ヤクザ界を揺るがす事件が起きたのは2019年8月、指定暴力団・六代目山口組の分裂抗争の真っ只中だった。六代目山口組の中核組織である指定暴力団・弘道会の関係施設前で、同組員の男性が拳銃で撃たれたのだ。
10月31日、同事件で殺人未遂などの罪に問われていた指定暴力団・六代目山口組系山健組組長の中田浩司被告(事件当時は神戸山口組。2021年に六代目山口組に復帰)の判決公判が開かれた。検察の求刑20年に対し、なんと神戸地裁は無罪判決を言い渡したのだ。
「事件発生から5年を経た10月8日の初公判で中田被告は、『私は犯人ではありません』と、起訴内容を否認しました。検察は犯行現場から140枚以上の防犯カメラ映像の写真をつなぎ合わせて、犯人の犯行前から犯行後に市内のホテルに着くまでの足取りを再現しました。さらに、ホテルに現れた犯人の映像の解析結果も提出し、体の一部の特徴が中田被告と一致すると主張していました。しかし一方で、犯行現場での目撃情報がないうえ、直接的に中田被告が組員を銃撃した証拠を検察は提出していませんでした。防犯カメラの映像について神戸地裁の丸田顕裁判長は、『この映像で(中田被告を)犯人と決めつけないでください』と裁判員に注意を促してもいたそうです」(社会部記者)
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中田被告が率いる山健組は、六代目山口組の分裂時には神戸側の最大の傘下団体で、神戸山口組の井上邦雄組長の出身団体でもある“名門”だ。銃撃事件後の2021年に六代目山口組に再加入したとされており、逆に神戸山口組は結成時の主要5団体のうち4団体がすでに離脱し、兵庫県下の構成員は50人を切ったとされる。先の記者がこう続ける。
「丸田裁判長は、検察側の提出する証拠について『厳格な証明』を求めることで知られています。今回の判決でも、『被告人が犯人である可能性は高いが、別人が犯人である可能性は否定できない』と述べ、検察の立証不足を理由に挙げています。検察が起訴した刑事事件においてほぼ99%が有罪になる日本の司法において、丸田裁判長の場合だけ無罪判決が出ることが多いため、検察官は皮肉を込めて“ミスター無罪”と呼んでいます。中田被告は警察、検察の取り調べにおいて完全黙秘を貫いており、今日の判決公判でも『六代目山口組五代目山健組組長です』と名乗った以外は発言していません。
以前から司法関係者の間では無罪判決が予想されていたそうで、中田被告の出所後の住まいなどもすでに用意されているそうです。検察が控訴するのは確実でしょうが、新たな証拠などを用意できるのか懸念が残ります」
もしも中田被告が犯人でないとすれば、本当の襲撃犯は誰なのか。真相は闇の中だ。
( SmartFLASH )