8月12日に岩手県大船渡市付近に上陸し、秋田県を通過して日本海側に抜けた台風5号。岩手県には平年の8月1カ月分の2倍を超える降水量を記録し、甚大な被害をもたらした。さらに8月13日現在、台風7号、8号が太平洋上に続けざまに発生しており、週末には関東を直撃する恐れも出ている。
じつは、この台風5号のように、東北地方太平洋側に上陸し、日本海側に抜けるようなコースをたどったものは、1951年の統計開始以来、3例しかない。2016年8月の台風10号と、2021年7月の台風8号、そして今回の台風5号である。
これまで台風といえば、太平洋の南海上で発生し、沖縄・九州や四国、紀伊半島など西日本に接近、または上陸し、日本列島を添うように北上するルートが一般的だった。これらの地域は「台風銀座」と呼ばれるほどだ。ところが2024年の台風は、西日本ではなく関東、東日本を直撃するようになっているものが多い。
【関連記事:頻発する豪雨災害、ガソリン・ディーゼル・電気自動車で浸水被害は違うのか? 専門家に聞いた】
Xでも疑問の声が次々と上がっている。
《今年の台風、問題児じゃない??進路おかしい》
《今年の台風の発生場所がおかしいよね》
《どう見ても今年の台風のコースはおかしい》
いったい何が起こっているのか。日本気象協会所属の気象予報士・高森泰人氏はこう話す。
「太平洋高気圧の軸が、ぐっと北上しています。それにともなって、熱帯擾乱(ねったいじょうらん。大気の乱れを指し、台風に発達することもある)の発生する位置も北にシフトしているのです。その結果、台風の発生場所や進路が変わってきているといえます。
上空の高気圧の軸は、もともと北緯40度付近にありましたが、その後、西へ張り出したため、台風5号にとっては北側に“壁”ができたような形になりました。よって、途中から左折をするような格好で東北地方に上陸し、日本海側に抜けていきました」
さらに、台風7号が関東を直撃する恐れが出ている。これまでと違うのは、発生直後の台風が勢力を増しながら関東地方を直撃することだ。同じく日本気象協会所属の気象予報士・田口晶彦氏はこう警鐘を鳴らす。
「海水温が上昇しており、また太平洋高気圧が弱まっていることもあり、これまでの台風のようにグアム、サイパン沖よりも、もっと日本に近いところで台風が発生するようになっています。そのため、発達したままの台風が関東や東北、東日本を直撃するようになっています。今後は、これまで西日本だった台風銀座が、東日本に移ったといってもいいでしょう」
従来の常識が通用しない台風の到来で、関東、東北地方でも、万全な備えが欠かせなくなってきた。
( SmartFLASH )