10人以上が出馬の意向を明らかにしている “乱立” 状態の自民党総裁選。だが、すでに勝敗の帰趨は大方、決しているようだ。元朝日新聞政治部デスクの鮫島浩氏が、“大本命” の名をあげる。
「小泉進次郎氏で、ほぼ決まりでしょう。菅義偉前総理が力添えをしている進次郎氏が、第1回投票で過半数を取って圧勝することも十分に考えられます。
ただ、党内での覇権争いのため、進次郎氏の当選を阻止したい麻生太郎副総裁は、麻生派から河野太郎氏、茂木派から茂木敏充氏、岸田派から林芳正氏と上川陽子氏、そして若手代表の小林鷹之氏と、できるだけ多くの候補を立てる “大量擁立” 作戦にうって出ました。
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候補者が多くなれば票が分散し、進次郎氏が第1回投票で過半数を取るのを阻止することができる。そして、上位2人による決選投票で “反進次郎” の票をまとめて、最後に勝利する大逆転を狙っているんです」
しかし、それでも進次郎氏優位は揺るがないと、鮫島氏はみる。
「43歳と若くて明るいし、自民党の裏金のイメージを払拭する “選挙の顔” として申し分ない。台風の影響もあって出馬表明を9月6日と、他候補よりも遅くした “後出しジャンケン” 作戦も功を奏するでしょう。期待感を持たせて、進次郎人気は沸騰するはずです。
そもそも、あまり早く出馬表明をすると、昔の金銭問題や不倫問題などのスキャンダルを蒸し返される可能性もあったわけです。タイミングとしてはベストでしょう。
石破氏と違って、進次郎氏は国民人気が高いだけでなく、党内にも敵はいないので、議員票でも強いから決選投票で勝つ可能性も十分ある。
いまや、最大の関心事は、進次郎氏が第1回投票で過半数を取るかどうか、です」
いよいよ現実的になって来た “小泉進次郎総理”。そうなると、気になるのが新総理を支える閣僚の顔ぶれだ。本誌は政治評論家の有馬晴海氏に、小泉進次郎内閣の「組閣名簿」を大胆に予想してもらった。
「進次郎氏は議員歴15年で経験不足ではないかといわれますが、自民党には優秀な政治家はたくさんいます。そういう人物を閣僚にして支えてもらえばいい。進次郎氏は、総理としてトータルコーディネートを考え、指揮官の役割を果たせばいいんです。
小泉進次郎内閣のキーワードは『刷新』。そのため、裏金問題を抱える議員は、たとえどれほど有能であっても、進次郎氏は今回起用しないだろうと考えました。
それに『脱派閥』を主張する進次郎内閣なので、各閣僚の出身派閥は考慮していません。結果的に、無派閥の議員、そして進次郎氏を支援した菅義偉氏に近い人物が多くなりました」(以下「」内は有馬氏)
そんな “菅人脈” からの入閣は誰なのか。
「財務大臣は梶山弘志氏ではないでしょうか。梶山氏は菅氏が尊敬していた梶山静六元通産大臣の子息。自身も安倍・菅内閣で経産大臣も経験した経済・財政通です。
総務大臣に起用されるのは坂井学氏。彼は、菅内閣の官房副長官を務め、菅氏を支援する『ガネーシャの会』会長でもあります。そして、環境大臣には参議院から三原じゅん子氏でしょう。どちらも地元が神奈川の菅人脈。進次郎氏ともども地元の付き合いは信頼関係ができます」
“支援者” の仲間と一蓮托生を決める進次郎氏だが、一方で、自分と同じ若手議員を大量登用するという。
「進次郎氏を中心に自民党の若手議員で構成した『2020年以降の経済財政構想小委員会』のメンバーから4人選出しています。法務大臣に牧原秀樹氏、経済再生担当大臣に橘慶一郎氏、地方創生担当大臣に村井英樹氏、デジタル大臣には小林史明氏です。
新しい時代の多様な生き方・働き方の観点から、自助の支援を基本とした社会保障制度改革などを提言するのが目的ですが、この小委員会は、進次郎氏の社会保障政策の “柱” となっています。メンバーはいわば “同志” ですね。牧原氏と小林氏は初入閣ですが、非常に能力の高い人物です。
