衆議院総選挙で、公示前の247議席から56議席も減らし、191議席に沈んだ自民党。
その自民党から「茨城6区」で出馬し、選挙区では立憲民主党の青山大人(やまと)氏に及ばなかったものの、89.098%の惜敗率が奏功し、比例「北関東ブロック」で復活当選した国光文乃(あやの)氏に公職選挙法違反の疑いが浮上した。
国光氏は、医師として東京医療センターなどに勤務。その後、厚生労働省保健局医療課の課長補佐から、丹羽雄哉元厚生大臣の後継者として、2017年の衆院選で自民党から出馬し、初当選。2021年の衆院選で2回めの当選を果たした。
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党女性局の「局長代理」という肩書を掲げて今回の総選挙に臨んだが、選挙区で当選した過去2回とは異なる“逆風”のなか、比例での復活当選になった。
その国光氏に、投開票日の当日に選挙運動をおこなっていたという「公選法違反」の疑いがかけられている。選挙運動は、公選法第129条で《告示の日から当該選挙の期日の前日まででなければ、することができない》とされている。
選挙区内のつくば市の市民がこう話す。
「10月27日の選挙投票日の日曜日です。その日は、つくばエクスプレスのつくば駅近くのつくばセンター広場で『キラバイ Fete de la musique 2024』という音楽イベントと『つくば中華フェア』という2つのイベントが開催されていました。
私は、たまたま用があって、会場近辺を訪れており、午後1時ごろだったと思います。オレンジ色のポロシャツに黒いパンツ、オレンジ色のスニーカーを履いた国光さんが、事務所のスタッフと思われる若い男性と音楽イベント会場にいらっしゃいました。男性も派手な蛍光オレンジのジャンパーを着ていたので、目立っていましたね。
何しに来たのかなと思っていたら、音楽イベントの客席の最後尾の席にいらっしゃった国光さんは、あるバンドの演奏が終わると、1人で前方のバンドのところに行き、マイクを前にあいさつし始めたんです」
10月15日に告示された衆議院総選挙では、一貫して、オレンジ色をテーマカラーにして選挙戦に挑んでいた国光氏。前述の市民がその後の様子について続ける。
「国光さん本人から投票を呼びかける話はありませんでしたが、司会者の男性が『ぜひ投票を』と言ったんです。そのとき、国光さんの事務所スタッフと思われる男性は動画を撮っていたように見えました」
音楽イベント会場を後にした国光氏は、今度は下のエリアで開催されている『つくば中華フェア』の会場へとスタッフとともに降りていったという。
「ちょうど、そのときに中国伝統芸能の『変面』のショーをやっていて、国光さんもそれを観ていらっしゃいました。ショーが終わった際、会場であいさつしたそうな顔で主催者のところに歩み寄っていかれました。
あいさつはしなかったのですが、国光さんは選挙用と思われるビラを手に持っていました。ビラには国光さんの顔写真が印刷されていましたから。まさかと思い見ていたのですが、会場にいた来場者らに話しかけながら、そのビラを渡していたのです。
少なくとも、3人にビラを渡していたのを目撃しました。その後も中華フェスの屋台料理などは口にせず、来場者にあいさつ回りをされていました。たぶん、1時間くらいは会場にいらっしゃったように思います」
ビラ配りと特定の候補者への投票を呼びかける演説となれば、立派な選挙運動に当たるだろう。本誌は、こう証言したつくば市民から当日の動画も入手した。
まず、動画は3本あり、1本めは、音楽イベント会場で国光氏がマイクを前にあいさつしている動画だ。その動画ではバンドの方を向きながら、国光氏はこのように話している。
《いつもお世話になっています。いやー、音楽の後に素晴らしい最高の時間を〇〇(聞き取り不明)させていただいて感動しております。
私はちょっと今、ニュースでもありますように仕事柄、いつも動乱の日を過ごしてたんですが、心が癒されまして、音楽の力って凄いなとあらためて感動しているところであります。
私、国光文乃、この音楽の盛り上がり、頑張って応援したいと思います。(手を振り)よろしくお願いしま~す》
そして、続けて司会者と思われる男性が、
《はい、ありがとうございます。皆さん、今日は投票日ですよ。投票されました? 大変逆風が吹いているなかですけども、地元のために頑張ってくださっているので、是非投票を。済んでいない方は》
と、国光氏に投票を促すかのように付け加えたのだ。その間、国光氏は客席の方を向いてお辞儀をするなどしていた。
2本め、3本めの動画は「中華フェス」の会場でのもの。
国光氏の会話の内容は聞き取れなかったが、この動画には、国光氏のビラを手にするイベント関係者の男性が映っており、その後、国光氏からあいさつされたイベント関係者の女性の手にもビラが渡った様子が映っている。
また、左手にビラを手にした国光氏が来場者に声をかけ、あいさつしている様子も映されていた。
地元政界関係者がこう話す。
「国光さんは今回で3回めの国政選挙。山口県の実家が先祖代々のみかん農家だったということで、初当選のころからオレンジ色をイメージカラーにしています。
もちろん『選挙運動は前日まで』というのは常識ですから、知らないわけがないでしょう。自民党の劣勢が伝えられ、ご自身の旗色が悪い状況でしたから、かなり焦っていたのかもしれません」
本誌は今回の証言と動画を受けて、茨城県選挙管理委員会に見解を尋ねた。担当者はこう話す。
「実際におこなわれていることに選管として判断する権限はありませんが、選挙運動は投票日の前日までと公選法で決められています。選挙当日にビラを配る行為などが選挙運動と警察当局に判断されれば、公選法に抵触する恐れがあります」
警察庁は、10月26日までに、今回の衆議院選での選挙違反について全国で9件を摘発、9人を逮捕したと発表している。国光氏の行動も警察が「事実」と判断すれば、捜査する可能性があるだろう。
国光氏はどのように今回の疑惑を説明するのか。本誌は10月27日の投票日当日にビラを配った件、マイクの前であいさつをした件の見解を尋ねるため国光氏の携帯を鳴らしたが、留守電になったままで、一度もつながらなかった。
また、国光氏の事務所にFAXで上記に関する質問状を送付した。事務所は質問状を受け取ったものの、11月1日午後の回答期限までに本誌にはなんの回答も寄せられなかった。
衆院選で、自民党総裁である石破茂首相は公約として「ルールを徹底して守る政党に生まれ変わります」と、“ルールを守る”をまさに一丁目一番地に掲げていた。
国光氏は、自身の党の公約すら知らなかったということか。
( SmartFLASH )