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「遺体を解剖する意味はない」美容外科医が不謹慎「献体写真」投稿で解任…現役医師が訴える“そもそも論”とは
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2024.12.30 19:50 最終更新日:2024.12.31 13:46
篤志の心で支えられてきた事業が大きく揺らいでいるーー。
東京美容外科の医師・黒田あいみ氏が、2024年12月2日のInstagramに投稿した内容が大きな波紋を呼んでいる。
投稿されたのは、グアムでの解剖実習での様子。《いざ、fresh cadaver (新鮮なご遺体の解剖)解剖しに行きます》というタイトルで複数の写真がアップされ、そのなかには、解剖室と思われる部屋に複数の「献体」が並んでいる写真もあり、《頭部がたくさん並んでいるよ》という説明が笑顔の絵文字とともに添えられていた。
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「黒田医師はトライアスロン選手でもあり、“アスリート医師”として知られていました。積極的に情報発信するタイプなので、彼女としては“日常を伝えた”という感覚なのかもしれませんが、明らかにはしゃいで解剖に臨んでいる様子が、あまりに遺体を冒涜していると批判が殺到しました。献体は、本人と家族の同意に基づき、医学のためにと提供される貴重なものです。一連の投稿は、医師としての倫理観が欠落しているのではないかと炎上したわけです」(社会部記者)
黒田医師は12月23日までに投稿を削除するとともに、自身のブログに謝罪文を掲載した。さらに、彼女が所属する東京美容外科の統括院長の麻生泰氏も21日に自身のSNSで、《大変申し訳ございません。主催者の一人としてお詫び申し上げます》と謝罪した。
一方で麻生氏は、今回の医療研修の意義を次のように強調した。
《ただ、解剖をすることは外科医にとって、とても重要な意味を持ちます。臨床に携わる医師が解剖する事は、学生時代の解剖とは違い、患者さんに直結して還元できる事が大きいです。腕の良い外科医を作るうえではなくてはならないものだと考えています。全ては患者さんの利益になることだと思います》
さらに、今回の黒田医師の投稿については、《この写真は、アメリカで解剖している事ですので、日本ともルールが異なります》とも釈明。そして、《投稿は既に削除しております。この事で臨床医師が解剖できる火が消えませんように》とメッセージを添えた。
また、別の日の投稿では、《昨今の美容外科では、顎下脂肪吸引など、死亡事故が頻発し、私共も解剖の必要性を痛感し、このような機会を設けました》と、今回の医療研修が計画された経緯にも言及。そして、
《一般の方々からのご批判は、当然、受け止め、反省は致しますが、同業医師でありながら不勉強でfresh cadaverという言葉さえ知らない医師に批判されたまま、炎上でトカゲの尻尾切りのように解雇することはできないと判断しました》
と、黒田医師を今後も沖縄院院長の地位に留まらせる方針を示した。ところが12月27日になって、東京美容外科はホームページ上で黒田医師の院長解任を公表。麻生氏も自身のSNSアカウントで、《今回の騒動で、沢山の皆さんに御迷惑をおかけした事をお詫び致します》と3度目の謝罪文を掲載した。
「黒田医師の投稿が問題視されるのは当然として、麻生氏の“擁護”が火に油を注いだのは間違いないでしょう。謝罪に徹しておけばいいのに、医療研修そのものの意義について言及するなど、麻生氏の投稿は外野からすると“論点ずらし”と捉えられかねないものでした。麻生氏は以前から炎上するようなとがった発言を繰り返してきましたが、今回ばかりは致命的でした」(ITジャーナリスト・井上トシユキ氏)
さらに、現役医師は「そもそも医師は解剖をする必要がない」と本誌に証言する。
「ほとんどの医師が解剖を経験するのは、人生を通じて医学部2年生の実習においてだけなんです。解剖実習とはまさに『腑分け』。課題に添って臓器を取り出し、詳細なレポートを担当教授に提出します。
それに、これも個別の臓器を学ぶためというよりは“本物の人体に触れる”“命を扱う仕事だと知る”という、慣れや倫理を学ぶ側面が大きいのです。実際、個々の臓器の大きさや形は3D画像だけでもわかりますからね。遺体を4時間も立ちっぱなしで解剖したり、時間が足りなくて遺体のすぐ脇で食事をしたりと、医師になったあとの業務に繋がる部分もあります。
逆に、医師になってしまえば遺体を解剖することよりも実際に多くの臨床をこなしたり論文を読み込むことのほうがよほど勉強になるわけで、わざわざ遺体を解剖する意味はないんですよ。
貴重な医療の発展のためであれば、やはり医学部生など本当に必要としている人が解剖をすべきでしょう」
この問題、まだまだ“鎮火”するのに時間がかかりそうだ。
( SmartFLASH )