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「すでに台湾有事は始まっている」中国が進める“認知戦”とは?「シーレーン封鎖なら日本は生き残れない」専門家が警鐘

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2025.01.12 14:35 最終更新日:2025.01.12 14:38

「すでに台湾有事は始まっている」中国が進める“認知戦”とは?「シーレーン封鎖なら日本は生き残れない」専門家が警鐘

2025年1月1日、記者会見で防衛強化の継続を掲げた頼清徳台湾総統(写真・共同通信)

 

 戦後80年にあたる2025年。いま、新たな「戦前」の不安が高まっている――。

 

 1月6日、中国の貨物船が台湾の海底ケーブルを損傷させた疑いがあるとして、台湾の海巡署(海上保安庁)が貨物船の寄港先の韓国に捜査協力を依頼したと報じられた。

 

「台湾では、2024年5月中国が独立派とみなす頼清徳総統が就任したばかり。中国は、この就任を受けて、台湾への武力侵攻を想定した大規模な軍事演習を5月と10月の2回にわたって強行しました。また、2020年に中国は海底ケーブルを切断する装置を発明したと報じられています」(政治部記者)

 

 今回の事件に関して、麗澤大学特別教授で元航空自衛隊空将の織田邦男氏は「中国の意図的な工作だ」と語る。

 

「中国による海底ケーブル切断は、今回が初めてではありません。2023年3月には、オーストラリアにあるアジア太平洋ネットワーク情報センターが、過去5年間で27回切断されたと報告しています。2024年2月には、台湾が実効支配する馬祖列島と台湾本島を結ぶ通信用の海底ケーブル2本も相次いで切断されています。このときは、島外との電話やネットが遮断され、航空券の予約やネットバンキングができなくなり、買い物などで混乱が起きました。

 

 中国の狙いは台湾を“情報鎖国”にすることです。台湾は通信用の海底ケーブルを3か所に設置していますが、これらが切断されれば、後は通信衛星からでしか情報を得る手段はなくなります。島国の台湾にとって、情報鎖国は最も避けたい事態なんです」(以下、「」内は織田氏)

 

 

 台湾島に対する中国の軍事侵攻を想定した、いわゆる“台湾有事”が昨今話題になっている。中国側のミサイルの先制攻撃や強襲揚陸艦による台湾上陸作戦で火蓋が切られる可能性はあるのだろうか。

 

「じつは台湾有事は、『認知戦』という形でもう始まっているんです。認知戦とは、敵の心理や思考に働きかけて、戦略的に有利な状況を作り出す作戦です。今回の海底ケーブル切断もそうですし、中国による台湾周辺での軍事演習やサイバー攻撃も、認知戦の一種です。認知戦によって、台湾の国民が『中国と戦っても無駄だ』と思ったときに勝負が着くわけです。

 

 2014年のロシアによるクリミア半島併合の時も、認知戦によってインチキな住民投票をさせた結果、ロシア編入が決まりました。中国は当然、プーチンの認知戦を研究していますから、それを踏襲しようと考えているはずです」

 

 つまり、台湾有事は認知戦という形ですでに始まっているというが、やがて“血を流す”戦争に進展することはあるのだろうか。

 

「その可能性はかなり低いと考えます。中国は、アメリカが台湾有事に参戦してくるならば、軍事作戦では勝てないとわかっています。ですから、中国はトランプ次期大統領がどんな態度を取るか、固唾を飲んで見守っている状態でしょう。それに、中国は一人っ子政策を推進してきたので、兵士の家族の反発を食うような、死者がたくさん出るような戦闘はできないんです」

 

 ただ、軍事衝突が唯一あるとしたら、それは台湾が独立を宣言したときだという。

 

「独立宣言をしたら、中国は勝ち負け関係なく、面子で戦わざるを得ないんです。その際は、中国によるミサイル戦から始まるでしょう。ミサイル戦なら自分たちの戦力を消耗しないで済む。この段階で、台湾は『やっぱり、敵わないから諦めよう』という形になるかもしれない。

 

 しかし、それでも中国陸軍による上陸作戦は難しいでしょう。長く戦争をやったら、国民の批判の矛先は中国共産党に向かい、自分たちの足元もおぼつかなくなるかもしれません。そのため、血を流す戦争をやるとしても“ショート・シャープ・ウォー”(急襲によって一気に占拠する短期激烈戦争)となるでしょう。それで決着がつかないような戦いはやらないはずです」

 

 戦争の可能性は低いと言うが、中国による台湾併合はあり得るのだろうか。

 

「私は2027年までに起こると予想しています。なぜなら、習近平国家主席が中国共産党の総書記として、4期めが決まる年だからです。習近平が今後も国家主席として君臨するためには、『レガシー』が必要です。それが、毛沢東でもなしえなかった台湾併合なんです。そして、この年は人民解放軍の創建100周年にもあたる。軍の威信にかけても台湾併合は成し遂げなければならないんです」

 

 中国が台湾を併合する事態になれば、当然、日本にも“被害”が及ぶ。

 

「中国に台湾周辺の制空権、制海権を押さえられたら、日本と台湾の間のシーレーンの安全性が確保できなくなります。その影響は甚大です。現在、1日150万トンの物資が行き来して、エネルギーの90%、食料の60%が日本、台湾のシーレーンを通っているんです。台湾周辺を通過できなくなれば、タンカー1隻あたり約3000万円の燃料代が増える計算になります。だいたい、シーレーンを通る船の10%しか日本人の船長はいないんです。船員はほとんどがフィリピンなど外国人です。いざ有事となったときに、彼らが日本のために命懸けで輸送に当たってくれるとは限らないでしょう。シーレーンを封鎖されたら日本は生きていけません。そうなれば中国の思うツボです。

 

 その点、親中派といわれる岩屋毅外相や石破茂首相の外交手腕では心もとない。もし、中国の要求を全部呑んでしまえば、『あいつらは脅せば言うことを聞く』と思われてしまいます。それがいちばん恐ろしいんです」

 

 最悪なシナリオが実現しないといいが……。

( SmartFLASH )

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