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【識者が選ぶ「日本の名家」】佳子さまの“お相手”から「権力から遠いはず」の“文化界の新勢力”まで華麗な名前が

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2024.06.15 06:00 最終更新日:2024.06.15 06:00

【識者が選ぶ「日本の名家」】佳子さまの“お相手”から「権力から遠いはず」の“文化界の新勢力”まで華麗な名前が

1987年、安倍晋三と森永製菓創業家の令嬢・昭恵夫人の結婚式の様子。福田赳夫夫妻が媒酌人を務めた。名家同士の結婚だった(写真・共同通信)

 

 豊田家、鹿島家、島津家……。日本の名家の実力はいかほどか? 識者が、最強の系譜を解説する。

 

宗教学者、島田裕巳氏

 

 宗教界の名家として島田氏があげたのは、浄土真宗の本願寺の大谷家、神道からは出雲大社の千家家と北島家だった。

 

「仏教においては、僧侶は血筋で継承されることがほとんどないので、仏教の世界では名家が生まれる可能性は極めて低いのですが、例外がこれらの家です。浄土真宗では、宗祖である親鸞が妻帯し、子どもをもうけたことから、そのトップは親鸞の血筋を引く大谷家によって代々受け継がれてきました。浄土真宗本願寺派(西本願寺)と、真宗大谷派(東本願寺)とで2つの大谷家がありますが、明治に入ると、どちらの大谷家も華族に列せられ、伯爵家となっています。

 

 神道の世界では、代々血筋で継承される『社家(しゃけ)』が存在しましたが、明治に入って世襲が禁じられ、ほとんどが途絶えました。そのなかで現在でも続いているのは、出雲大社の千家家と北島家。出雲大社の神職は『出雲国造(くにのみやつこ)』と呼ばれ、“生き神”としての扱いを受けてきました。その伝統は、いまでも続いていますし、現在の千家家の国造に皇族の女王が嫁いだことも、名家の証しになっています」

 

 

経済ジャーナリスト、松崎隆司氏

 

『どん底から這い上がった起業家列伝』(光文社)など、経済界と名門に詳しい松崎氏。政界からは岸田家と河野家を推す。

 

「岸田首相については、母は日東製粉の令嬢、遠縁には宮澤喜一元総理がいる、財界とも政界ともパイプを持つ強い家系。

 

 河野家は、河野太郎の母が伊藤忠商事の創業者・伊藤忠兵衛の孫で、財界への触手も太い。代々総理を狙うもいまだかなわず、太郎にその期待がかかっています」

 

 財界からはほかに、鹿島建設の鹿島家、サントリー創業家の鳥井家・佐治家をあげた。

 

「鹿島建設の“中興の祖”鹿島守之助は、娘3人を通して閨閥を作り、後継者を育てました。長女・伊都子の長男の妻は中曽根康弘元首相の娘、次女の娘・よし子の夫は経団連会長の息子で日本商工会議所の会頭を務め、財界にも大きな影響力を残しました。

 

 サントリーは、創業者の鳥井信治郎の次男で、幼少期に佐治家に養子に出された佐治敬三が2代目社長に。以降、鳥井家と佐治家で交互に社長を務めてきました。現在こそ創業一族から離れた新浪剛史がトップを務めますが、とはいえ雇われ社長です。いまだに創業家の意向は強く反映されているでしょうね。

 

 茶道界の裏千家は、千利休から続く由緒正しき家系で、16代目当主の千宗室は、元内親王の容子さまと結婚しています。国内外に100万人の会員を擁する京都屈指の名家ですよ。茶会などを通して政財界に隠然とした独自のネットワークを持ち続けている家系です」

 

信州大学特任教授、山口真由氏

 

 あげたのは、豊田家、茂木家、福田家、麻生家の4家。

 

「茂木家は、日本の食文化を世界に広めたキッコーマンの創業家です。入社できるのは一世代一人、創業家であっても役員や社長の地位は保証しないなどの不文律を維持し、創業家による協調を保っています。

 

 麻生家では、朝起きてすぐにワイシャツとスラックスに着替えないと居間に降りられないとか。麻生太郎元総理は、こうした執事のいる暮らしの不自由さを記者に説いたそうです。庶民には理解しがたい貴族的な文化が受け継がれているのはたしかです」

 

歴史作家・文筆家、八幡和郎氏

 

「“名家の将来性”という要素を重視して、これらの家系を選出しました。有望な跡取りがいるかどうかが、今後の名家の行く末を担っていますからね」

 

 と語る八幡氏。

 

「たとえば安倍家などは、安倍晋三元首相以降で有望な政治家がいないのが現状です。一方、麻生家は、麻生太郎元首相の長男・将豊が日本青年会議所の前会頭ですし、長女の彩子は東大卒でフランス語も堪能と、後継者候補ともいわれた才媛。先々が明るい一族であることは間違いありません。大手総合化学メーカーのUBE株式会社(旧宇部興産)創業家の俵田家は、山口で絶大な影響力を持ち、林芳正を輩出しました。安倍家の力が弱まったいま、勢いを増している一族です」

