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ホンダ×日産、経営統合で世界3位グループ誕生へ…“王者”トヨタを脅かす「スーパー独自技術」の真髄

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2024.12.22 14:30 最終更新日:2024.12.22 14:37

ホンダ×日産、経営統合で世界3位グループ誕生へ…“王者”トヨタを脅かす「スーパー独自技術」の真髄

日産自動車の内田誠社長(左)とホンダの三部敏宏社長(写真・共同通信)

 

 自動車業界に衝撃が走った──。

 

 12月18日、ホンダ日産自動車が、経営統合に向けた協議を開始し、将来的には三菱自動車の合流もあると日本経済新聞が報じた。3社が統合すれば、売上高36兆円、販売台数800万台を超える世界3位の巨大自動車グループが誕生することになる。

 

 

「ホンダ、日産の両社が持ち株会社を設立し、それぞれの会社を傘下にする形で経営統合を目指しているとのことです。ホンダの三部敏宏社長は、テレビの取材に『何も決まったことはない』としながらも、経営統合について『上から下まで言えば可能性としてはある』と答えています。


 また、3社はそれぞれ『将来的な協業について、報道の内容を含め様々な検討を行っています』とコメント。経営統合が実現する可能性はかなり高いでしょう」(経済担当記者)

 

 この衝撃的なニュースには、じつは “伏線” があった。自動車ジャーナリストの佐藤篤司氏が解説する。

 

「ホンダと日産の協業は以前から冗談のようにしてありました。それが一気に現実味を帯びてきたのは、今年3月に両社から『協業へ向けた検討を開始する』と電撃的発表がおこなわれてからです。

 

 8月に開かれた2度めの会見では、『さまざまな分野で協業することが成果を上げるひとつの方法だ』と進捗が伝えられました。この際、ホンダの三部社長と日産の内田誠社長は『資本参加や経営の一部統合』について聞かれ、いずれも『あらゆる可能性を否定しない』と答えています」(以下、「」内は佐藤氏)

 

 では、実際のところ、統合はうまくいくのだろうか。その成否の鍵を握るのが、ホンダと日産それぞれにある「スーパー独自技術」だという。

 

 ホンダが誇るのはHV(ハイブリッド)技術だ。

 

「ホンダは、独自の2モーターHVシステム『e:HEV』を持っています。『エンジン』に加え、発電用と動力用の『モーター』を搭載しており、それぞれを効率よく使うことで燃費が向上するのです。

 

 現在、世界の自動車メーカーは『脱炭素』という共通の目的があり、大幅なCO2の削減が至上命題となっています。『e:HEV』は、こうしたグローバルな要求にかなうだけの実力を持っています。

 

 エンジンにこだわりすぎとの指摘もありますが、昨今は急激なEV(電気自動車)シフトを見直すメーカーが増えています。これからは、むしろホンダやトヨタのような “全方位作戦” が最善とも考えられます」

 

 ホンダは、世界初の本格的な二足歩行ロボット『ASIMO(アシモ)』を開発したことで知られるが、その延長で、ロボットをはじめ、陸海空におけるモビリティ、バッテリーや水素電池など多方面にわたる技術の蓄積がある。“技術の種” の多さは、日本メーカーのなかでも随一と言える。

 

 一方の日産はどうか。

 

「日産の強みはEV用のバッテリーです。日産は、2019年、EVの中核技術である車載用電池の子会社を中国企業に買収されていますが、現在もその電池メーカー『AESCジャパン』との関係は維持しています。

 

 同社は、2010年に日産が発売した世界初の量産EV『リーフ』の電池を製造し、累計で50万台以上販売しました。しかも、バッテリーに起因する火災事故はゼロなんです。『リーフ』以外にも、ルノー、ホンダ、メルセデスベンツにバッテリーを供給しています。

 

 EVに使われるリチウムイオンバッテリーは、中身が液体なんです。これが発火や炎上につながるリスクとして、どうしても残ってしまう。その解決策が、中身が完全に固まった『全固体電池』です。

 

 日産は『全固体電池』を開発中で、経済産業省も支援を進める方針です。経営統合によってホンダや三菱との協業がおこなわれれば、規模が小さいながら、ほぼ専用と言えるバッテリーメーカーがあることは、大きな強みになるはずです」

 

 日産のもうひとつの “武器” が自動運転だ。

 

「日産には『プロパイロット2.0』というシステムがあります。高精度の地図データと360度の監視センサーで、同一車線内ならハンズオフ(手放し運転)が可能となりました。前方車の速度に応じて追い越しを提案し、スイッチを押すだけで車線変更もしてくれます」

 

 世界に通用する独自技術を持つ両社が統合したら、いったいどんな車ができるのか。

 

「ホンダも日産も、どちらも熱狂的なファンが存在するメーカーです。両社が経営統合すれば、それぞれの魅力を維持したまま、新たなクルマが誕生する可能性がありますね。

 

 たとえば、ホンダから間もなく発表される新型『プレリュード』のようなモデルが登場するかと思えば、日産からは『シルビア』などのライバル車が投入されることになる。

 

 コスト削減のため、プラットフォーム(車台)など基本構成を共同で開発しつつ、味つけは各社で創意工夫をこらすことができる。車台は共通でもデザインは違うわけですから“らしさ”は維持できるわけです。

 

 これに、アウトドア系を得意とする三菱が加われば、ワイルドなSUVやミニバンがデビューする可能性もあります」

 

 では、ホンダ、日産、三菱の3社連合が誕生したら “世界王者” トヨタの牙城を崩せるのか。

 

「さすがにトヨタ連合は強力です。トヨタは単体で1030万台を世界で販売していますが、これに独自ブランドを持つダイハツと日野自動車が加わりグループで1109万台、そしてマツダやスバルなどを加えたトヨタ連合としては1600万台ほどになります。

 

 スバルとはスポーツカーや100%電気で走るエンジンのないBEVを共同開発中ですし、マツダとはハイブリッド技術などで連携しています。

 

 軽自動車でも、スズキは自社開発のBEVをトヨタに供給しますから、トヨタ、ダイハツ、スズキ3社による強力な関係が構築されるはずで、その高い壁を打ち破るのは至難でしょう。

 

 ただ、ホンダ、日産、三菱による協業が本格的に動き出せば、将来的には互角になる可能性もあります。現在、自動車は100年に1度の改革期と言われ、今後、ネットとの連携、AI化、自動化、電動化などあらゆる方面で革新が始まります。王者トヨタでさえ、生き残りに必死です。

 

 トヨタを逆転することは不可能かもしれませんが、重要なのは現時点がスタートということ。ホンダ、日産、三菱がこれ以上シェアを落とすことなく、各ブランドが “らしさ” を維持すれば、大きな存在感を発揮することになるでしょう。勝負は2030年代です」

 

 まさに、自動車戦国時代。最後に天下を取るのはどこなのか──。

( SmartFLASH )

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