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辺真一が分析「北朝鮮の党人事が『核戦争シフト』になった」

社会・政治 投稿日:2017.11.14 06:00FLASH編集部

辺真一が分析「北朝鮮の党人事が『核戦争シフト』になった」

 

「今回の序列をひと言で言えば『戦争シフト』です」
「コリア・レポート」編集長の辺真一氏は結論づけた。

 

 2017年10月7日、1年5カ月ぶりに開催された朝鮮労働党中央委員会総会で党人事が発表された。この人事と、翌10月8日の故・金正日総書記推戴20周年の祝賀大会の顔ぶれから、辺氏が独自に分析した。

 

 前回、2016年5月の党中央委総会当時の序列と比べれば、金正恩党委員長の「意思」は明らかだという。

 

「金正恩氏は、経済と核開発を同時に並行して推進するとぶち上げましたが、そのとおりの布陣といえます。経済通の朴奉柱総理を続けて重用するうえ、目立つのは軍事の専門家を重視していることです。

 

 序列3位の崔龍海氏は、党軍事中央委員に就任。さらに、李明秀・朝鮮人民軍総参謀長が、序列位から7位に急上昇。金正日総書記の側近だった彼は、軍務経験が長く、軍事作戦に長けている人物です」(辺氏)

 

 序列は金正恩氏を頂点に、2位の金永南氏(最高人民会議常任委員長)。金氏は対外的に国家元首の役割を担う。2002年の日朝首脳会談では小泉純一郎元首相を空港で出迎え、2017年8月のイラン訪問時には、ロウハニ大統領と会談。失脚することなく、金日成、正日、正恩の3代に仕える “元老” だ。

 

 3位は、崔龍海氏(政務局副委員長)。10月7日の党総会で党軍事中央委員、党組織指導部長などの重職に登用された。金正日体制下では金正恩の叔父・張成沢の側近だったが、金正恩により張が処刑されると失脚。一時は粛清説も流れたが、不死鳥のごとく復権した。

 

 4位が朴奉柱氏(内閣総理)。2003年に総理に選出されるが、2007年に解任。2013年に当時の実力者だった正恩の叔父・張成沢の引き立てで復帰する。張処刑後もその経済手腕を買われ、現職に留まる。核開発と経済建設を同時に進める「並進路線」の重要人物とされる。

 

 5位が黄炳誓氏(軍総政治局長)。党組織指導部第一副部長時代に張成沢処刑に関与したという。2014年に朝鮮人民軍全体への宣伝、扇動や思想統制を管轄する軍総政治局長に就任。実質的な軍のトップだ。今回の人事では、序列3位から5位に降格した。

 

 注目すべきは6位の朴光浩氏(党部長・宣伝担当)。突如ランク外から政治局入りし、一気にナンバー6に。背景には、「党宣伝部長だった金己男が高齢で引退したことによる世代交代がある」(辺氏)という。正恩の妹、宣伝部副部長の金与正の推薦を得たという指摘もある。

 

 ミサイル開発の総責任者である26位の李炳哲氏(党軍事担当第一副部長)にも注目だ。空軍司令官時代に空軍基地を視察に来た金正恩に気に入られ、側近入り。弾道ミサイル専門家である金正植軍需工業部副部長、張昌河国防科学院長、全日好党中央委員とともに「ICBM4人組」と呼ばれる。党軍事委員に昇格。

 

 今回の人事では、新たに5人の政治局員と、4人の政治局員候補を選出。金正恩の実妹、金与正も30歳の若さで政治局員候補に抜擢された。9人はいずれも、金正恩の側近とみられている。

 

「党政治局は、金正恩氏を筆頭に北朝鮮の全権を握る党の中枢です。今回正恩氏は、父(金正日)と義兄弟の関係にある崔龍海氏を表のNo.3に、妹の与正氏を陰のNo.2に据えて身内で体制を固めようとしています」(辺氏)

 

 身内でまわりを固めた若き独裁者は何を企んでいるのか。今回、10月7日の党中央委総会には金正恩をはじめ政治局の全員が参加したが、10月8日の祝賀大会には、金正恩は姿を現わさなかったというのだ。その意味とは……。

 

「正恩氏だけではありません。李明秀軍総参謀長も、李永吉軍第一副総参謀長も、ミサイル開発の実務責任者である李炳哲氏も欠席しています」(辺氏)

 

 金正恩が見据えるのは、やはり「核戦争」ではないか。

 

「ICBMの発射実験の準備のために、それぞれの任務に就いているということではないでしょうか。12日付の労働新聞は『米国は間もなく自分の目で見ることになるだろう』とミサイル発射を予告していました。その日は、そう遠くないかもしれません」(辺氏)

 

 核ミサイル発射は、すでにカウントダウンに入っている。

 

(週刊FLASH 2017年10月31日号)

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