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「国民を騙した“小泉劇場”を思い出す。岸田さん、本当は麻生さんと連携してないか?」【泉房穂の「ケンカは勝つ!」第31回】

社会・政治 投稿日:2024.01.31 06:00FLASH編集部

「国民を騙した“小泉劇場”を思い出す。岸田さん、本当は麻生さんと連携してないか?」【泉房穂の「ケンカは勝つ!」第31回】

政治刷新本部で本部長を務める岸田首相(中央)と、最高顧問を務める麻生氏(右)。「麻生さんは、『最大派閥の安倍派をやっつけてくれて、ほんまにありがとう』と思ってるはず。もちろん私の勝手な解釈やけど」(泉氏)

 

「岸田派解散」

 

 ニュースを見て最初は驚いたけど、今は冷めている。

 

「検討使」と揶揄(やゆ)された岸田文雄首相が、珍しくびっくりするような決断をしたわけやけど、人のキャラがそんなに急に変わるわけない。彼なりに秘策があったんやないか。私は、「一石四鳥」を狙ったんやと思っている。

 

 

 1つめの狙いは、派閥解散で批判をかわすこと。岸田派の元会計責任者が立件され、批判の矛先が安倍派だけでなく岸田派にも向き始めた。岸田首相は、自分が叩かれて、さらなる内閣支持率の低下を招くことは避けたかった。

 

 ここで岸田派解散のカードを切れば、決断力やリーダーシップを評価され、支持率も下げ止まる可能性があると思ったんやろうね。実際、その後の世論調査で、自民党支持率は落ちているのに内閣支持率は横ばい。そして、岸田首相の決断を国民の6割が評価している。保身の目論見はまんまと当たったわけや。

 

 2つめの狙いは、論点をカネの問題から派閥の是非にすり替えること。派閥解散を打ち出せば、報道が派閥の是非論一色になるのは明らか。

 

 しかし、派閥解散はそれほどのニュースなのか。どうせすぐに復活する。1993年の政権交代後に、自民党はすべての派閥を解散したが、数年で元に戻ったんやから。

 

 派閥の是非に焦点が当たっている間に、本丸のカネの問題が吹っ飛んでしまった。そもそも政治刷新本部では、企業団体献金については検討課題にすらなっていない。

 

 派閥がなくなっても、企業団体献金が維持できれば、違う方法でいくらだってカネ集めはできるので、不都合はないということや。

 

 3つめの狙いは、安倍派や二階派を解散に追い込むこと。岸田首相には、とくに安倍派への怨念があるはずや。

 

 自民党の派閥には二大潮流がある。かつて鳩山一郎が総裁を務めた日本民主党と、吉田茂が率いた自由党の2つの系譜や。

 

 前者は岸信介、福田赳夫、森喜朗、小泉純一郎と総理を輩出し、清和会(安倍派)に連なるタカ派の流れ。この派閥が、長年にわたって総理をほぼ独占してきた。二階派、森山派もこの流れを汲む。

 

 後者はハト派路線で、岸田首相の宏池会(岸田派)もここに入る。今回の派閥解散の背景には、この二大勢力による権力闘争があるとみたほうがわかりやすい。

 

 岸田首相には、宮沢喜一元首相以来約30年間、宏池会から総理を出せなかった悔しい思いがあるはず。せっかく手にした主流派の座を、そう簡単に譲り渡したくない。

 

 だから、最大派閥の安倍派を潰す。それも岸田首相の決断の理由やと思う。そして、岸田首相が派閥解散を宣言した後、安倍派、二階派、森山派も解散を決定。「政敵」を倒すことに成功したわけや。

 

 4つめの狙いは、将来的に麻生派と合流すること。これが最大の狙いやと、私は思っている。

 

 岸田派と麻生派は、いわば “双子” 。宮沢元首相のころまでは同じ宏池会で、後の「加藤の乱」(第二次森内閣打倒を目指して、加藤紘一氏らが起こした一連の運動)で割れるまでは一緒やった。

 

 また、岸田派と茂木派は “いとこ” に近い。源流が吉田茂の自由党なのは一緒やけど、佐藤栄作、田中角栄の系譜を受け継ぐのが、今の茂木派。岸田政権は “双子” と “いとこ” に支えられている。

 

 岸田派と麻生派はもともと “双子” だから、将来は合流しようと考えているとしてもおかしくない。

 

 安倍派、二階派、森山派という3つの派閥を一気に潰せたし、安倍派の解散で100人近い最大派閥が消滅した。結果、第二派閥だった麻生派が第一派閥になり、第三派閥だった茂木派が第二派閥になった。

 

 岸田首相はしばらく死んだふりをして、次の総選挙でなんとか現状を維持して麻生派に合流する。そうすれば、安倍派をしのぐ最大規模の派閥ができ上がる。すなわち「大宏池会」の復権が、岸田首相の最終的な狙いやないか。

 

 それにしても、岸田首相がこんな絵図を一人で描けるもんやろうか。私には麻生さんとの連携があったと思えてしょうがない。

 

 報道では、岸田首相は派閥の解散を麻生さんに相談しなかったとされている。それに麻生さんが怒っていると。

 

 そもそも、海千山千の政治家が本当に怒っている顔を他人に見せるのか。マスコミを通じ、「怒っている」というメッセージを送ったと考えるほうが自然やないか。

 

 岸田首相が麻生さんに報告しなかったというが、総理としていちばん支えてもらっている相手に仁義を切らないわけがない。「一石四鳥」のシナリオは、2人で知恵を絞ったんちゃうか。

 

 そこで思い出したのは、「干からびたチーズ事件」。2005年8月、当時の小泉首相は郵政民営化法案を国会で成立させると公言し、不成立の場合は「衆議院を解散する」と表明していた。

 

 自民党内では解散への反対が強く、小泉首相を思いとどまらせようとしたのがその前の首相の森喜朗氏。だが、小泉首相は「信念だ。殺されてもいい」と聞き入れなかった。

 

 森さんは、マスコミの前で「(小泉首相は)干からびたチーズひと切れと缶ビールしか出さなかった」と不満を語ったが、その後「あのときは、小泉君に怒って出て行ったことにしてくれと言われた」と明かしている。そして小泉首相は「信念の人」と評価され、「小泉劇場」により郵政選挙で自民党は圧勝する。結局、2人の仕込みのお芝居にみんな騙されたわけや。

 

 今回も、麻生さんと岸田首相の間で、事前に話し合いがあったとしても不思議ではない。後見役の麻生さんを本気で怒らせたら、岸田さんは総理の座にいられなくなるかもしれん。内々の合意がなかったはずがないと私は思うが、的外れやろうか……。

( 週刊FLASH 2024年2月13日号 )

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