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総額300億円超の巨額詐欺、有名上場企業から芸能事務所まで続々……経済史に残る大事件の全容とは?“勝ち逃げ疑惑”の企業も直撃

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2024.12.18 17:15 最終更新日:2024.12.18 17:55

総額300億円超の巨額詐欺、有名上場企業から芸能事務所まで続々……経済史に残る大事件の全容とは?“勝ち逃げ疑惑”の企業も直撃

国外へと消えたスニール氏

 

「主犯だけじゃない。一部の名だたる企業や投資家は、あの詐欺事件で“儲け逃げ”したんですよ……」(金融業界関係者)

 

 その総額は数百億円ーー。2022年4月に発覚した巨額詐欺事件の真相は、未だに闇に包まれたままだ。

 

「2000年にQ&A投稿サイト『OKWAVE』を開設したインターネット企業・オウケイウェイヴ社が巻き込まれたことで注目を浴びました。詐欺をおこなっていたのはレイジング・ブル合同会社(以下、RB社)という投資会社です。RB社は虚偽の理由で投資を募り、オウケイウェイヴ社はこれに騙されたのです。RB社の破産により、オウケイウェイヴ社は投資元本約34億円と利益分約15億円の計約49億円が回収不能になりました。同社は名証ネクストに上場していたことから、同被害は広く世に知られることになりました」(経済ジャーナリスト)

 

 だが、RB社に投資していたのはオウケイウェイヴ社だけではない。本誌は関係者を通じ、RB社の一部の入出金履歴を入手した。同履歴からは、“甘い蜜”を求めて名だたる多くの企業や投資家が、同社に振り込んでいたことがわかった。しかも、入出金の差額によると、一部の人間は最大で数十億円の利益を得ていた計算になる……。

 

「RB社はスニール・ジー・サドワニ氏というインド人が経営しており、その親友であるモハメッド・イク氏が協力していました。2人とも日本の大学を出ており、日本語はペラペラ。人懐っこくて頭の回転が早く説得力のある話し方なので、騙されてしまうのです」(同前)

 

 

 彼らが騙ったのはSBI証券のIPO株(新規公開株)だった。

 

「スニール氏らの説明はこうです。SBI証券はネット証券会社であり個人投資家の利用が多く、一人ひとりの預け入れ金額が少ないという弱みがある。しかし、預かり残高が増えれば会社のお金が増え、証券会社として規模を大きくすることができる。そこで、できるだけ多くの金額を投資する富裕層をRB社が紹介する代わりに、SBI証券は優良IPO株を優先的にRB社に割り当てる。それによってRB社は安定的に投資の利益をあげる……。ごく一部の投資家のみが参加できる秘密の投資案件、という触れ込みだったわけです」(同前)

 

 ところが、こうした説明はすべて嘘だった。

 

「いわゆる『ポンジ・スキーム』と呼ばれるものです。取引実態はなく、ある投資家に利益を還元する場合、それは別の投資家から出資されたお金が元手なのです。何度も『利益が出た』として実際に還元し、それにより次回はさらに多額の出資をねだる。そうやって数多くの投資家を騙し、自転車操業で金額を膨らませていくのです」(同前)

 

 実際、オウケイウェイヴ社も破綻する直前まで、10億円以上の利益を得ていたことがわかっている。

 

「つまり、オウケイウェイヴ社も利益が出た初期の段階で投資を辞めていれば、儲けることができた可能性があったんですよ。実際、一部の悪徳投資家は、ポンジ・スキームだと“わかった”上で意図的に投資をおこない、途中で“儲け逃げ”します。騙し合いの世界ですね」(同前)

 

 では、具体的にどんな企業が“儲けた”のか。本誌が入手した資料を元にすると、1位の振込先には「外為送金」と記されており、約36億8000万円の利益。これらはスニール氏やイク氏ら“主犯”が得た利益だと思われる。スニール氏とイク氏に本誌は確認をとったが、期日までに回答はなかった。

 

 次いで利益を出したのは都内にある投資会社。約50億円をRB社に入金し、約78億円をRB社から振り込まれている。じつに28億円の利益だ。同社に確認したところ、同社代表は本誌の取材に対し、

