社会・政治
ハワイ「ミサイル飛来」の誤報で起きた大パニックなぜ起きた?
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2018.01.16 16:00 最終更新日:2018.01.16 16:00
1月13日の土曜日、早朝からハワイは大パニックに襲われた。何しろ朝8時にハワイ緊急事態庁が「弾道ミサイルがハワイに向けて飛来中。直ちに安全な場所に避難してください。これは訓練ではありません」との一斉メールを発信したからである。
ハワイを訪問中の観光客も地元住民も携帯メールを受け取り、「北朝鮮からのミサイル攻撃」と瞬時に判断した。ホノルルで開催中のゴルフのソニーオープンも一時中断する騒ぎに。
このところ連日のように北朝鮮問題がメディアを賑わせており、しかもハワイでは今年から月初にミサイル警報の訓練放送が始まった。当然のことながら、大勢の人々が大きなビルの地下など避難場所に移動した。
とはいえ、そうした素早い行動を起こした人は少数派であった。大半の人々は茫然としてしまい、その場に立ちすくんでしまったようだ。
「北朝鮮のミサイルがハワイに到達するのは発射から約15分後」といわれてきた。そのため、地元メディアによれば、この警告メールを受信した人々は「もはや手遅れ。もう助からないだろう」と思い、親しい家族や友人に「別れのメール」を送るのが精いっぱい。とても地下シェルターや安全な避難場所にたどり着けないと諦めた人も多かったという。
車を運転して逃れようにも、震えてハンドルが思うように操れなかったという人も続出した。大多数の一般人は「自分だけはそんな危機的状況には遭遇しないだろう」と、勝手に思い込んでいたため、本物の危機に直面すると手足が思うように動かないということだろう。
これは日本にとっても大きな教訓である。Jアラートの誤作動が度重なったが、多くの日本人も根拠なき楽観論にとらわれており、迅速な対応は難しいように思われる。
さて、ハワイでの緊急警報であるが、結局、誤報であった。緊急事態庁の職員が交代するときに、誤って警告ボタンを押してしまったというのである。
しかも、誤報を自動的に解除するメカニズムがないため、手作業で訂正メールを発信するのに手間取ってしまった。訂正メールが発信されたのは、なんと38分も経った後だった。
もちろん、このミサイル警報は即座にワシントンのホワイトハウスへも転送された。ハワイでは土曜日の朝だが、アメリカの東海岸では既に午後の遅い時間。トランプ大統領はフロリダにある別荘で相変わらずゴルフ三昧の最中であった。
その第一報に対する大統領の反応は明らかにされていないが、報道官によれば、「今回の件は単なる訓練の一環に過ぎないと承知している」というもの。
しかし、ハワイの地元テレビはスポーツ中継を中断して緊急速報を流しており、パニックによって事故や精神的被害を受けたとし、「州政府のいい加減な対応を訴える」と息巻いている人も多い。
これが日本なら「やれやれ誤報でよかった。安心した」で済むのだろうが、損害賠償を請求する人々が続出する見込みというのも、さすが「訴訟大国アメリカ」といったところだろう。
(国際政治経済学者・浜田和幸)