで赤字になる会社が続出しました。

 

 単独では生き残れないことから、業界の合併再編が加速、中小は大手の傘下に入り、2017年には業界トップのJXホールディングスと業界3位の東燃ゼネラル石油が統合して『ENEOSホールディングス』になりました。

 

 そして、2019年には業界2位の出光興産と業界4位の昭和シェル石油が経営統合して『出光興産』が誕生。ほかに『コスモエネルギーホールディングス』があり、この3グループで国内シェアをほぼ独占するようになりました」(同)

 

 この「独占」が「ガソリン価格の高騰にも影響している」とガソリンの流通に詳しい自動車ライターが指摘する。

 

「業界用語で『業転玉』という言葉があります。原油は精製する過程でガソリン、軽油、重油などが生産されます。このなかで需要以上に生産される製品もあり、結果として余剰品になってしまいます。

 

 かつてはそれを、ノーブランドで売るガソリンスタンドに安く流通させていました。しかし、大手3グループの寡占となってからは、各社が精製を抑えるようになり、余剰が生まれにくくなりました。

 

 そのため、業転玉が入らない『激安スタンド』が町からなくなってしまったのです。さらに大手のスタンドばかりになったため、以前ほど価格競争が働かず、『高値止まりしている』という指摘もあります」

 

 2022年9月、3グループの『2022年4~6月期決算』が発表された。その数字は驚くほどの好決算だった。

 

「ENEOSホールディングスの最終利益は連結で2213億円。対前年同期比2.3倍です。出光興産が連結で1793億円(同2倍)。そして、コスモエネルギーホールディングスが連結で775億円(同2.8倍)でした。3グループ体制になってから6年めでしたが、この期の営業利益として最高益となりました。

 

 しかし、この決算期は政府のガソリン補助金が投入され始めた時期と重なっていました。利益が上がったのは、原油高で備蓄分の評価額が上がったことなど、さまざまな要因があったとは思いますが……。

 

 当初から国民の間には『補助金は小売価格に適切に反映されるのか』という疑問の声があったので、国民目線で見れば『だったらもっとガソリンを安くできたんじゃないの』という思いがあったことは否めません」(前出・経済担当記者)

 

 9月末にはこの補助金も打ち切られる。政府、業界の万全の対策が期待されている。

( SmartFLASH )

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