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「見ると幸せになれる」ドクターイエローが引退へ 本誌が取材していた「新幹線のお医者さん」の車内

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2024.06.13 16:19 最終更新日:2024.06.13 16:19

「見ると幸せになれる」ドクターイエローが引退へ 本誌が取材していた「新幹線のお医者さん」の車内

2014年、本誌が取材していたドクターイエロー。当時からファンが集まる“人気者”だった

 

新幹線のお医者さん」と呼ばれ、車両の少なさや運行が時刻表に掲載されない希少性から「見ると幸せになれる」と、鉄道ファン以外にも絶大な人気を誇る、東海道・山陽新幹線の点検車両「ドクターイエロー(正式名称は『新幹線電気軌道総合試験車』)」が引退することが6月13日、JR東海JR西日本から発表された。理由は「老朽化」などだという。

 

「ドクターイエローは、JR東海と西日本がそれぞれ1編成ずつ運行しています。車内に数々の計器があり、線路や架線の状況、車両の振動などを計測して、それらの数値を保線などの参考にしています。今回、JR東海は2025年1月、JR西日本は2027年以降に運行を終了するそうです。今後は新幹線『N700S』に搭載される検査機能がドクターイエローの代わりを務めると聞いています。鉄道ファンならずとも、寂しくなりますね」(週刊誌記者)

 

 

 2014年、本誌は、そのドクターイエローに同乗取材をしていた。

 

「JR東海の広報担当の方と東京駅で待ち合わせ、何度も厳重なセキュリティを受けて案内されたのが『新幹線総合指令所』でした。列車の運行や各地の気象、施設の状況といった、東海道・山陽新幹線に関するすべての情報がここに集められ、それぞれに的確な指令を伝えることで安全な運行を守る“新幹線の頭脳”ともいうべき場所でした」(当時、取材した記者)

 

 フロアの全面には巨大な総合表示盤があり、列車の運行状況が表示されていた。それを見るかたちで「輸送列車指令」「施設指令」「信号通信指令」などの役割を持った6つの指令セクションが置かれ、台風などのときには各指令間で協議され対応や方針を決定、列車や駅などへの指示が出されるのだという。

 

「万が一、東京で巨大地震があり停電しても、司令所には発電施設もあるため、業務を遂行することが可能だそうです。東日本大震災の当日も、東海道新幹線は夕方から運転を再開していたそうです」(同前)

 

ドクターイエローが停車しているホームには、当時から鉄道ファンの姿が大勢、見られた。

 

「運行情報が時刻表に掲載されることはありませんが、時刻表を神業的に読むファンがいて、その人が、時刻表の『奇妙な時間の空白』などを探りあて、『ドクターイエローが入るはず』と情報をくださるんです」(居合わせた鉄道ファン)

 

 取材時のドクターイエローは7両編成。ステップを上がり、シートに座ると、パンタグラフを確認するための小窓「観測ドーム」があり、常時、カメラが撮影している。パンタグラフは前後に2つ。ひとつは車両を動かすための集電用、もうひとつはパンタグラフと、トロリ線(架線)の接触幅などを測定するためのものだという。

 

「1号車と7号車の両先頭車両には『前方監視カメラ』が設置され、構造物に異常がないかなどをチェックします。測定用パンタグラフからは、2万5000ボルトの電気が高圧室の測定機に流れ、電機関連のデータは1号車の測定台に送信されるということでした」(前出・取材した記者)

 

 今後、JR東海は引退までに、イベントや記念グッズの販売などをおこなう予定だという。日本の大動脈の「安全」を守り続けたドクターイエローに、まずは「ご苦労さま」と言ってあげたい。

( SmartFLASH )

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