社会・政治
厚労省「風邪5類指定」に医師が猛反対…ワクチン開発は「ほぼ不可能」医療現場への負担増も懸念
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2024.12.04 16:12 最終更新日:2024.12.04 16:12
11月29日、福岡資麿厚生労働大臣は省令を改正、“普通の風邪” を5類感染症に位置づけることを発表した。
「5類感染症とは、現在、インフルエンザや新型コロナなども分類されており、指定医療機関からの報告などを通じて、国は感染の拡大などを観測できるようになります。さらに、ワクチン開発などもおこなうことが可能になりました」(社会部記者)
こうした政策に対し、「国民に不利益をもたらす可能性が高い」と指摘するのは、感染症の専門家で、五良会クリニック白金高輪理事長の五藤良将医師だ。
「政府は、この政策の目的を『急性呼吸器感染症の流行状況を把握し、未知の感染症の早期発見につなげる』と説明していますが、風邪は軽症で自然に治ることがほとんどです。
現行の監視体制でも未知の感染症を早期発見する仕組みは十分整っています。この政策が新たに提供するメリットはほとんどないと思います。
5類感染症に指定されれば、医療機関が症例報告や検体採取をおこなう必要があります。これは特に小規模な医療機関にとって大きな負担となり、診療の質や効率に影響を及ぼすでしょう。
限られた医療のリソースをここに割くことで、もっと必要とされる分野が困るだけなんです」
【関連記事:「9月には感染者が2000万人も」免疫を “かわす” 新型コロナ変異株「KP.3」の恐怖を医師が警鐘】
さらに、ワクチンの開発にも否定的だ。
「風邪の原因となるウイルスは非常に多様ですからね。包括的なワクチンの開発は現実的ではありません。過去には、風邪の主要な原因の一つであるライノウイルスのワクチンの開発が試みられましたが、免疫応答が不十分で実用化には至りませんでした。
ウイルスの多様性と変異の頻度を考えると、すべての風邪ウイルスに効果を発揮するワクチンを作るのはほぼ不可能だと思います。
それに、ワクチンの開発や普及には膨大なコストがかかります。この費用が税金で賄われるとなると、ほかの重要な医療課題への予算が削減される可能性がありますし、風邪ワクチンが推奨されるようになれば、新型コロナワクチンのときと同じように接種を拒否した人が社会的に非難されたり、差別される懸念があります。
風邪に対する過剰な意識が生まれることで、不必要な受診が増えることも懸念点の一つですね」(同)
医療現場や社会への影響を再考すべきなのは間違いない。
取材/文・吉澤恵理(医療ジャーナリスト)
( SmartFLASH )