8月22日、東京電力は福島第1原発から核燃料デブリを取り出す「試験的な取り出し」を延期したと発表した。取り出し装置の取り付けにミスがあり、作業の直前で延期したという。“世界一高価なクレーンゲーム” とも揶揄された取り出し計画は、現状で作業再開の目途もないという。
「2号機の原子炉を覆う格納容器の底にある燃料デブリのうち、小石状のものを一粒、掴んで回収する計画でした。まず、格納容器の内部に通じている直径60センチの配管をつかって、伸縮式のアームを伸ばし、内部に到達した先端部分から、さらにデブリを掴む器具をケーブルで釣り下ろし、デブリを掴んで回収する計画でした。
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今回の延期は、押し込みパイプの連結順を間違えたということです。まだ、原因はわかりませんが、設計にしろ、作業にしろ、どこかの段階で単純な人為的なミスが発生したとしか言いようがありません」(社会部記者)
燃料デブリとは、2011年3月に発生した東日本大震災で、電力喪失事故で溶け落ちた核燃料と周囲の構造物が混ざり合った放射性物質のことを指す。
1号機から3号機までの建屋内におよそ880トンあると推定されており、きわめて高い濃度の放射線を出し続けていることから、近づくのも不可能な状態だ。そのため、デブリを遠隔装置を使って除去することで、廃炉最大の難関をクリアする計画だった。
「回収した燃料デブリは、表面から20センチ離れた位置で放射線量を計測し、1時間あたり24ミリシーベル以上なら格納容器に戻し、以下なら容器に入れて茨城県大洗町にある日本原子力研究開発機構に運ばれ、内部含有物などの分析をおこなう予定でした。今回の取り出し量は3グラムで、『耳かき一杯』程度です」(同)
遅々として進まない回収計画には批判の声も出ている。
「そもそも試験的な取り出し自体、2021年中におこなわれる計画でした。78億円かけて専用のロボットを開発した後に、経路に堆積物があることがわかり、中止しています。この調子では、10キロ取り出すのに250年かかるとの専門家の指摘があります。
いずれにせよ、格納容器から燃料デブリを取りださないことには、廃炉の現実的な工程表を作ることなどできません。また、現在、海洋放出を続けている処理水も、燃料デブリがある限り、処理と放出を永遠に続けることになってしまいます」(同)
福島第1原発の設置にも携わった技術者はこう明かした。
「燃料デブリの量は、石棺化(コンクリートなどで固める方法)したチェルノブイリの数倍といわれています。福島第1原発も、石棺が解決法としては合理的なはず。しかし、そうなると現地はサンクチュアリ(立ち入り禁止区域)にせざるを得ない。
結局、原発を推進してきた政府のメンツのために、あれやこれやをやっているだけでしょう。作業員は危険と背中合わせですから、いち早く政治決着してほしいと思いますね」
とはいえ、石棺にした場合、地元住民は納得できないだろうが……。
( SmartFLASH )