また、進次郎氏の大きな売りは若さということになりますが、新しい時代の国の形を想定できる若い同僚が目にとまります。
進次郎氏は男女共同参画の意識が強いので、女性を5人は入れたいと考えました。当選2回で41歳の若さの小野田紀美氏は文部科学大臣。当選4回で38歳、外務副大臣も経験している鈴木貴子氏は沖縄北方担当大臣でしょう。三原じゅん子氏も含め、女性が活躍する内閣の象徴的存在になりうる人事です」
自分の側近を同世代で固める進次郎氏だが、基盤固めも忘れてはいない。“内閣の要” ともいわれる内閣官房長官には、加藤勝信氏の名があがった。
「加藤氏は菅内閣で官房長官を務め、安倍内閣では官房副長官も経験しているため、もちろん菅氏との関係も良好。政治的手腕も手堅いし、“女房役” として進次郎氏を支える官房長官の役職は適任だと考えました」
そんな “女房役” のまわりには、総裁選で激突するライバルたちを起用するという。
「斎藤健氏は経済産業大臣に再任するでしょう。問題が山積みの産業界のなか、能力は折り紙つきですし、進次郎氏とは当選同期で関係も良好。高市早苗氏は党内から、特に元安倍派から根強い支持があります。経済安全保障政策の継続性を考慮して、経済安全保障担当大臣の再登用としました。
同じ女性でいうと、上川陽子外務大臣も引き続き起用されるでしょう。岸田内閣での実績と、外交では同じ顔が幅を利かせる優位性が大切です。そして、目玉として防災省の新設を予想しますが、初代防災大臣には、提唱者の石破茂氏はどうでしょうか。
総裁選では惜しい結果となりそうですが、さまざまな大臣を歴任し、永田町有数の勉強家でもあり、南海トラフ地震や豪雨などの災害が心配される今日、ご本人の知恵やアイデアなど手腕を発揮していただきたい」
ほかにも、重要なポストには大臣を複数回経験したベテラン議員を配置することで、新旧の化学反応もばっちりだという。
「厚生労働大臣に田村憲久氏が起用されれば、厚労大臣は2度めとなります。厚生政策では自民党一と高く評価されています。
農林水産大臣は古川禎久氏を推奨します。前回は法務大臣ですが、どの分野の政策にも精通しており、特に地元・宮崎では農業問題にも精力的に取り組んできました。新しい農業政策に期待したいです。
防衛大臣には小野寺五典氏。安倍内閣で同大臣を務めた経験者で、自衛隊からの信頼が大きい。党の国防部会で安全保障調査会長を務め、不祥事の相次ぐ自衛隊改革にも手腕を発揮すると期待されます。岸田派から一人となると、この人です」
そして、内閣府における外局の長である国家公安委員長は、岩屋毅氏となった。知識・経験が豊富で、「すべての派閥を解消すべきだ」と主張し、一人で麻生派から会した派閥解消の象徴的存在でもあるという。
また、復興大臣としては、“初入閣” となる松下新平氏をあげた。大臣就任が遅れたのは、派閥、能力、タイミングなどでよくある話で、当選4回は有資格者だという。
最後に、自民党以外から2人の名前があがった。注目なのは、野党である立憲民主党から “1本釣り” される馬淵澄夫氏だ。
「こども政策担当大臣は馬淵氏を予想します。野党・立民からの起用ですが、少子化対策には野党も男女も関係ない。6人の子育てをした経験を、かつて小泉純一郎首相から『表彰しなきゃいけない』と評価されたこともありました。内閣改造ごとの1年間ではなく、3年間くらいは一貫政策で出生増の成果を上げてほしい。
国土交通大臣は、現職の公明党・斉藤鉄夫氏の留任でいいと思います。自公連立を組んで以来、国交大臣ポストは公明党枠。公明党内での人事になりますが、現職の斉藤氏を変える理由もない。手堅くソフトな答弁はイメージがいいので、内閣としてはありがたい人事です」
はたして、現実にはどうなるのか――。
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