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東芝は1カ月プラスアルファ…お騒がせ企業のボーナス大調査

社会・政治 投稿日:2017.12.18 11:00FLASH編集部

東芝は1カ月プラスアルファ…お騒がせ企業のボーナス大調査

 

「昨年のボーナスは給与の1カ月分に満たない額でしたが、今期は1カ月分にプラスアルファとなり、個人ごとの査定も昨年より甘くなりました」

 

 そう語るのは、東芝の現役社員。2016年冬のボーナスは「同業他社の半分」といわれたが、上場回避のめどが立ち、2017年は若干の余裕ができそうだという。

 

「ただ、ほぼ唯一、利益を出せるメモリー事業を手放すわけですからね。今後の展望があるわけではありません。将来を悲観して、優秀な社員から順に、ライバル企業に転職していますよ」

 

 実際、最近も『サザエさん』(フジテレビ系)や『日曜劇場』(TBS系)からのスポンサー撤退を発表するなど、東芝の話題は暗いものばかり。東芝をはじめ、2017年にニュースとなった「お騒がせ企業」とその同業他者、そして特筆すべき企業について、本誌は冬のボーナス額を調査した。

 

 日本経団連が11月6日に発表した集計によると、大手企業のこの冬のボーナス(平均妥結額)は、2016年より1.19%減の91万6396円。経団連は「高水準が継続している」としているが、連合関係者はこう指摘する。

 

「近年のボーナスは、組合と経営側の交渉で妥結する方式から、業績連動型という、直近の業績で半自動的に決まる方式に移行するケースが増えています。極端にいうと、これまでは一時的な赤字に陥っても、ある程度のボーナスが保証されていました。しかし業績連動型の場合、赤字ならボーナスゼロ、ということも起こりかねないのです」

 

 このことを踏まえつつ、各企業のボーナスを見ていこう。東芝のほか、電機業界で話題となったのがシャープ。経営不振から2016年に台湾・鴻海精密工業に買収されたが、リストラの結果、2017年4~9月期の業績は急回復。営業利益は2016年同期の500倍になった。

 

「昨年は35万円ほどの支給額でしたが、倍増といえるまでに回復しました。しかし外資に買収されたことで、社員ごとの業績達成度に応じた『信賞必罰型』のボーナスに変わりました。平均は70万円ほどですが、30万円から150万円まで、社員間のボーナス格差が広がる結果になっています」(シャープ社員)

 

 鉄鋼業界では10月、神戸製鋼所が自社で扱う素材について、性能データなどを改竄していたことが発覚した。

 

「神戸製鋼所の場合、今期のボーナスは春闘で妥結しています。しかし来夏以降、業績の見通しが立たず、交渉難航が予想されます」(前出・連合関係者)

 

 自動車業界では、日産自動車とSUBARUが、完成車の検査を無資格の人間に担当させていたことが発覚。

 

「しかし、2社とも主力の海外市場が好調で、来年以降、大幅にボーナスダウンがあるとは思いません。ただ同業他社と比べ、弱含みに推移する可能性はあります」(経済紙記者)

 

 国産初のジェット旅客機「MRJ」の納入遅れなどが話題となった三菱重工業は、連結売上高の3割を占める火力発電事業も不振で、業績の下方修正を発表した。同社の関係者が語る。

 

「それでも今年はベースアップ1500円を確保。給与・ボーナスには今のところ、大きな影響は出ていません」

 

 その三菱重工業にMRJを発注している航空会社のひとつが、全日空だ。

 

「好業績を反映してボーナスもアップでした。ですが、じつはボーナスの基準額自体が上がったのではなく、特別一時金が上乗せされたのです。今後、燃料代の高騰やLCCの台頭などで業績が下がった場合に備え、ボーナス水準の高止まりを避けたい経営陣の思惑が透けて見えますね」(全日空社員)

 

 ネット通販により取り扱い個数が急増し、現場の悲鳴が報じられたのが、宅急便でお馴染みヤマトHD。

 

「2017年4~9月期は128億円の営業赤字。未払い残業代の支給や過重労働改善優先で、ボーナス増にまで至る状況にないのが現状です」(別の労組関係者)

 

 メガバンクでは今後、全体で3万2000人がリストラされると報じられた。三菱東京UFJ銀行の関係者に聞いた。

 

「今期のボーナスに限っていえば、株高にも支えられ好調です。しかし報道のとおりになれば、会社に残れる行員以外、先行きは不安ですね」

 

 非製造業のボーナスについて、前出の労組関係者が解説する。

 

「似た業種のボーナスが横並びという時代は終わりつつあります。同じ国鉄からスタートしたJRですが、業績好調のJR東日本や東海は年間のボーナスは約6カ月。しかし業績の厳しいJR貨物は、3カ月を切ります」

 

「勝ち組」「負け組」の格差は、同業種内だけではない。小売り、外食、旅行などは、業種自体が「負け組」といわれる。今後、人口減少や高齢化など、内需の縮小が待ち受けているからだ。

 

「とくに外食業界は価格競争が激しく、従業員のボーナスまで行き届いていないのが現状です。27年ぶりの最高益を出したロイヤルHDなど、明るい材料のある会社では待遇改善も見られますが、まだまだです」(同前)

 

 そんななか、食品メーカーの明治HDは、スナック菓子「カール」の東日本での販売を終了。大きなニュースに。

 

「明治は海外展開を強化し、国内では好調な乳業部門に経営資源を集中させるなど、先んじて事業の選択と集中をおこなっています。こういった企業は業績も好調で、ボーナスの額にも反映されています」(前出・経済紙記者)

 

 経済アナリストの森永卓郎氏が語る。

 

「日本企業の昨年度の内部留保は、406兆円と過去最高を記録しました。一方で我々の実質賃金は3%ほど下がっています。企業は、賃金を押さえ込むことで利益を出しているのです。従業員は利益を生む道具という発想ですよね。安倍首相の進める政策がそうなんですよ。二極化、格差はますます広がっていきます」

 

 ボーナスをもらえただけで「勝ち組」かもしれない……。

 

(週刊FLASH 2017年12月12日号)

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