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パナソニックに大成建設「ブラック企業大賞」ノミネート社の言い分

社会・政治 投稿日:2017.12.22 11:00FLASH編集部

パナソニックに大成建設「ブラック企業大賞」ノミネート社の言い分

 

 2017年で6回めとなるブラック企業大賞のノミネート企業が、11月に発表された。いずれも「過労死や長時間労働」に関する事件が起きた企業ばかりだ。

 

 以下がノミネートされた9社。

 

パナソニック

 

 2016年6月、富山工場に勤務する40代男性社員が自殺。2017年2月に、労働基準監督署により過労による自殺と認定された。これを機に始まった調査により、同工場の社員3人の最大138時間の長時間残業が発覚。法人としてのパナソニックと同社幹部社員2人が、2017年3月に労働基準法違反容疑で書類送検された。

 

 同社は、仕事と育児の両立支援で実績を上げた企業に授けられる「プラチナくるみん」認定を厚労省から受け、税制優遇措置を受けていたが、この事件で認定は取り消された。

 

 ノミネートについて同社に聞くと、「書類送検は事実で、誠に申し訳なく、謹んでお詫びいたします」と回答した。

 

●NHK

 

 2013年7月、当時31歳だった女性記者がうっ血性心不全で死亡。翌2014年4月に、死因は長時間労働による過労が原因であると労災認定された。亡くなる直前の2013年6月下旬から7月下旬まで1カ月間の時間外労働(残業)は159時間37分。

 

 NHKは、2017年10月になって女性記者の過労死事件があったことを公表した。上田良一会長は「労災認定を受けたことを大変重く受け止めている」と話した。

 

 NHK広報局はブラック企業大賞にノミネートされたことについて、「記者の勤務制度を抜本的に見直すなどNHK全体で働き方改革を進めています」と回答した。

 

●引っ越社(アリさんマークの引越社)

 

 本誌2015年11月10・17日号で、男性社員が顔出しで告発した「アリさんマークの引越社」こと引越社グループ。懲戒解雇の理由を「罪状」と題して顔写真入りで店舗に掲示するブラックぶりがノミネートの理由だ。

 

 ノミネートについて同社に聞くと、「今日も明日も担当者が不在で答えられません」と答えた。

 

●ヤマト運輸

 

 2016年末から、賃金や残業代未払い、勤務時間改竄が相次いで発覚、2017年9月には福岡県内の支店で違法残業を強いたとして、同社の幹部社員2名が労働基準法違反で書類送検された。

 

「適正な労働時間管理などの事業構造改革に取り組んでいます」(広報)という同社。目指せ、黒くないクロネコ。

 

●いなげや

 

 長時間労働を続けていた店舗チーフの男性社員が、2014年5月に勤務中に倒れ、入院。翌6月に職場へ戻るが、約2週間後に脳血栓で亡くなった。2016年6月に労災認定されたことが、2017年4月に遺族側代理人の会見で明るみに出た。チーフの遺族は同社に対して損害賠償請求のほか、謝罪と職場環境の改善を求めている。

 

 同社広報にノミネートに関する見解を聞くと、「とくにコメントすることはございません」と答えた。

 

●ゼリア新薬工業

 

 2013年4月に入社した当時22歳の男性社員が、新人研修中の2013年5月に自殺。男性は研修の講師に、かつて吃音だったことやいじめを受けていたことを大勢の同期の前で告白させられるなどした結果、「強い心理的負荷」を受け、精神疾患を発症。帰宅途中に命を絶った。2015年5月に男性の自殺は労災と認定された。2017年8月に遺族が同社や研修を担当した人材コンサルタント会社を相手取り、損害賠償請求を提訴した。

 

 ノミネートについて同社は、「係争中の案件であり、コメントは差し控えさせていただきます」(広報部)。

 

大成建設

 

 東京五輪のメインスタジアムである新国立競技場の建設工事の元請け企業である大成建設と、下請けの三信建設工業がノミネートされた。2017年3月、新国立競技場建設にあたっていた三信建設工業の新人男性社員(当時23歳)が自殺。10月に、長時間労働による過労が原因と労災認定された。自殺直前の1カ月間の残業時間は、約190時間だった。元請けの大成にも行政指導がおこなわれた。

 

 大成建設にノミネートについて見解を聞くと、「法令順守の徹底について指導し、専門工事業者とともに長時間労働の発生の防止に努めてまいります」(広報室)と回答した。
 三信建設工業は、「回答を差し控えさせていただきます」(同社管理本部)とした。

 

●大和ハウス工業

 

 20代営業職の男性社員に違法な時間外労働をさせ、労働基準監督署から是正勧告を受けていたことが、2017年9月に発覚した同社。男性は業務をこなすため、住宅展示場の事務所や営業車内に隠れて残業し、うつ病を患い、2016年5月に退職を余儀なくされていた。

 

「労基署の指摘事項を真摯に受け止め、解決に向けて当事者と話し合いをしています。再発防止を徹底していきます。施策として、正月三が日の住宅展示場の営業停止やプレミアムフライデーの徹底などをおこなっています」(同社広報)

 

●新潟市民病院

 

 2016年に37歳研修医の女性が自殺(残業251時間)。2017年5月に労災認定され、今回ノミネートされている。

 

 同大賞実行委員会メンバーである佐々木亮弁護士は、こう話す。
「過労死や長時間労働などに関する事件があった企業が選ばれたのは、2017年初めから政府が力を入れ始めた『働き方改革』で、長時間労働対策が注目を浴びたことにあります。ゆえに、長時間労働を原因とする事件や悲惨な自殺などの事件が報道されやすい傾向にありました」

 

 しかし、状況はすぐには変わりそうにない。佐々木氏は警鐘を鳴らす。

 

「社内の制度を変えて、改善できた企業もあるのでしょうが、仕事の持ち帰りが増えたなどという声が少なくありません。労働時間削減に取り組むのは悪いことではないのですが、1人あたりの業務量を減らさない限り、長時間労働の改善にはつながりません」(同前・佐々木氏)

 

 日本一不名誉な大賞の発表は12月23日だ。
(週刊FLASH 2017年12月19日号)

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