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岩手県で女性が喰い殺された! 北海道のヒグマより殺傷事件が多いツキノワグマ、顔全体を喪失したリンゴ農家も
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2023.09.05 11:00 最終更新日:2023.09.05 11:00
8月9日、岩手県一戸町で、83歳の女性がクマに襲われた。現場は自宅近くの林。午後5時頃、通行人が血を流して倒れている女性を発見、病院に搬送されたが、その後、死亡が確認された。
警察によると、女性は発見時意識があり「クマに襲われた」と口にしたという。死因は外傷性ショックで、頭や右肩などに、爪でえぐられたような傷があった。
一戸町は猟友会に依頼し、箱罠を設置したとのことだが、現在も箱は空のままだという。岩手県内で人がクマに襲われて死亡した事故は、2020年8月の八幡平市のケース以来だった。
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日本国内に生息するクマは、ヒグマとツキノワグマの2種で、ヒグマは北海道のみ、ツキノワグマは本州と四国に生息している(九州では絶滅したとされる)。
ヒグマのほうが大きくより凶暴といわれ、ニュースや記事で取り上げられる回数も多い。だが、死亡事故に限ってみると、2000年以降の熊害件数は、実はツキノワグマによるもののほうが多い。
ツキノワグマが32件、ヒグマは27件(『ニッポンクマ事件簿』および発行後のニュース参照)。「北海道のヒグマは怖いけれど、ツキノワグマはそれほどでもない」は、間違った先入観なのだ。
クマの生息圏の近さという点では、北海道より本州・四国のほうがより接近している。事故の起きた岩手県では、今年4~8月で18件の人身事故が発生している。
県内最大の28万人を擁する県庁所在市・盛岡市でも、連日「クマ出没」のニュースが発信されている。盛岡市の公式サイトには、《ブナの実が「大凶作」と予想されています。》との見出しが踊る。夏から秋にかけて、クマは冬眠に備えて栄養を蓄える。だが、クマの大好物のブナの実が今年は特に乏しいのだ。
ツキノワグマによる事故・目撃情報は、年々増加傾向にある。もちろん、登山や山菜採りなど自然のなかでの遭遇もあるが、人の生活圏での事故も後を絶たない。
たとえば、今年6月16日には、島根県邑南町で70代の男性が襲われ、顔や腹に重傷を負った。自宅近くの畑で襲われたという。また、今年の8月1日には、長野県上田市で、70代の女性が軽症を負わされた事故が発生している。女性は墓で草取りをしていたところ、親子とみられる2頭のツキノワグマが現れ、額や腕などをひっかかれたという。
さらに、9月3日には、新潟県南魚沼市で70代の夫婦がクマに襲われる事件が起きた。新潟県は「クマ出没警戒警報」を発表している。
■クマは、人里では常に緊張している
「山の実りが少なくなれば、クマはエサを求めて人里に降りてくる。クマは、ブドウやリンゴ農家のところへやってきて、それを自分のエサとして認識するんだ。それを追い払おうとする人間がいれば、当然、自分の獲物を取られたと思って反撃する」
群馬県みなかみ町奥利根で、25年以上もクマ撃ち猟師を続けている高柳盛芳さんはそう語る。
高柳さんは、以前、群馬県沼田市のリンゴ農家が、「リンゴは自分のエサ」と認識したクマに襲われ、顔全体を喪失した話を聞いたという。
「クマは執着心が強いうえに臆病だから、人間が攻撃しようとしたら、すぐに襲ってくる。向こうも人のいる場所へ来て、緊張しているし、怖がっているんだよ」
人とクマが遭遇したとき、クマは自分のエサ場を荒らされる、横取りされると思い、よけいに興奮して襲ってくる可能性があるという。そんなときは決して戦おうとは思わず、逃げることだけを考える、と高柳さんは続ける。
「まずは、クマの目をじっと見つめる。向こうも、突然、人間と遭遇してびっくりしているから、すぐには襲わない。目をそらしたら、自分のほうが優位だと思って襲ってくるから、絶対に目はそらさないこと。
そうしたら、ゆっくり後ずさりながら、上着を広げたり、リュックを手に持ったりして、自分の体をできるだけ大きく見せるんだ。このとき、絶対にしてはいけないのが、驚かせること。クマは臆病だから、脅かすと確実に襲ってくる」
クマに効くとされるクマスプレーは、「リュックのなかにしまっていたら、意味がないのでやめたほうがいい」と話す。事前に腰に装着して、いつでもクマに吹きかけられるように準備しておくこと。ただし、風向きや噴射の仕方によっては、自分にかかってしまい、大変な目にあうこともある。
人里へおりてきたクマを見つけたら、とにかく警察に連絡すること。すると、警察が地域の猟友会へ連絡し、猟師が駆除に向かう。ただし、猟友会はボランティアで、年齢層も上がっている。高柳さんは、このやり方では限界があると話す。
「猟友会だって暇じゃないんだから。自分の仕事中に駆除の依頼が来ると困るんだよ。いちばんいい方法は、警察がそのまま猟銃で駆除できるようにすること。クマがいる山岳地域くらいは、警察が大型の拳銃や散弾銃を扱えるようにしてほしいね。そうすれば、すぐに対処できて被害も減るよ」
●取材・文/風来堂
編集プロダクション。編著『ニッポンクマ事件簿』(三才ブックス)には、明治以降に日本で起きた熊害死亡事故の実例を多数収録。クマ撃ち猟師やクマ研究者へのインタビューも掲載している。
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