 

 政界では、ほかに福田家をあげた。ほかには、徳川家や藤原家といった歴史ある名家、財界からは豊田家、三井家、茶道の裏千家の名前があがった。

 

政治ジャーナリスト、伊藤惇夫氏

 

「名家といえば数百年の歴史を持つ家柄だと思っています。鳩山家などは、維新前は足軽をしていたという説もありますからね。安倍家、鳩山家など、現在、政治の世界で辣腕をふるっている一族は、明治以降のいわば“成り上がり”です」

 

 そうバッサリと斬った伊藤氏があげたのは、細川家、徳川家、島津家、三井家、住友家。どれも維新前から続く家柄だ。

 

「細川家は、応仁の乱以前からある、600年以上も続く名門です。応仁の乱で、当時のほとんどの名門はつぶれてしまいましたが、それでも細川家は続きました。戦国時代から続く家から、1993年に細川護熙(もりひろ)元総理を輩出したという歴史は驚くべきです。

 

 水戸徳川家の当主である斉正(なりまさ)は、現在、徳川ミュージアムの理事長をしていますが、慶應大学卒業後、現在の東京海上日動に就職し、のちに総務部長にまでなりました。単に名家の出身であるだけでは、一般企業で出世するまでには至りませんよ。徳川の名前で顔が利く、ということではなく、代々、優秀な人材を育成できるという家柄のよさゆえのことでしょう」

 

 島津家は、佳子さまの「お相手」として御曹司に注目が集まっている。

 

「九州では絶大な影響力を誇る一族ですね。そもそも、皇族との引き合いがいまだにあるということ自体が、本当の上流階級であることの証しといえるでしょう。昨今の報道で、あらためて株を上げたともいえます」

 

文筆家・評論家、古谷経衡氏

 

 評論家として活躍し、サブカルチャーにも明るい古谷氏は「文化界にも名家が多く登場している」という。

 

「宮﨑駿の宮﨑家は、長男の吾朗をスタジオジブリの常務に据え、次男の敬介は版画家としてジブリの機関紙『熱風』に登場しています。かつては同族優遇を否定していた宮﨑駿ですが、エンタメ界で着々と同族の影響力をあげています。

 

 手塚治虫の一族・手塚家は、長男の眞が世界的映像作家、長女のるみ子は手塚プロ取締役として活躍しています。

 

 角川書店の創業者・角川源義を筆頭とする角川家は、映画産業に進出した長男の春樹が薬物事件で逮捕されると次男の歴彦が実権を握りましたが、歴彦も五輪汚職で失脚。いまだ隆盛ですが、一族の地位は揺らいでいます。

 

 文化界は、本来、もっとも家系という権力から遠いはずです。手塚氏はともかく、そんな領域ですら名家が生まれ、下駄を履いた評価を得ているとしか見えない職にありつく方がいるのも事実です」

 

 ほかに、現在は秋田県知事の佐竹敬久が当主である、戦国大名の直系・佐竹家、東條英機元首相の一族、東條家をあげた。

 

 衰退する家がある一方で、新たな分野で芽を出す家もあるのだ。

 

「森繁久彌、高橋英樹が自宅に」。本物の名家界の姿

 

 令和につながる“名家の人脈”。実際、当の本人たちは、どんな人生を歩んでいるのか――。

 

 先日、出産を発表した、タレントの團遥香。父の紀彦氏は建築家、祖父の伊玖磨は作曲家として知られ、三井家や鳩山家と縁が深い。まごうことなき名家出身の彼女だが、幼少期のエピソードを聞くと、大物の名前が出るわ出るわ……。

 

「祖父は映画音楽の作曲もたくさんしていたので、逗子の自宅にはよく俳優の方がいらっしゃいましたね。なかでも、森繁久彌さんがいらしたことはよく覚えています。私が芸能界入りした後、高橋英樹さんから『昔、おじい様の自宅に行ったことがあるんだよ』とお話しいただきました。私が幼いころは、お客様がいらっしゃると、祖母やお手伝いさんと、お茶を出すのをよく手伝っていましたね」

 

 一方、世間の「名家」のイメージとのギャップに苦しむこともあるという。

 

「名家というと、『大きな屋敷で夜ごとパーティ』などと思われがちなんですが、まったくそんなことはなく(笑)。私はひとりで居酒屋などに行くのが好きですし、両親もブランド品はあまり持っていないですね。使いこんだポーチを持っているだけで、『いいギャップだね』と言われるので、そういうときは『得したかも』と思います(笑)」

 

 真の名家には、立ち居振る舞いに品格が漂う、ということか。

 

※文中、一部敬称略

( 週刊FLASH 2024年6月25日号 )

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