 

「RB社と取引があったことは事実ですが、破産管財人から請求を受けたのは約16億円のみです。さらに、同社から入金される予定だった利益を前提に納税をおこなっており、むしろ損をしています。もちろん、裁判所から判決が出れば、従う予定です」

 

 と回答した。続いて、取引履歴上は24億円の利益をあげたと思しき投資アドバイザー業をおこうなう会社は、代理人弁護士を通じ、破産管財人から利益の返還を求められていることを認めたうえで、

 

「送金されているものの大半は預け金の返還であり、(破産管財人の)請求に理由がないことは明らかです」

 

 と争う姿勢を見せている。また、金融業とはまったく関係のない都内の某メーカーは、本誌の資料では1000万円を超える利益を得ているが、

 

「入金額と着金額を比べた場合に着金額の方が数字としては大きかったという限度では事実です」としたうえで、「当然の理ではありますが、当社は、確定した裁判所のご判断に従う所存です」

 

 と回答した。そのほか、医療法人や有名芸能事務所、国際的に名高い法律事務所に所属するパートナー弁護士など、入出金リストに名前にあがった複数の関係者に取材をおこなったが、いずれも「事実無根」と答えるか、回答がなかった。

 

 こうした中で、個人投資家として16億円の損を被った投資家のX氏に取材を申し込んだところ、巨額詐欺の一端を知る者として応じてくれた。X氏はこう回想する。

 

「当時私は、スニール氏やイク氏の甘言に騙されて、本気で儲かる投資だと考えていました。自分の投資会社や個人資金などあらゆる資産をRB社に投資していたんです。

 

 ほかにも儲かる魅力的な投資だと考えたので、RB社のことを10人ほど複数人に紹介したこともありました」

 

 X氏はその結果、財界でスニール氏の“グル”だと誤解されたのだという。

 

「もちろん私としては良かれと思ってのことでしたが、巻き込んで紹介してしまった人には申し訳ないと思っています。ただ、そもそも私自身が巨額の被害者であり、詐欺だとわかって紹介したわけでは決してありません。それに、私が紹介した人の中で多額の利益を得ている人たちは何人もいます。とにかく、世界的に知られる投資銀行出身のファンド経営者やM&Aの専門家など、金融分野のスペシャリストたちが参加している投資だったことが安心材料でした」

 

 その証拠に、国税庁から“詐欺被害”を認められた書類があるという。

 

「ある時、スニール氏に8億円ほど払い出しをしてほしいとお願いしました。当然受け取ることはできず仕舞いでしたが、税務署には利益として計上して申告していたんですよ。結果的に、税金だけで4億円超の支払い義務が課せられてしまったんです。一部は払いましたが、すぐに8億円の利益が無効であると主張しました」

 

 ただ、「詐欺に遭った」と説明しても税務署からは全く相手にされず、自分たちには関係ないと突き放されてしまったという。

 

「結局、税務署から国税局、国税庁と手続きを進めて、ようやく詐欺被害が認められ、納税義務自体が取り消されました。専門用語で『更生の請求』といいますが、これはめったに承認されないハードルの高いものです」

 

 だが、X氏にとっては現金よりもスニール氏の“共犯”であるという根拠のない噂のほうが致命的だという。

 

「私が紹介した方々の幾人かは、みんな今回の件でマイナスになっています。一方、事実として数億円単位で利益を得ている人たちが何人もいます。ですが、私自身はこの投資で大きな損失を被った上に家やわずかな資産を差し押さえられていますし、さらには合計で50億円ほどの賠償請求で訴えられています。もちろん、騙された私も悪いと思うようにしていますが、やはり“勝ち逃げ”した人たちがいる事実は是正されるべきだと考えています。ポンジ・スキームなので、元をたどれば我々“損をした側”のお金なんですから。儲けた人たちは当然口を割らないし、負けた人も信用を失うことを恐れて口外していません。でも、それでいいのでしょうか……」

 

 同事件の主犯のスニール氏は国外に出たまま行方知れず。すべてが明かされる日はやってくるのかーー。

( SmartFLASH )

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