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事故多発の航空自衛隊「もう限界」と現役パイロット

社会・政治 投稿日:2017.11.26 11:00FLASH編集部

事故多発の航空自衛隊「もう限界」と現役パイロット

『UH-60J救難ヘリコプター』

 

 2017年10月17日夜、静岡県の浜松基地所属の救難ヘリが海上に墜落。翌18日には、茨城県の百里基地でF4EJ改戦闘機の主脚が折れて炎上ーー。

 

「2016年2月以降、陸・海・空合わせて11件の事故が発生しています。事故につながりかねない『重大インシデント』も多発しています」(ジャーナリスト・伊藤明弘氏)

 

 日本の空の護りに、何が起きているのか。隊長経験もある幹部パイロットが重い口を開いた。

 

「恐れていたことが現実になってしまった。原因をひと言でいえば、完全なオーバーワークだ」

 

 浜松のケースは航空救難団のUH-60J救難ヘリコプターが起こした訓練中の事故。航空救難団は、自衛隊機の搭乗員を救助するほか、急患の空輸、山岳および海上の遭難者の捜索・救助に出動する。救難機のパイロットが、過酷さを増す任務の実態を明かす。

 

「最近は夜間訓練が増えました。空中給油を受けることによって、航続距離が延びるので、日本中どこへでも出動しています。10時間以上の飛行は非常に体力を使います。もちろん、トイレにも行けません。飛行任務中は紙おむつを着用しますが、心理的な抵抗感があって、我慢しがちになってしまう」

 

 浜松の事故が起きたのは午後6時ごろ、陽が落ちた「魔の時間帯」だった。要救助者の捜索は最終的には目視でおこなうが、外は真っ暗。ヘルメットに装着した暗視装置越しに覗くことになる。そのためには、海面ギリギリを飛行しなければならない。

 

「一瞬のミスで、海面に接触してしまうことになる」(同・救難機パイロット)

 

 任務は、二次災害の危険と常に隣り合わせだ。百里基地の事故は、F-4EJ改支援戦闘機が起こした。前出の幹部パイロットは、「機体の老朽化」が原因ではないかと指摘する。

 

「同機の通称は、『ファントム』。アメリカで1960年代から導入され、ベトナム戦争で初実戦。航空自衛隊の配備開始は1971年で、46年が経過している。先進国で、ファントムを飛ばしているのは日本だけ。主脚が折れたのは、金属疲労にも起因するのではないか」

 

 人も装備も疲弊しきっているのだ。さらに、緊迫化する東アジア情勢が、隊員たちの負担を重くしている。2017年4月から9月までのスクランブル(緊急発進)の回数は561回。過去最大を記録した2016年度の1168回より減ったとはいえ、1日3回以上も、自衛隊機が国籍不明機に対処していることになる。元航空自衛隊空将の織田邦男氏はこの現状を危惧する。

 

「尖閣諸島周辺では中国軍機が領空侵犯を繰り返し、北朝鮮が核実験やミサイル発射で恫喝しています。もはや平時というより有事。スクランブル回数が減ったのは、中国共産党大会があったためで、また戻るはずです。しかし、人員は増えず、装備の更新も進んでいない。このままでは、今後も事故が起こり続けるでしょう」

 

 空自は、2017年度末から最新鋭ステルス戦闘機F-35を配備するが……。

 

「F-35を導入する予算も必要ですが、同時にパイロットを養成する予算も増やすべきです」(前出・伊藤氏)

 

 隊員の奮闘に頼る空の護り。すでに限界を迎えつつある。

 

(週刊FLASH 2017年11月14日号)

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